受験生・保護者が求める教育の一つ、キャリア教育[中学受験]

今「自分の偏差値よりも低い偏差値の学校に進学する」ことが、今後、さらに増加して行くと考えられるが、自分の偏差値よりも低い偏差値の学校にどのような魅力があるのだろうか。大学受験のための学力以外にも、魅力のある教育を行っていることになるが、具体的にはどのようなことかを考えてみよう。

学校で行われている教育は、もちろん、学力のほかにも健康や安全に関する教育や技術を向上させることを目的とした教育もあるが、大きく分ければ、人格性を高めるための教育と学力を向上させるための教育の二つに分類できる。学力を向上させるための教育が大学受験に特化したものが受験教育で、社会が学歴を重視したことで受験教育が学校の教育の中でも受験生・保護者に重視されたわけだ。

人格性を高めるための教育は人間教育で、最近まで女子教育の根幹となっていたが、女性の社会進出とともに受験教育を教育方針とした女子校が人気となり、人格教育を打ち出している学校は、どちらかと言えば人気が低迷してきている。女子校で人気があるのは、受験教育で大学合格実績を出している学校のほかに、キャリア教育で著名な学校がある。キャリア教育とは、学校によってさまざまだが、中3から高1の時期に授業として行われる「職業を調べ、将来どのような仕事がやりたいか、どのような仕事に向いているか考えてみよう」という教育で、むしろ人格教育に分類されても良い。コンピューターで職種や業界を調べることから始め、自分の夢や希望に繋げさせる授業だが、学校によっては、生徒に職種や業界について教えるために卒業生や業界の著名人を招き講演してもらったりもする。

キャリア教育はどの学校でも行われているが、一部の中高一貫校、特に女子校では、キャリア教育を発展させて受験勉強に繋げている。つまり、自分が叶えたい夢・希望が、職業で叶えられるとすれば、その職業に就くためには、どのような大学・学部・学科に進学すればよいか、そのためには今何をすべきか、という順序で考えさせる。中3から高1の時期に、生徒本人が受験勉強の重要性に気付き、受験勉強を積極的にスタートできれば、学習効果が上がることになり、「自発的な受験教育」という魅力的な教育方法となる。

しかし、キャリア教育を行っている学校の中でも、大学受験で成果を出せているのは、一部の学校だ。その理由は、ほとんどの学校で、どのような職業があるかを調べ、将来、どのような職業に就きたいか考える、というところまでで指導を終えてしまうことのようだ。自分の夢を叶えるためにはどうすればよいかを大学受験まで繋げてあげたいところだ。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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