試験を終えて[中学受験]

この文章が掲載される頃は、中学入試もすでに終盤にさしかかっていることであろう。第1志望に見事、合格を決めて喜びの絶頂にいる受験生もいるだろうし、そうでない受験生もいると思う。勝負はまだこれからという受験生もいるかもしれない。

やがて本年度の中学入試もすべて終了し、長かったお子さまの受験生活にもピリオドが打たれることになる。本人はもちろん、ご家族の皆さまも精神的・肉体的に苦労された一年であろうから、「やっと終わった」と安堵されることであろう。やがて気持ちを切り替え、新たな中学校生活に向けて希望に胸をふくらませることになるが、その前に一つだけやっておくべきことがある。それは今回の中学受験は「どうだったのか」を考えることだ。もちろんそんなに堅苦しく考える必要はなく、「どういう点が良かったのか?」あるいは「何か問題はあったか?」ということをご家族で話す機会がもてればいい。このことは試験結果のいかんにかかわらずやっておきたいことである。たとえ第1志望に合格できたとしても、何か反省すべき点はあるかもしれない。たとえばなかなか成績が伸びず、イライラした気持ちでついお母さんや弟にあたってしまったことがなかったか。最後まで算数に苦しんだとしたら、その原因は演習不足ではなかったか。結果が良いと、途中で起きた問題はすべて忘れてしまうものである。すべてが良い思い出になってしまう前に、いろいろなことを考えて思い出したい。そうすることにより、今回の合格がお子さま本人の努力だけではなく、家族を始めいろいろな人に支えられて得られたものであることに気付くであろう。また目標に到達するために必要なものや、自分に不足しているものを発見する機会になるかもしれない。今回の中学受験で学んだ多くの貴重な体験を、ここで再確認することは大切なプロセスであると思う。

このことは、第1志望に入れなかったお子さまについても同様である。結果が思わしくないとつい言葉が少なくなってしまうが、「勉強不足のため」とか「時間が足りなかったため」などと原因を特定することは、次のチャレンジのためにも大変重要である。もちろん反省だけではなく、良かった点もいろいろ話し合いたい。「社会の暗記は大変だったけど、だんだん歴史が好きになった」とか「難しい算数の問題が解けたときの喜びがわかった」などが経験できたとしたら、それはお子さまの財産であり、ぜひとも「素晴らしいことだよ。よかったね」と評価してあげたい。

思いどおりの受験ができた生徒も、そうでない生徒も、中学受験の意義を見出すことは可能である。そして十分な評価が終わったら、あとは新たな中学校生活に向けて大きな夢をふくらませたい。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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