物語文で、主人公の気持ちを考えるのが苦手です[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小4女子(性格:論理的なタイプ)のお母さま


質問

物語文で、主人公の気持ちを考えるのが苦手です。主人公が同い年位の女の子なら理解もしやすいようですが、男の子や大人が主人公だと、わかりづらくなるみたいです。


小泉先生のアドバイス

一緒に考えてあげて、ピンとこない場合は今までの体験から実感させる。

人は自分の立場からものを考えますから、ほかの人の本当の気持ちはなかなかつかめないものです。まして経験の少ない小学生では、大人の気持ちや異性の気持ちはよくわからないでしょう。たとえば男の子は、男女の間の恋の話には弱いようです。そんな弱点を見越してか、恋の物語を出題するのが好きな男子校もあります。あまりにも女の子の気持ちがわからない場合は、少女漫画を読むようにすすめるという話を聞いたことがありますが、その真偽のほどはわかりません。女の子の場合は、さしずめ少年漫画を読んだらということになるのでしょうか? 

さて、ほかの人の気持ちがわかるようになるための方法ですが、お子さまが困っている時に≪この子はこう思っている≫とか≪この人はこんな風に考えている≫ということを、お母さんが一緒に考えてあげることが効果的だと思います。文章にある心情表現をていねいに味わいながら、筆者が表したかった登場人物の気持ちをくみ取っていきます。もちろん、単に想像するとか、「自分だったらこんな気持ちになる」というのではダメです。あくまでも文章の展開や設定、そして心情表現を根拠にしてその登場人物の気持ちを「推測」することが大切です。そして、そのような練習を繰り返していくと、いろいろな状況におけるさまざまな立場の人の気持ちが少しずつわかるようになると思います。

しかし、いくら説明してもお子さまがピンとこない場合はあるでしょう。そんな時はどうしたら良いでしょうか。わたしの国語塾でも、同じように説明してもすぐにわかる生徒となかなかわからない生徒がいます。おそらくその子たちの体験やバックグラウンドの違いによって、説明されたことがスッと頭に入ってこない場合があるのでしょう。そんな時は、手を替え品を替え、いろいろなやり方で説明していきます。

一つ具体例を出してみましょう。物語で、主人公が怖がってお父さんの背中にしがみついている場面です。そのような状態を表すために、「お父さんの声が背中からじかに聞こえた」という表現があったとしましょう。しかし、そのような状況を説明しても今ひとつ生徒がピンとこない場合です。そんな時にわたしが授業でよく使う手法の一つに、≪子どもたちの今までの体験から実感させる≫という方法があります。たとえば、「お父さんと自転車に二人乗りして、しっかり背中にしがみついていた経験はない?」と聞きます。そのものズバリではなくても、同じような経験を思い出してもらいます。もしあれば、「その時、お父さんの声が背中から聞こえなかった?」とさらに聞きます。そして、もしそのような経験があれば「あ、あの時のあの状態か!」とその瞬間に理解してくれます。「腑に落ちる」というのはまさにそんな時だと思います。このように、自分の経験を思い出して登場人物の状況と一致できれば、「お父さんにピッタリしがみついている。それほど怖がっている」という登場人物の状況や気持ちを実感できるでしょう。

腑に落ちた瞬間、おそらくお子さまの目がパッと輝くと思います。一緒に勉強していて、お母さんも「やった!」と思えるうれしい瞬間です。ぜひ、試してみてください。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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