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相対的貧困とは?相対的貧困が与える生活への5つの影響と私たちにできること

発展途上国における問題として話題になることの多い貧困問題ですが、日本においても特に相対的貧困の問題は誰にでも起こり得るものです。表面化しづらい相対的貧困は、子どもの健全な成長や発達を妨げる大きな問題です。相対的貧困が子供に及ぼす影響や貧困家庭への支援について解説します。

貧困とは?

貧困とは? 貧困とは?

国連機関である国連開発計画(UNDP)は、貧困を「教育、仕事、食料、保険医療、飲料水、住居、エネルギーなどもっとも基本的なモノやサービスを手に入れられない状態のこと」と定義しています。

社会保障制度や公的な教育制度が充実している日本においては、世界と比較して極度の貧困状態にある人は少ないです。それにもかかわらず、2020年に厚生労働省が公表した「2019年国民生活基礎調査」によると、日本の子どもの貧困率は13.5%であり、7人に1人の子どもが貧困状態であるという現状にあります。

なお、子どもの貧困率は、2009年が15.7%、2012年が16.3%、2015年が13.9% と推移してきています。

相対的貧困と絶対的貧困の違い

ただ、これはもちろん、7人に1人の子どもが教育機会を提供されていない、保険医療にかかれない、住居をもたないということではありません。

日本の貧困について理解するには、「相対的貧困」と「絶対的貧困」の意味を確認する必要があります。

■相対的貧困

相対的貧困とは、その国の生活水準や経済環境に比較して困窮した状態であることを言います。その定義は、「世帯所得が等価可処分所得の中央値の半分(貧困線)に満たない状態のこと」です。

言い換えると、相対的貧困とは、その国や地域の水準において大多数の世帯に比べて貧しい状態であり、相対的貧困率が高くなると収入格差が広がっていると言えます。そして、前述した貧困率は、この相対的貧困の割合を見ています。

なお、2016年に総務省から発表された「平成26年全国消費実態調査」によると、貧困線は等価可処分所得(※)132万円、厚生労働省による「平成28年国民生活基礎調査の概況」では貧困線は等価可処分所得122万円となっています。日本においては7人に1人の子どもがこの貧困線を下回っているということになります。

(※)等価可処分所得とは世帯の可処分所得を世帯因数の平方根で割った値のこと。

■絶対的貧困

相対的貧困に比べて、絶対的貧困は国や地域の生活水準とは無関係に、生きていく上で必要最低限の生活水準が維持されていない状態を指します。例えば、飢餓に苦しんでいたり、十分な医療を受けることができないのが絶対的貧困で、一般的な貧困のイメージに近い状態です。

世界銀行が定めた国際貧困ライン(2015年時点で1日1.90ドル)を基準にして、それ以下で暮らしている人々のことを絶対的貧困者としています。

世界の相対的貧困の現状とは?

世界的に見ると、絶対的貧困は南アジアおよびアフリカなどの途上国に偏っています。この地域では、高い乳幼児死亡率や教育水準の低さが問題となっています。

一方、相対的貧困については、経済協力開発機構(OECD)が発表した世界の貧困率ランキングによると、1位が南アフリカ、2位がコスタリカ、3位がブラジルという結果となり、絶対的貧困のそれとは大きく異なります。

さらに、日本は同ランキングで15位であり、アメリカが5位、韓国が10位と、決して貧困が途上国の問題だけではないことを物語っています。

相対的貧困が生活に与える5つの影響

相対的貧困はその国の生活水準に埋もれて把握されづらい傾向にあります。相対的貧困に陥ると、その世帯の生活にさまざまな影響を及ぼし、子どもの成長・発達や前向きな行動を阻みます。

