公立中高一貫校か私立か[中学受験]

あまりにたくさんの人数の公立中高一貫校志望者を見ていると、私立と両方に合格すると公立中高一貫校に行きたい方々が年々多くなっていくのかな、という印象を覚える。
実際の話、お金のことがあるので親は公立のほうが助かると思うのはごく自然だ。しかし、合格した私立中学校にもよるのだろうが、なかには私立のほうを選ぶ人もいるのではないかと思う。そのいくつかの理由を考えて、万一お子さまが両方に合格したときの判断材料になれば、と以下に記してみたい。

たとえばこれが対私立中ということではなく、日程上、物理的にはあり得ない話だが、筑波大や学芸大の付属、あるいはお茶の水の付属の選択ということであれば、そうならないかもしれない。というのも、それは大学進学実績のメリットが明らかだからで、まだその点は公立中高一貫校は実績が出ていないという現実の説得力の弱さがある。

これは私立有力校との比較のうえでも同じで、もしそれが同じ偏差値で比べるのではなく、入った私立校の大学実績が高いものであれば公立中高一貫校を選択しないだろう。ただし、どのくらいの実績をもって比較するかというと、少なくとも公立中高一貫校の実績より高いことが求められるだろう。
私立の場合、偏差値50台で早慶上智にのべ20%以上の合格者を出しているが進学者の実数で言えば約半数の10%台になり、かつ現役に絞ればその半数くらいになると思われる。ただし中高一貫校にしても後の実績が早慶上智数%ではないだろうから、ここのところの読み方が難しい。しかしせいぜい倍増ではなかろうか。

そのこともさることながら、やはり大きな違いは学校文化ということで、具体的には、先生や職員との交わり方、そしてよく言われる「建学の精神」と表題される精神性の違いだろう。公立の中高一貫校の先生は、他の公立校のように数年したら転勤ということは今のところないだろうが、学校の共同性というか一体感というか、さらにはバックボーンという点がさすがに公立ゆえに普通市民教育がメインになっていて、宗教は当然にも避けられる。

そこのところは実は思春期には特に大きく影響する。たとえば、西欧にカトリック、米国にプロテスタントが主に中等教育を実施していることを考えてみても、人生の味わいに大きな違いが出る。我が国でも、最近では改めて各校とも精神面の支柱作りという面から宗教に触れようという動きになっている。

また、公立に比べ民間色が強くフレンドリーな人間関係も私立に軍配が上がる。思春期にはとても大切なことだ。お金の差ということをこうした価値で埋め合わせられるかどうかという話である。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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