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食品ロス削減推進法の目的とは?政府が行っている取り組みもあわせて紹介

日本は、推計で年間約600万トン(2018年)もの食品ロスがあり、解決すべき課題として位置づけられています。この記事では、中心となる「食品ロス削減推進法」の概要や目的の解説にはじまり、日本や世界の取り組み、そして子どもと一緒にできる取り組みを紹介していきます。

食品ロス削減推進法の概要

2019年10月1日に施行された食品ロス削減推進法は、正式には「食品ロスの削減の推進に関する法律」といいます。

この法律は、日本だけでなく世界においても取り組むべき重要な課題とされている、大量の食品ロスの削減を促すものです。

食品ロス削減推進法の目的は?

日本は、海外からの食糧輸入に依存している一方で、まだ食べることができる状態の食品を大量に廃棄している現状があります。食品ロス削減推進法は、こうした問題を解決するために策定されています。

国や地方公共団体、事業者、消費者などの様々な立場の人たちの役割や責務などを明らかにするとともに、基本方針の策定やその他食品ロスの削減に関連する施策の基本事項を定めることによって、総合的な推進を図ることが目的です。

食品ロス削減推進法と食品リサイクル法との違い

食品リサイクル法は、2001年5月に施行された法律で、食品関連事業者などから排出される食品廃棄物の抑制によって最終処分量を減少させることを目的としています。また食品廃棄物を肥料や飼料などとしてリサイクルすることも目的の1つです。

食品リサイクル法と食品ロス削減推進法との大きな違いは、対象者が誰かということと、多様な主体の連携の有無にあります。食品リサイクル法は、「事業者」に対する法律であり、食品メーカー、卸売・小売業者、飲食店といった食品関連事業者が取り組むべき法律です。

一方で、食品ロス削減推進法は「国、地方公共団体、事業者、消費者の多様な主体」が対象であり、事業者だけでなく国民全体で連携し取り組むことを目指した法律です。

食品ロス削減推進法に向けた食品廃棄物の現状

食品ロス(食品廃棄物)問題は、日本だけでなく世界を見ても解決すべき課題とされていま

ここからは、食品ロス削減推進法に関わる食品廃棄物の現状について紹介していきます。

■1:国内の食品廃棄物の推計状況

環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイによって、世界共通語として提唱された日本の言葉に「MOTTAINAI(もったいない)」があります。

この言葉を持つ日本ですが、食品廃棄物と食品ロスの推計状況は、2018年では食品廃棄物が2531万トン、食品ロスが600万トンとなっています。

■2:世界と日本との差

日本の食料自給率は、諸外国と比べると低く37%(2018年度)となっており、海外からの輸入に依存している状態です。輸入に頼る一方で、日本は人口一人当たりにおける食品廃棄物発生量が高い状態(133.6kg)となっています。

諸外国でも食品廃棄物発生量については高い水準であり、たとえばアメリカ:177.5kg、イギリス:187kg、フランス:148.7~200.5kg、中国:75.74kgです。

食品ロス削減推進法に向けて政府が行っている11の取り組み

持続可能な社会の実現に向けて、日本は食品ロス削減推進法を施行し食品ロス問題に取り組み始めています。ここからは、政府が行っている食品ロス削減の取り組みを紹介していきます。

■1:商慣習を見直す取り組み

食べ物や飲み物だけでなく調味料といった食に関わるものには、賞味期限があります。物流において、この賞味期限をもとにした納品期限があり、常温流通の加工食品は賞味期限の「1/3まで」とされています。

この納品期限を賞味期限「1/3まで」とするのは、商慣習上のルールです。そのため食品ロスを削減していくために、国は納品期限を賞味期限「1/2まで」に緩和することを推進しています。

国の基本的施策として「納品期限の緩和」とともに、「賞味期限の年月表示化」、「賞味期限の延長」を三位一体とし、食品関連事業者などの取り組みを支援しています。

■2:食品ロス削減レシピの募集

家庭から排出されている食品ロス量は、2018年度で推計276万トンです。家庭系の食品ロスが起きてしまう理由は、食べ残し、食材の傷み、期限切れといわれています。

消費者庁では食品ロスを削減するために、料理レシピサービス「クックパッド」に消費者庁のキッチンを開設し、提供された食材を無駄にしないレシピを掲載する取り組みを行っています。