まずは、経済的に苦しくなると多くの人が営んでいる「普通の生活」を送ることができなくなります。そして、普通の生活を送っている人が、それに気づくことは困難でしょう。

相対的貧困が及ぼす影響について、具体的に見ていきましょう。

■1:生活費や進学費のために毎日アルバイトをするようになる

相対的貧困の家庭に育つ子どもは、生活における制約が大きくなります。

例えば、可処分所得に余裕のある家庭では、親が子どもの衣食住の面倒を見て、学力に見合う子供が希望した学校に進学させます。しかし、貧困の状態では、家計を支えるため、もしくは自分や兄弟の進学費用を貯めるためにアルバイトをせざるを得ない状況になります。

こうした状況は「高校生ワーキングプア」と呼ばれ、今後国や自治体が解決すべき課題です。高校生ワーキングプアの子ども達は、収入の少ない親を慮り、生活費や進学費用のために毎日働き、時にはダブルワークをすることもあります。

■2:金銭的に大学進学などを諦めるようになる

貧困家庭に育った子どもの中には、希望や学力があっても経済的な理由で高校や大学の進学を諦めなければならない場合もあります。塾や習い事、家庭教師、高校や大学の進学など、義務教育以外の教育を受けるには多額の費用が必要だからです。

さらに、奨学金制度などの救済措置はあるものの、その後に待っている返済によって貧困スパイラルから抜け出せなくなるケースもあります。

また、教育に関わる経験の多くは費用がかかり、貧困によってそれらの機会を失ってきた子どもたちは、さまざまなことにチャレンジする精神が育まれないことも大きな問題です。

■3:家庭内環境の悪化

貧困家庭での大きな問題は、家庭内の環境が悪化することです。経済的にひっ迫してくると、家族仲が険悪になったり、最低限必要な衣食住さえ不十分になることもあります。

特に大きな問題となるのが、子どもの成長に大きく影響する食事事情です。家計を切り詰めるために食費を削りすぎると、栄養が偏って子どもの成長を妨げることになります。

また、家庭環境の悪化は、子どもの体の成長だけでなく、心の成長をも妨げます。子ども時代に心身ともに正常な発達・成長ができなければ、大人になっても心身の不調を抱えたまま暮らすことになりかねません。

■4:自己肯定感が低くなる

自分だけが低い生活水準の家庭で育つと、「自分だけができない」ことが増え、「自分はダメだ」という自己否定につながり、自己肯定感は下がってしまいます。

絶対的貧困は国や地域全体に貧困が蔓延している場合が多く、周囲と比較しても無意味です。しかし、相対的貧困は自分の家庭の事情によって差がつくという、自分の努力では変えられない、いわば社会構造上の格差によって我慢を強いられます。

こうして貧困は、「努力すれば報われる」というモチベーションを低下させ、自己肯定感を阻み、ひいては将来の可能性を狭めてしまう結果となります。

■5:非行や虐待につながることも

日本の相対的貧困が招く子どもの自己肯定感の低下は、非行や虐待にもつながります。自己肯定感の低さが自尊心を奪い、やがて自己や他者を傷つけるようになる可能性があるのです。

平成21年に全国児童相談所長会がまとめた「全国児童相談所における家庭支援への取り組み状況調査」によると、虐待につながると思われる家庭・家族の状況として、「経済的な困難」が33.6%、「不安定な就労」が16.2%となっています。

また、たとえ虐待にまでは至らなくても、入浴させない、歯磨きが不十分、夜更かしをさせるなど、ネグレクト(育児放棄)に近い生活習慣の悪化も、子供にとって悪影響です。そのため、それを早期に発見する体制づくりが今後の課題となるでしょう。

貧困を解決するためにできること3つのこと

近年、国や自治体によって相対的貧困率と子どもの貧困率が調査され、問題視されているとともに、さまざまな支援も取り組まれています。

まずは、日本にも貧困家庭で苦しんでいる子どもがいるという事実を、多くの人が認識し、救うための手段を考える必要があります。

今、貧困に悩む子どもたちのためにできることを紹介します。

■1:寄付

寄付というのは、もっとも分かりやすくシンプルな支援方法です。

実際に貧困家庭で育つ子どもたちに対して何かをしたり、手伝うという活動支援は難しく、ハードルが高いと感じる人や、時間的余裕はないが金銭的な余裕がある人には適した支援方法です。

