MDGsってなに?定められた目標とSDGsとの違いについても紹介

最近、「SDGs」や「MDGs」という言葉をよく耳にすると感じる方は多いのではないでしょうか。この記事では、MDGsの基本的な内容やSDGsとの違いについて紹介します。世界でどのような取り組みが行われてきたのか知りたいという方は、ぜひ読んでみてください。

MDGsってなに?

MDGsとは、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)の略称で、開発に関する世界共通の目標のことです。2000年9月、ニューヨークで国連ミレニアム・サミットが開催され、そこで採択された「国連ミレニアム宣言」を基にまとめられています。

MDGsでは、2015年までに達成すべき8つの目標が掲げられました。この記事では、それぞれの目標の内容や取り組みの成果についてご紹介します。

MDGsが生まれた理由

MDGsが生まれた理由として、それまでの開発方法への反省が挙げられます。1980年代、国際社会は「構造調整政策」という考え方で開発途上国の経済発展を目指していました。しかし、その方法では順調に進まず、貧しい人が増えてしまうという結果になりました。

1990年代になると、貧困問題への関心はさらに高まり、主要な国際会議やサミットで貧困を減らす目標が掲げられるようになります。それらをまとめる形で、節目となる年にMDGsが生まれました。

MDGsで定められた目標8つ

MDGsでは、極度の貧困と飢餓の撲滅を始め、柱となる8つの目標が定められました。そして、その下に具体的な21のターゲットと60の指標も設定されました。ほとんどの目標は、1990年を基準の年として目標を定め、2015年が達成期限でした。

ここからは、8つの目標で定められた具体的なターゲットを詳しくご紹介します。また、達成するために行われた日本の取り組みの一部についても紹介します。

■1:極度の貧困と飢餓の撲滅

1つ目の目標が掲げるのは、極度の貧困と飢餓の撲滅です。この目標で設定されたターゲットは3つあります。

まず、1日1.25ドル未満で生活する人々の割合を半減させること、飢餓に苦しむ人々の割合を半減させることが定められました。そして、女性や若い人も含めて、すべての人が働きがいのある人間らしい仕事ができることも目標にされました。

■2:普遍的な初等教育の達成

目標の2つ目は、普遍的な初等教育の達成です。2015年までにすべての子どもたちが、男女の区別なく、初等教育のすべての課程を修了することが目標にされました。

日本も、この分野の国際社会の取り組みに積極的に貢献しました。たとえば、質の高い教育環境を提供するため、学校・コミュニティ・行政が一体となって、学習環境を改善する教育支援モデルの提示をしました。

■3:ジェンダー平等の推進と女性の地位向上

3つ目に、「ジェンダー」つまり、男女平等の推進と女性の地位向上が定められました。具体的には、2005年までに初等・中等教育において、2015年にはすべての教育ステージで男女格差を解消することが目標でした。

■4:乳幼児死亡率の削減

4つ目の目標は、乳幼児の死亡率を削減することです。2015年までに、5歳未満の幼児の死亡率を3分の2引き下げることが目標とされました。

この分野でも、日本は積極的に国際社会の取り組みを主導しました。戦後の復興時の経験を活かし、妊産婦と乳幼児の命を守るための支援モデルをアピールしました。

■5:妊産婦の健康の改善

5つ目は、妊産婦の健康状態の改善です。具体的には、2015年までに妊産婦の死亡率を4分の3減少させることと、リプロダクティブ・ヘルスの完全普及が目指されました。

リプロダクティブ・ヘルスは、「性と生殖に関する健康」と訳されます。男性とは異なる健康上の問題に直面する女性が、生涯を通して健康でいるための取り組みが重要視されています。

■6:HIV/エイズ・マラリア・その他の疾病の蔓延防止

6つ目として、HIV/エイズやマラリアなどの疾病の蔓延防止が掲げられました。HIV/エイズでは、2010年までに必要とするすべての人が治療を受けられるようにすることと、2015年までに蔓延を阻止し、その後減少させることが目標でした。

