公立中高一貫校の影響は女子に?国立女子減少 [中学受験]

公立中高一貫校の影響を受けやすいと考えられているのが国立大付属中学校。
たとえば、立地が近い都立小石川中等教育学校と東京学芸大学附属竹早中学校を比べてみよう。
小石川を見ると、女子に人気の高い中高一貫校のなかにあって、男子は前年比103%、女子は76%と減少している。比較的男子の人気が高く、女子の人気が低迷している。
その小石川の影響を最も受けると考えられる学大竹早にあっても、女子の応募は減少している。やはり女子は中高一貫ではない学大より、中高一貫という意味で、進路上安全安心な都立を選んだのだろうか。
東京学芸大学附属世田谷中学校を見ても、この学大竹早より、さらにその傾向が顕著で、男子が前年比111%に対し女子は86%と、ここでも明らかに女子に影響が出ていることがわかる。
また、お茶の水女子大学附属中学校は、大学進学実績も上昇し、系列大学進学ルートへの展望が見え、難化していることも加わったせいか、メインである女子の応募が89%とやはり減少している。

その「女子に弱い国立」の例外は筑波大系列で、筑波大学附属中学校は男女とも微増、筑駒(男子校)は前年比87%と、小石川やお茶の水の減少と考え合わせると、やはり筑駒、お茶の水は難化要素による減少の度合が大きいと思われる。
また、筑附は中高一貫で系列の高校へは8割程度進学できるので、学大に比べ、中高一貫の度合がはるかに大きく、高校から他高校を受験するというリスクが少ないため、都立の影響が少ないのだと考えてよいと思われる。

なお、横浜国大学附属の2校についていえば、男子がいずれも10%程度減少している。男子の減少の理由は、大学の上位校進学への期待に左右されるので、大学実績について中学校だけだと進路保証がはっきりしない点が最も大きいのではなかろうか。あるいは、中学受験に続いて高校受験もしなくてはいけないということについて、従来以上にデメリットを感じる父母が年々増えてきたきらいもある。

ところで、東京学芸大学教育学部附属大泉中学校は今度の募集から国際中等教育学校に装いを改めたため、極めて外部募集は少なく、35名の募集である。これに対して286名という規模の応募となり、応募倍率は8倍強になった。ほかの学大系列付属が7倍程度なので、ほぼ同じ入試状況ということになる。「国際」を冠する先発校では都立国際高等学校に実績があるが、学大大泉の場合は、将来は外国の子女も受け入れる日本版インターナショナルスクールを構想していることや、入試がその名にふさわしい内容で、いわゆる中学受験問題とは一線を画すユニークなもの。そうしたユニークネスを追求する学校が8倍もの人気があるというのは面白い現象である。

しかし、中学受験人口が相当増加したと思われる今年の入試で、国立大付属中学校のなかで最も人気が上昇したのが東京大学教育学部附属中等教育学校(3割強増)というところに、公立中高一貫人気に通ずるものを感じる。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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