寄付をしたいと考えた人は、子どもたちを支援している団体が日本中に数多くあるため、インターネットや役所などで探しましょう。そして、支援団体の活動内容や理念など、自分自身でしっかり理解し、納得したうえで寄付をしましょう。

■2:ボランティア

子どもの支援を行うボランティア団体も国内には数多くあり、熱い思いを持った大勢の人が活動しています。

放課後児童クラブの指導員、学生ボランティアによるキャリア支援や学習支援、子どもの体験活動支援など、種類は豊富です。

特に、子どもの体験活動支援はスポーツや楽器、美術、英語、実験など、習い事ができない子どもたちにさまざまな体験をさせる手伝いができます。ボランティアは自分が得意な分野で活躍できるメリットがあります。

また、低料金で子どもに夕食を提供して、貧困家庭で育つ子どもの栄養面を支える子ども食堂なども全国に点在しています。

■3:情報に関心を持ち拡散する

自分も経済的な余裕はないし、支援活動をすることもできないが、貧困家庭の子供のために何かしたい、という人は、その事実に関心を持つだけでも良いでしょう。

成人した社会人が出会う人々は自分に近い経済環境の人が多い傾向にあります。仮に自分の周りに貧困家庭や、そこで育つ子どもがいなかった場合、こういった社会問題の実態を知る機会が少ないです。そのため、まずは社会問題として認識し、貧困状態に陥っている子ども達に関する情報を収集し、今自分ができることを考えましょう。

また、実際に支援行動に移せなくても、関心をもち続ける、またはそういった情報を発信している人の活動をチェックするだけでも良いでしょう。いずれ自分の環境が整ったら行動に移せるよう、関心を持続させることも重要です。

相対的貧困の理解を深めよう

相対的貧困の理解を深めよう 相対的貧困の理解を深めよう

相対的貧困の問題は誰にでも起こり得るものです。突然、病気や災害で親が亡くなったり、両親の離別でひとり親家庭となったり、親の失業によって経済状況がひっ迫するケースは多々あるでしょう。

見えにくく実態をつかみにくい相対的貧困は見過ごされがちですが、子供の健全な成長を妨げる大きな問題です。未来の日本を支えていく子どもたちが家庭の経済状況によって当たり前の生活ができない状況は、日本にとって大きな損失となります。

SDGs17の目標にもあるように貧困格差を失くし、平和や公正がすべての人に恵まれるよう、より多くの人が相対的貧困に関する理解を深めていく必要があるでしょう。

【この記事に関連する目標】

※他の目標とも関連していますが代表的なものをあげています。

[参照元]

『相対的貧困率等に関する調査分析結果について』(内閣府・総務省・厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/soshiki/toukei/dl/tp151218-01_1.pdf

『国民生活基礎調査の概況』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf

『平成26年全国消費実態調査』(総務省)

http://www.stat.go.jp/data/zensho/2014/pdf/gaiyo5.pdf

『平成28年国民生活基礎調査』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/03.pdf

『「全国児童相談所における家庭支援への取り組み状況調査」報告書』(全国児童相談所長会)

http://www.zenjiso.org/wp-content/uploads/2015/02/acf05fb0c83d761bd6520db27c26eaa1.pdf

『全国児童養護施設 総合寄付サイト』(一般財団法人 日本児童養護施設財団)

https://leavehome.org/?yclid=YSS.EAIaIQobChMIx6Djo9zt7gIVxyFgCh2_GwCnEAAYBCAAEgIwCvD_BwE

『SDGs SDGs17の目標』(公益財団法人日本ユニセフ協会)

https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/