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脱炭素社会とは?実現へ向けての問題点や日本の取り組みもあわせて紹介

脱炭素社会について、具体的にどのような社会を指しているのかわからないと感じる方も多いのではないでしょうか。今回は脱炭素社会の必要性や実現に向けた問題点、日本での取り組みについて解説していきます。新しい時代へ向けて何が求められるのか、ぜひ参考にしてみてください。

脱炭素社会とは?

脱炭素社会とは、地球温暖化の要因となる二酸化炭素(CO2)をはじめとした温室効果ガスの「排出量実質ゼロ」を目指す社会のことを指します。

地球温暖化に影響を及ぼす温室効果ガスには、CO2やメタン、一酸化二窒素、フロンガスといった類があり、特に温暖化への影響が大きいとして問題視されているのがCO2の排出量の多さです。

この課題を解決するために求められているのがCO2の排出量削減ですが、「排出量実質ゼロ」はCO2の排出を完全に無くすための取り組みではありません。CO2は排出が避けられないため、後から回収し、実質的にゼロを目指すといった取り組みを「排出量実質ゼロ」と言います。

なぜ脱炭素社会が必要なの?

脱炭素社会は、先進国から途上国まで世界各国で取り組みが求められており、その背景には地球温暖化の深刻化が挙げられます。

温室効果ガスが地球に与える影響は大きく、気温・海水温が上昇することにより多様な生態系が破壊されたり、漁業環境が悪化することに加え、氷河や海氷は溶けはじめ、海面上昇による国土の消失が懸念されています。台風の大型化や突発的な豪雨による大規模な水害も各地で発生しており、すでに気候変動から生活にも大きな影響を及ぼしています。

また、2015年に採択されたパリ協定においては気温上昇を2℃より十分低く保持することを目標として設定し、2℃のラインが人間と自然が共存できる限界値とされています。

これ以上の温暖化はラインを超えてしまい、干ばつや生態系の変化、水不足、食料不足などがさらに深刻化する恐れがあると言われているため、一刻も早く脱炭素化に取り組み温暖化を食い止める必要があるのです。

出典:地球温暖化対策計画|環境省
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/keikaku/onntaikeikaku-zentaiban.pdf

脱炭素社会実現への問題点4つ

日本では、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標が掲げられています。しかし、実現達成するためには解決するべき課題点があります。ここからは、脱炭素社会実現への問題点を4つ紹介していきます。

出典:2050年カーボンニュートラルの実現に向けて|環境省
https://www.env.go.jp/earth/2050carbon_neutral.html

■1:資源エネルギーを化石燃料で多くを補っている

日本のエネルギー産業は、化石燃料に多く依存しています。

資源エネルギー庁のデータによると、2018年時点でのエネルギー供給は石油や石炭、天然ガスなどCO2排出量の多い化石燃料が85.5%を占めています。

特に、石炭と石油を用いる火力発電は日本における主力エネルギーであり、天然ガスを用いる火力発電の倍以上のCO2を排出します。そのため、再生可能エネルギーの普及が求められていますが、現在の技術では供給面や価格面などが安定していないのが現状です。

出典:日本のエネルギー2020|経済産業省 資源エネルギー庁

■2:運輸業の脱炭素化が遅れている

運輸業の運搬手段である自動車や飛行機などは、主燃料に化石燃料が用いられています。そのため、エネルギー産業に次いで多くのCO2を排出し脱炭素化の遅れが見られます。

CO2排出量削減のためには、電気自動車など次世代自動車の開発や、補助金制度の設立が進められています。

また、燃費改善や物流の効率化実現のために、2020年には環境省と国土交通省の連携事業として「自立型ゼロエネルギー倉庫モデル促進事業」や「トラック輸送高効率化支援事業」などがスタートしました。

しかし、欧米では数年前から国をあげて自動車の電動化や航空燃料の変更、新車販売規制などを行っているため、日本は後れをとっているのが実情です。今後の遅れをどのように取り返していくかが大きな課題と言えるでしょう。

出典:物流分野におけるCO2削減対策促進事業|環境省
http://www.env.go.jp/earth/matr02-02-14.pdf

■3:鉄鋼業はCO2を排出せざるを得ない

鉄鋼業では、製造時に大量に石炭使用するためCO2の排出が避けられません。また、日本における一大産業であるため、排出量も膨大です。

課題解決に向けて、近年では石炭の代わりに水素を原料に用いることで、CO2の排出を抑える技術研究が進められています。しかし、実現には数十年を要すると言われているため、実用化に至るまでには時間がかかるでしょう。

■4:家庭でのCO2排出量も多い

日本のCO2排出量のうち、家庭での排出量は全体の14.4%を占めています。特に、暖房や給湯、照明などの家電製品が大きな割合を占め、生活全体に関係するCO2排出の大幅削減が求められています。