■3:啓発用リーフレットの作成

食品ロス削減には、食品関連事業者だけでなく消費者の取り組みも大切です。政府は、消費者としてできる取り組みを後押しするものとして、啓発用リーフレットを作成し、消費者庁ホームページに情報を掲載しています。

リーフレットは誰でも自由にダウンロードできるようになっているので、活用してみるのもよいでしょう。

■4:気象情報の活用

政府が取り組む食品ロス削減の関連事業の1つとして、気象情報を活用した「CPFR」があります。

CPFRは、製造、配送事業・卸、小売が相互に協力し、商品の販売計画や需要予測、在庫管理を協力して行い、欠品及び在庫削減を同時に達成させることを目指すものです。

たとえば、冷やし中華つゆの最終生産量は、気象情報をもとに体感気温を算出し需要予測精度を高度化しています。その結果、高い割合で食品ロスの削減に成功しています。

■5:容器包装の工夫の提示

容器包装は、食品に合わせて様々な工夫がされています。政府は、食品ロスの削減を推し進めるために、この容器包装の工夫事例を農林水産省のホームページで掲載しています。

容器包装の工夫・改善によって、食品自体の「鮮度保持向上」や「賞味期限の延長」、使用頻度や量に合わせた「小分け個包装」、「輸送時損傷軽減」などが実現されています。

■6:「おいしい食べきり」全国共同キャンペーンの実施

農林水産省は2020年12月から翌年1月まで、消費者庁・環境省・全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会と連携し、「おいしい食べきり」全国共同キャンペーンを実施しました。

「おいしい食べきり」全国共同キャンペーンは、日本における食品ロスの削減を推進する取り組みの1つとして行われ、外食時やテイクアウトでの「食べきり」を啓発するものです。

具体的には、地方公共団体や民間団体、学校などへの啓発資材の配布、外食事業者などが店舗に資材を貼れるように、農林水産省ホームページで啓発資材の提供を実施しています。さらに、外食時の食べ残しを軽減するためのノウハウや優良事例を提示しています。

■7:「てまえどり」の呼びかけ

消費者庁は、2021年6月から農林水産省、環境省、そして一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会と連携し、コンビニエンスストア4社に対して「てまえどり」の呼びかけを消費者に行う働きかけを実施しています。

「てまえどり」とは、消費者が購入後すぐに食べる場合に、店舗の商品棚に陳列されている商品を手前から選んだり、消費期限の迫った商品を積極的に選んだりすることで、食品ロスの削減を目指す取り組みです。

■8:災害用備蓄食品の有効活用の取り組み

日本は、大雨や台風、またそれらによる洪水・土砂災害、さらに地震の発生といった多くの自然災害に襲われています。特に、2000年以降では毎年のように自然災害が発生し、東日本大震災や熊本地震、2019年に起きた房総半島台風などは、まだ記憶に新しい方が多いでしょう。

こうした自然災害に対し、政府は災害用備蓄食品を各地方自体に備えさせています。この災害用備蓄食品は食品である以上、必ず賞味期限があります。そのため、政府は災害用備蓄食品に対し、合理的な時期に適切に食品の入れ替えを行っています。

その結果、賞味期限が近い食品が発生するため、賞味期限がおおむね2か月以内の食品の品質状態を確認・検査し、フードバンク団体などへ提供しています。

このような災害用備蓄食品の有効活用により、政府は食品ロスの削減と生活困窮者への支援を図っているのです。

■9:フードバンク活動の普及

「フードバンク」とは、食品を製造する企業で発生する規格外品(包装の印字ミス)などを引き取り、福祉施設やこども食堂などへ無料で提供する団体や活動のことを指します。

フードバンク活動を有効活用し、全国にあるフードバンク151団体(農林水産省把握している)に対し食品や食材の無償提供を実施しています。

■10:食品ロス削減全国大会の開催の呼びかけ

食品ロス削減を国民運動としていくためには、地方公共団体や民間団体、学校、事業者、消費者など様々な立場の主体者間の連携やフードチェーン全体での認識共有が必要です。

日本では10月30日を「食品ロス削減の日」と制定し、2017年から毎年食品ロス削減全国大会を実施しています。第4回目となった2020年では、全国に先駆けて「富山県食品ロス削減推進計画」を策定し取り組みを進めている富山県で、食品ロス削減全国大会が開催されました。

