通学時間を考える その1[中学受験]

毎年、4月になると明らかに入学したばかりの中学1年生が、満員電車で通学している光景に出くわす。まだ体が小さいので、痛々しく感じるのは筆者ばかりではないと思う。小学生のころは、せいぜい徒歩で10~15分あれば学校に通えるのが普通だったのだが、これからどれだけ時間を掛けて学校まで通学するのか気になる。

下の【図】は、中学受験を志望する452名の保護者と首都圏119校の私立中高一貫校が参加したアンケートで作成した資料である。保護者アンケートは、第1志望から第3志望までの志望校の平均通学時間を集計したものであり、学校アンケートは、在籍生の平均通学時間を集計したものである。しかし、保護者アンケートには、6年生だけでなく4年生や5年生の保護者も含まれる。通学時間に関しては、4年生や5年生の時点では、まだ理想や期待が含まれている可能性があるので、実際には多少、保護者アンケートの通学時間が長くなることが予想できる。

【図 志望校の平均通学時間(保護者アンケート)と在籍生の平均通学時間(学校アンケート)】
志望校の平均通学時間(保護者アンケート)と在籍生の平均通学時間(学校アンケート)
※百分比(%)は小数第2位を四捨五入して表示した。四捨五入の結果、各々の項目の数値の和が100%とならない場合がある。

【図】を見ると、「4. 40~45分未満」「6. 50分以上」で学校アンケートのほうが保護者アンケートよりも約4%多く、その分、「1. 30分未満」「2. 30~35分未満」「3. 35~40分未満」で学校アンケートのほうが保護者アンケートよりも約4%ずつ少ない。平均通学時間は保護者アンケートのほうが短いように思われるが、4年生と5年生のデータが含まれていることを勘案すると、学校アンケートと同じ程度になることが考えられる。学校によって異なる可能性はあるが、平均通学時間は45~50分程度と考えられる。

平均通学時間はあくまで、標準的な数値と考えるべきで、志望校選択要素としての通学時間も子どもの個人差によって優先順位を決定すべきだ。体力がない子どもで遠距離通学が無理な場合は、重視すべき順位の1位を通学時間にすべきだ。
体力に問題なく、むしろ子どもには継続する力と自信をつけさせたいというご家庭もあると思う。遠距離の通学は得るものも大きいので、「通学時間が無駄になること」と相殺できる。その場合、通学時間が長いことは一長一短となり、通学時間の優先順位を低くしても構わないことになる。
また「遠距離から通学する生徒のほうが、遅刻・欠席が少ない」と話していた先生もおり、「6年間無遅刻・無欠席が中高の6年間で誇れることでした。大学受験でもそれが役に立ちました」と話していた大学受験合格者もいた。体力と継続力に自信がついたことで、その後の人生に良い影響があったことは言うまでもない。何事も継続できなければ達成することは難しい。6年間でそれを学び、自信をつけることができれば大きな収穫である。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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