近年では省エネルギー技術の普及によりエネルギー消費量は低下傾向にありますが、世界と比較すると日本人の危機意識の低くさは著しく、ライフスタイルの変革とともに意識面での課題も残されています。

出典:2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について|環境省
https://www.nies.go.jp/whatsnew/jqjm1000000xcmba-att/jqjm1000000xcmzf.pdf

日本が脱炭素社会実現へ向けた6つの取り組み

脱炭素社会を実現するためには多くの取り組みが必要とされており、日本でもすでに様々な取り組みが始まっています。ここからは、日本が脱炭素社会実現へ向けた取り組みを6つ紹介していきます。

■1:カーボンプライシング制度

カーボンプライシング制度は、CO2を排出した企業や法人を課税対象とする制度を指します。炭素の価格付けとも呼ばれており、方法として炭素税や排出枠取引、国境調整措置の3つの導入が検討されています。

・炭素税(地球温暖化対策税)
各企業のCO2排出量に応じて課税額を設定する制度。CO2排出量1トン当たり289円の課税
・排出枠取引
企業のCO2排出量に上限を設定し、超過した場合は罰金を徴収する制度
・国境調整措置
輸出入品の製造時に発生したCO2排出量に応じ、課税または減免を行う制度

以上の導入が検討されています。

出典:世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会 中間整理|経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_neutral_jitsugen/pdf/20210825_1.pdf

■2:「3E+S」に基づく電気の供給

電気の供給において「3E+S」に基づいたエネルギーミックスが勧められています。エネルギーミックスとは、複数の発電方法を組み合わせ、電気の供給を行う方法を指します。

「3E+S」とは、エネルギーの安定供給(Energy Security)・経済性向上(Economic Efficiency)・環境(Environment)の3つのEを両立させ、そのうえで安全性(Safety)を確保するといった考え方を指します。

たとえば、火力発電の安定性に再生可能エネルギーのクリーンさを組み合わせることにより、CO2排出量の削減と安定的な電気供給の両立が実現できると言われています。

このように、各発電方法の特徴を踏まえたうえで組み合わせるエネルギーミックスの実現が必要なのです。

■3:ゼロカーボンシティの普及

ゼロカーボンシティとは、「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」を目標に掲げる地方公共団体を指します。脱炭素化に向けた目標設定をもとに、温室効果ガスの排出量の把握や、再生可能エネルギーを普及させるためのPR活動などを行います。

具体的な活動として挙げられるのが、電気自動車等の導入の補助制度、公共施設への再生可能エネルギーの率先導入などです。2021年8月31日時点では、444自治体がゼロカーボンシティの表明を出しており、総人口は約1億1,140万人にのぼります。

出典:2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体 2021年8月31日時点|環境省
https://www.env.go.jp/policy/zero_carbon_city/01_ponti_210831_2.pdf

■4:革新的な技術の開発

日本では、2021年1月に策定された「革新的環境イノベーション戦略」に基づき、革新的な技術の開発が進んでいます。

具体的な事例として、化学資源依存からの脱却においてはプラスチック等の高度資源循環技術や、金属等の高効率リサイクル技術の開発が挙げられます。さらに物流の脱炭素化において進められているのが、自動車や航空機等の電動化の拡大に向けた高性能蓄電池の開発等です。

他にも様々な領域において、革新的な技術確立のために研究・開発が進められています。

出典:革新的環境イノベーション戦略|内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui048/siryo6-2.pdf

■5:ESG投資の促進

ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの観点を重要視する企業の将来性を分析・評価したうえで、投資する企業を選別する方法を指します。EGS投資が重視されている背景には、気候変動リスクへの関心の高まりが挙げられます。

国連国際防災戦略事務局によると、1998年~2017年の気候変動による経済損失額は、世界全体で2兆2500億ドル(約252兆円)にのぼり、それ以前の20年と比較して150%以上増加したとの報告がなされています。

このことから、気候変動は金融機関や投資家において大きなリスクであるため、企業による気候変動への対応は重要な急務と言えるでしょう。

出典:SDGs レポートVol.4 気候変動が経済に与えるリスクと対策 〜10年間で250兆円の経済損失~|日本気象協会
https://www.jwa.or.jp/news/2020/05/9856/

■6:二国間クレジット制度

二国間クレジット制度とは、温室効果ガスの排出削減に向けて途上国と協力し合い、その成果を二国間で分け合う制度を指します。

途上国にとって多くの低炭素技術はコストが高いため、投資の回収において見込みが立てにくい傾向にあります。そこで必要となるのが、日本の優れた低炭素技術や製品、システム、サービス、インフラです。

これらを途上国に提供することにより、途上国は自国だけでは難しい排出削減プロジェクトを実施することが可能です。

また、日本は途上国の成果を「クレジット」として受け取り、その「クレジット」で自国の排出削減目標を補えるため、国内だけでなく地球規模でのCO2排出削減に役立つのです。