また、マラリアやその他の主要な疾病についても発生を阻止し、発生率を下げることが目指されました。

■7:環境の持続可能性の確保

目標の7つ目は、環境の持続可能性の確保です。具体的には、持続可能な開発を各国の政策やプログラムに反映させ、環境資源を回復させることを目指しました。2010年までに、生物多様性の損失率を引き下げることもターゲットの1つでした。

また、安全な飲料水と衛生的な施設を利用できない人々の割合を半減させることや、2020年までにスラム居住者の生活を大きく改善させることも目指されました。

この分野において、日本は環境汚染対策に関する多くの知識や経験を活かして、浄水器の導入支援など様々な取り組みを行いました。

■8:開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

8つ目は、開発のためのグローバル・パートナーシップの推進です。ルールを守った、差別のない貿易と金融システムの構築が推進されました。民間の企業と協力し、特に情報・通信技術分野で利益が得られるようにすることや、必要な医薬品を安く提供することが目指されました。

また、後発開発途上国、島・内陸の開発途上国の経済成長や、債務への取り組みも行われました。

2015年という区切りを迎えたMDGsの取り組み成果

世界全体での取り組みの結果、MDGsの達成期限である2015年までに多くの成果が挙げられました。しかし、すべての目標が達成できたわけではありません。国や地域によって達成状況に差があったり、国内でも性別や年齢によって格差が生じていたりと、課題も残りました。

ここからは、15年間の取り組みの成果や、達成できなかった目標と課題について紹介します。

■1:達成できた成果

MDGsの8つの目標それぞれにおいて、様々な成果が見られました。特に、貧困を減らすことについては、1日1.25ドル未満で暮らす人の割合が半数以下に減少し、目標を達成できました。「MDGsは歴史上最も成功した貧困撲滅運動」とも言われ、その成果が強調されました。

他の分野でも達成できた成果は多くあります。たとえば、初等教育の就学率は増加し、学校に通えない子どもの数を減らすことができました。また、たくさんの人がマラリアや結核から命を救われ、安全な飲料水が飲めるようにもなりました。

■2:達成できなかった目標や残された課題

達成できた成果の一方で、特に教育や母子保健の分野で課題が多く残されました。すべての子どもが初等教育を受けられることを目指していましたが、地域や性別、経済状況によって学校に通えていない子どもがまだたくさんいます。

乳幼児の死亡率についても、半減させることはできましたが、3分の1まで引き下げるという目標は達成できませんでした。命を落とす乳幼児の大半が予防できる病気が原因で亡くなり、地域によって格差があることも課題となりました。

知っておきたいMDGsとSDGsの違い

多くの成果と様々な課題を残したMDGsの取り組みを引き継いだのが、SDGs(持続可能な開発目標)です。

SDGsは2030年までに達成すべき目標とされ、MDGsの取り組みをさらに強化し、新たな課題も加えたものになりました。MDGsより多い17の目標、169のターゲットが設定されています。

SDGsでは特に、「誰ひとり取り残さない」ことが主要な柱とされています。これはMDGsの取り組みで、地域・性別・年齢・経済状況による格差のため、取り残された人々の存在が明らかになったからです。発展途上国だけでなく先進国でも積極的に取り組まれています。

MDGsとSDGsへの理解を深めてやれることから始めてみよう

MDGsとSDGsへの理解を深めてやれることから始めてみよう MDGsとSDGsへの理解を深めてやれることから始めてみよう

MDGsとその後継であるSDGsについて知り、みんなができることを考えて行動することが大切です。

SDGsは、私たちみんなが地球で暮らし続ける未来を実現するために定められた目標です。みんなが当事者として、身近なところから、今起きている問題とSDGsのつながりを考えなければなりません。

この記事を参考にして、MDGsやSDGsへの興味を深め、ぜひ自分にできることを考えてみてください。

[参照元]

『(ODA)ミレニアム開発目標(MDGs)』(外務省)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html

『第1章MDGsの成果と課題』(外務省)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000137905.pdf

『8 生涯を通じた女性の健康支援』(内閣府男女共同参画局)

https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/1st/2-8h.html