■11:学校給食における地産地消の推進

地産地消とは、その地域で生産された農林水産物を地域で消費することで、食料自給率の向上や農林水産業の6次産業化につながる取り組みのことをいいます。

食品ロス削減には、食品関連事業者だけでなく消費者の取り組みも大切です。地産地消を学校給食といった教育の場でも推進し、食品ロス削減への取り組みのきっかけづくりをしています。

食品ロス削減に向けた世界の取り組み4つ

食品ロスの問題に対して、日本だけでなく世界各国も積極的に取り組んでいます。ここからは、では、食品ロス削減に向けた世界の取り組みとして、4つの国で実践されている事例を紹介します。

■1:「ドギーバッグ」アメリカ

「ドギーバッグ」とは、外食時に出た食べ残しを持ち帰るためのバッグやボックスのことをいいます。アメリカではドギーバッグは広く普及しており、ハイクラスのレストランでも食べ残しの持ち帰りが可能です。

こうした食べ残しを家庭に持ち帰り、改めて食べることで食品ロスを減らすことへつながっていきます。

■2:「Too Good To Go」オランダ

2016年にデンマークで誕生した「Too Good To Go」は、世界で起きている食品ロスをなくすことをミッションにし、食品ロスを削減することを目的としたアプリです。

このアプリは、レストランやホテルなどで売れ残った食品を販売価格の半分以下で購入できるサービスを提供しています。

オランダでは、2018年1月から「Too Good To Go」アプリのサービスを開始し、およそ1年半でオランダ全土に普及しています。その結果、約120万食におよぶ食品が廃棄されずにすんでいます。

■3:「連帯冷蔵庫」スペイン

スペイン北東部にあるバスク自治州ガルダカオに、貧困層への食糧援助と廃棄物削減の目的で「連帯冷蔵庫」と呼ばれる公共冷蔵庫が設置され注目されています。

この連帯冷蔵庫には、自宅やレストランで余った料理や余剰食材を入れることができます。ただし、生肉や魚、卵を入れることはできず、また自家製食品については調理した日付をラベリングする必要があります。

こうした食品ロスの削減によって、2016年6月末時点で推定200~300kgの食品が廃棄されずにすんでいます。

■4:「食品廃棄の禁止」フランス

フランスでは、2016年2月11日に食品廃棄物削減に関する法律(Loi anti-gaspillage alimentaire)が公布されました。

同法律では、店舗面積が400平方メートル以上の大型スーパーを対象とし、賞味期限切れなどの理由で食品を廃棄することを禁止しています。さらに、まだ消費できる食品に関しては、事前に契約した慈善団体に寄付するか、肥料や飼料に再利用することを義務化しています。

食品ロス削減推進法の推進のために子どもとできること4つ

食品ロスの問題は、子ども達の将来に対しても深い関わりのある問題です。食品ロス問題は、家庭でも取り組むことができるので、子どもと一緒にできる小さなことから始めてみてはいかがでしょうか。

ここからは、子どもと一緒にできる食品ロス削減のための取り組みを4つご紹介します。

■1:まずは手軽にできることから始める

買い物時には、買い物前に冷蔵庫に残っている食材を確認したり、必要な分だけを買って食べ切るようにしたりするといった工夫です。

また、調理や食事での工夫では、冷蔵庫に残っている食材から使うようにしたり、家族の予定や体調に合わせて食べ切れる量を作るようにしたりしましょう。

そして、食材を保存する時には、食材に合わせて下処理をしてストックしておくことで、長期保存しやすくなります。

■2:フードシェアリングアプリを活用する

食品ロス削減推進法の成立をきっかけに、日本でもフードシェアリングアプリが少しずつ広まってきています。

フードシェアリングとは、店舗などの売れ残りや余剰品など、何もしなければ廃棄されてしまう商品を消費者に通常より低価格(あるいは無料)で提供することで、食品ロスの削減を目指す取り組みです。