脱炭素社会実現に向けての対策4つ

日本では、脱炭素社会の実現に向けて様々な取り組みがなされています。しかし、新しい時代へ向けた変革を後押しするには、脱炭素への移行段階に応じた対策が必要です。

ここからは、脱炭素社会実現に向けての対策を4つ紹介していきます。

■1:地域脱炭素ロードマップを導入

地域脱炭素ロードマップとは、国と地方とが協力し合い、地域における脱炭素社会の実現を図るための具体策を示したものを指します。

特に2030年までの脱炭素の達成を目標としており、具体的には太陽光発電や食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立など、地域特性や気候風土に応じた対策が挙げられています。

地域脱炭素ロードマップ導入の背景には、成功モデルの全国展開が挙げられます。地域が主役となって脱炭素に取り組み、地域特性に応じた効果的な手法を活用・伝搬することにより、2050年を待たずに全国の脱炭素達成を目指す取り組みです。

■2:企業との競争を強化

企業間での競争を強化することにより、CO2排出量の削減においてさらなる加速が見込めるようになります。

2050年の脱炭素化という高い目標を実現するためには、CO2排出量削減に向けた取り組みを、これまで以上に高い水準とスピードで行う必要があります。投資促進税制や研究開発税制など、脱炭素化の効果が高い製品への投資を優遇する方法が検討されています。

このように企業間での競争を強化する仕組みを導入し、新産業への転換に繋げることが求められています。

■3:生産設備を増加

脱炭素社会の実現には、大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備を導入・増加する必要があります。

しかし、たとえば燃料電池や洋上風力発電設備などは、ニーズはあるものの企業の取り組みだけでは初期の導入拡大が難しい場合があります。そのため、企業が達成すべき基準として炭素生産性の向上率とそれに応じた措置率を定め、設備の導入を支援することが検討されています。

■4:CO2排気量の少ない製品の普及

脱炭素社会の実現には、CO2排気量の少ない製品の開発だけではなく、普及拡大が求められます。そのためには、製品の普及を図る施策が必要となるでしょう。

たとえば低燃費自動車や省エネ型家電などは、国内市場に加え海外展開を支援するなど、各国における実効的な低炭素化への移行を率先して支援することが施策として挙げられます。また、化石エネルギーからの脱却などにおいても施策が必要でしょう。

日本の最先端技術と世界最速の実用化で、世界の脱炭素化をリードする取り組みが求められています。

脱炭素社会を目指す日本の取り組みを正しく知ろう

脱炭素社会を目指す日本の取り組みを正しく知ろう 脱炭素社会を目指す日本の取り組みを正しく知ろう

本記事では、脱炭素社会についての概要や必要性、実現に向けた問題点や取り組みなどを紹介しました。日本は欧米各国と比べ、脱炭素化に向けた取り組みにおいて後れをとっているのが実情です。

日本が脱炭素社会を実現させるためには、再生可能エネルギーの普及や運送業の燃料変更など、問題点をクリアする必要があります。

ぜひこの記事で紹介した脱炭素社会の必要性や問題点などを参考に、日本の取り組みについて理解を深めてみてはいかがでしょうか。

【この記事に関連する目標】

※他の目標とも関連していますが代表的なものをあげています。

SDGsの目標17個のうち、この記事に関する目標は2つあります。SDGsの目標について理解し、今私たちにできることを考えてみましょう。

[参照元]

『地球温暖化対策計画』(環境省)

https://www.env.go.jp/earth/ondanka/keikaku/onntaikeikaku-zentaiban.pdf

『2050年カーボンニュートラルの実現に向けて』(環境省)

https://www.env.go.jp/earth/2050carbon_neutral.html

『日本のエネルギー2020』(経済産業省 資源エネルギー庁)

『物流分野におけるCO2削減対策促進事業』(環境省)

http://www.env.go.jp/earth/matr02-02-14.pdf

『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(環境省)

https://www.nies.go.jp/whatsnew/jqjm1000000xcmba-att/jqjm1000000xcmzf.pdf

『脱炭素型ライフスタイルの施策について』(環境省)

https://www.env.go.jp/press/files/jp/113477.pdf

世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会 中間整理(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_neutral_jitsugen/pdf/20210825_1.pdf

『2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体 2021年8月31日時点』(環境省)

https://www.env.go.jp/policy/zero_carbon_city/01_ponti_210831_2.pdf

『革新的環境イノベーション戦略』(内閣府)

https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui048/siryo6-2.pdf

『(SDGs レポートVol.4)気候変動が経済に与えるリスクと対策 〜10年間で250兆円の経済損失~』(日本気象協会)

https://www.jwa.or.jp/news/2020/05/9856/

『「二国間クレジット制度」は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策』(資源エネルギー庁)

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/jcm.html

『カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?』(資源エネルギー庁)

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/green_growth_strategy.html

『国・地方脱炭素実現会議(第3回)で『地域脱炭素ロードマップ』が決定!!』(環境省)

https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20210709-topic-06.html

『2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』(経済産業省)