慶応が小中高一貫校を新設か[中学受験]

慶応大学が来年迎える150周年の記念事業として、新たに小中高一貫の大学付属校を設立することを決めたらしい。
まだそれ以外は決まっていないそうなので、その立地がどこなのか、定員がどのくらいなのか、一切不明で、今後決定次第公表される、ということがわかっているくらいである。
昔から慶応は関西地区に土地を持っていて、やがてはそこに付属校ができると取りざたされていたので、いよいよそれが実現するのかもしれない。
今からあれこれせんさくしても仕方がないにせよ、天下の慶応がもう一つの付属校、しかも小中高一貫校をもつインパクトは小さくない。

ところで、従来も慶応は付属校をもっているのだが、面白いことに各個が連携しているわけではなく、独立している別々の学校だった。
従って、今度できる小中高一貫校は、文字通り一貫したカリキュラム、指導体制であり、そこに学ぶ児童、生徒は12カ年という長い年月を共に過ごすことになる。まさに究極の学校の誕生となる。

既に東京にはたくさん付属校をもつ慶応のことだから、わざわざ新設するのは他地域になるのだろうが、これまでの慶応の付属のよさは、首都圏一帯にバランスよく付属高校が配置され、かつ小学校や中学校からそのまま同じ集団でなく、卒業生は希望に応じてエリアごとに散じて他校や中途から入る生徒と混ざりあうところがメリットでもあった。
しかし、これが同じメンバーで一貫するとなると、集団の面白みが失われるだけでなく、人間関係が固定してしまい、一度確立したその人の評価を変えにくくなるため、生徒が途中から伸びるという可能性を閉じてしまいはしないか気がかりだが、そこは何とか考えるのだろう。

実はこうした「一貫化」は私立ばかりではなく、たとえば兵庫県では県立大学が一貫化を打ち出しているし、愛媛新聞が報ずるには、愛媛大学も小中高一貫を考えている、とのことである。
いってみれば、教育機関は少子化社会における自らの生き残りをかけて、これからは一層一貫校化を進める可能性がある。

しかし、一貫校化できるところは、いわば大学の冠が募集に効果があるところに限られ、どの大学でも一貫校化すれば生徒が集まる、などという状況にはない。たとえば聖心女子大学がホームページ上に数年先に小中高一貫にして、中学校での募集を減らし、小学校定員を増やす旨を公表している。確かにこうしたブランド校ならば早くから通わせたいという親もいるだろう。ブランド校であればあるほど、そうした純粋培養化が進むということかもしれない。

ただし、高度な職業資格をとる競争的な人材養成は、この完全一貫化はやはり向かないと思われる。慶応の一貫校新設は、一層銘柄大学の一貫校化を刺激することだろう。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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