たとえば、横浜市では企業と連携し、フードシェアリングサービスを市のホームページで紹介しています。こうしたサービスを子どもと一緒に利用することで、子どもたちは食品ロスの問題について知ることができるでしょう。

■3:食べ残し協力店や食べきり協力店を利用する

外食時の食べ残しを防ぐために、地方自治体では「食べ残し協力店」や「食べ切り協力店」事業を展開しています。

同事業活動では、小盛りメニューの提供やお持ち帰りの対応といった、食べ残しを減らす取り組みを実施することで、食べ切りを目指しています。

たとえば、横浜市では「食べ切り協力店」事業をスタートさせており、食べ残しなどの削減に取り組む飲食店を協力店として登録し、市のホームページなどで紹介しています。

外食する時に、事前に子どもと一緒にお店のメニューについて話し合っておくことも大切です。

■4:食品ロス削減に貢献ができるサービスを利用する

食品ロス削減推進法をきっかけに、食品ロスの削減を目指した様々なサービスが展開されるようになってきました。

生産者から直接、食材や商品の購入ができるものや、食品ロス削減に協力的なメーカーから、協賛価格で提供された商品を高い値引き率で販売しているサービスがあります。

こうしたサービスを利用することで、手軽に食品ロス削減に貢献することができるでしょう。

食品ロス削減推進法を理解して食品ロスを防ぎましょう

食品ロス削減推進法を理解して食品ロスを防ぎましょう 食品ロス削減推進法を理解して食品ロスを防ぎましょう

2019年に施行された「食品ロス削減推進法」の概要や国内外での取り組み、また子どもと一緒にできる食品ロス削減の取り組みについて紹介してきました。

「食品ロス削減推進法」を通して、日本が抱える食品ロスの問題を考えるきっかけにしてみてください。

【この記事に関連する目標】

※SDGs(持続可能な開発目標)の「12.持続可能な生産消費形態を確保する」に該当しています。

12番目の目標の内、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。」がより具体的なターゲットになります。

「食品ロス削減推進法」によって、食品ロスの削減や食品リサイクルの推進を国民運動として醸成され、経済・社会の様々な課題の解決へとつながっていきます。

[参照元]

『食品ロスの削減の推進に関する法律』(消費者庁)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/promote/

『3R政策 食品リサイクル法』(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/06/index.html

『食品リサイクル法について』(環境省)

https://www.env.go.jp/recycle/food/01_about.html

『我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成30年度)の公表について』(環境省)

http://www.env.go.jp/press/109519.html

『1.食品ロス削減に向けた加工食品の納品期限の見直し及び賞味期限表示の年月表示化の取組について』(農林水産省)

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_3.html

『食品ロス削減に向けた賞味期限表示の大括り化について』(農林水産省食料産業局)

https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001410779.pdf

『[食品ロス削減レシピ]もったいないを見直そう』(消費者庁)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/recipe/

『食品ロス削減について行動する』(消費者庁)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/pamphlet/

『容器包装リサイクル』(農林水産省)

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/youki/

『「おいしい食べきり」全国共同キャンペーンを実施します』(農林水産省)

『小売店舗で消費者に「てまえどり」を呼びかけます』(消費者庁)

https://www.caa.go.jp/notice/entry/024301/

『国の災害用備蓄食品の有効活用の取組について』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19416.html

『国土交通白書2020』(国土交通省)

https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r01/hakusho/r02/html/n1115000.html

『フードバンク』(農林水産省)

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/foodbank.html

『「第4回食品ロス削減全国大会」を開催!』(農林水産省)

『地産地消・国産農林水産物の消費拡大』(農林水産省)

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gizyutu/tisan_tisyo/

『COLUMN8 フランスにおける食品ロス削減の取組』(消費者庁)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2020/white_paper_column_08.html

『食品ロスを減らすために、私たちにできること』(環境省)

『SDGsの目標とターゲット食品産業』(農林水産省)

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/sdgs_target.html#goal_12