少子高齢化が進行している要因|社会的影響や国の対策もあわせて紹介
少子高齢化は日本で起きている深刻な社会問題です。将来的に国がどうなっていくのか、その問題に対しての国や自治体の対策や目標など、経済、自治体、社会保障制度などすべてに影響がある中でひとりひとりができることをしていくことが大切といえます。
少子高齢化って何?
少子高齢化とは日本で起きている深刻な社会問題のことをいいます。
少子高齢化は「少子」と「高齢化」の2つの言葉からなり、0~14歳が少子人口、65歳以上を高齢者人口としたときに総人口に対して、高齢者人口が増大していることを表していれば「高齢化」といえるでしょう。
■1:日本国内の少子高齢化の実情
日本は、総人口約1億2,600万人に対し、約12%が少子人口、約28%が高齢者人口、そうでない年齢の人口が約59%となっています。
少子化とは「合計特殊出生率が人口を維持するのに必要な水準を相当期間下回っている状況」で、高齢化とは「総人口に占める高齢者人口が増大していること」です。
■2:少子化の定義とは
少子化とは出生率が下がり、子どもの数が減少することです。
15歳〜49歳までの女性が出産した子どもの数を合計し、それを「合計特殊出生率」と定義しています。そして「合計特殊出生率」が人口を維持するのに必要な水準をある程度の期間下回っている状況を「少子化」と定義しています。
少子高齢化対応の必要性
少子高齢化の少子化に対する対策は、子育ての支援を充実させたり、若い年齢での結婚・出産の実現を望むことや、子どもが多い世帯への配慮を考えること、男女の働き方改革などが挙げられるでしょう。
これらの課題に対して結婚、妊娠・出産・子育て、教育、仕事とそれぞれに応じた支援に加え、社会全体で行動しています。
一方で高齢化への対策としては、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、研究開発・国際社会への貢献などに取り組んでいます。
例を挙げると、年齢にこだわらずに働ける社会にするための環境を見直したり、公的年金制度を安定させるために取り組んだり、資産形成などの支援などの実施です。
しかしこれらの対策は一定の効果はあるものの、少子化および高齢化を止めるのに有効な手段とはいえず現状では、歯止めが利いていない状態といえるでしょう。
少子高齢化が進行している3つの要因
少子高齢化が進行している要因は一体なんなのでしょうか。大きく3つに分けてみていきます。
1. 晩婚・晩産により出生率が下がっている
2. 未婚率が上昇している
3. 仕事と子育てを両立する環境整備が遅れている
こちらの3つは高齢化ももちろんですが、少子化に大きく関わっています。
■1:晩婚・晩産により出生率が低下している
婚姻件数と婚姻率は出生率にも関わっていて、日本の婚姻件数は近年、減少している傾向といえます。第2次ベビーブームがあった1972年は約109万組の婚姻件数でしたが、2016年には約62万件と半分近くまで落ち込んでいます。
20~30歳代の未婚率の上昇で、男女ともに平均初婚年齢が上昇し、晩婚化が進んでいるといえるでしょう。
■2:未婚率が上昇している
未婚化や晩婚化も深くかかわり、低下している要因として、「経済的な理由」が男女どちらにも見られました。
「仕事と子育てを両立できる環境整備の遅れや高学歴化」という部分も背景にあるでしょう。
■3:仕事と子育てを両立する環境整備が遅れている
法の整備により女性の社会進出が進む一方、子育て支援が十分ではないことなど、仕事と育児の両立がむずかしくなっているため、出産・育児をする選択肢が制限され、晩婚化や未婚化が進んでいます。
晩婚化が進めばその分、第1子を授かる時期も遅くなるため、出産年齢も上がり、出産する年齢が上がることとなります。健康や体力を懸念して出産や育児をすることが厳しいという考えもあるでしょう。そのため、第2子以降を断念せざるを得ない可能性もあげられます。
少子高齢化による主な社会的影響5つ
少子化により世帯の規模が変動したり、子どもがいる世帯割合の減少、ひとり親の世帯などの「世帯の多様化」が進むとともに、小・中学校の減少、地域社会の活力の低下など、様々な社会的影響が懸念されます。
ここからは、少子高齢化による主な社会的影響5つについて紹介していきます。
■1:社会保障に関する給付と負担の影響
これまでの社会保障制度の改革は、年金制度や介護保険、またそれらの制度が重複していないか、していたら排除するという確認が行われてきました。
そして今後の社会保障を考える上で、これまでに進められてきた改革を反映した「社会保障の給付と負担」の見通しが進められてきました。
そのため改革の効果が目に見える形になり、改革がなされなかった場合の給付と負担の見通しも試算し、比較できるようになりました。しかし負担の関心の中心は消費税の増税であり、直接税や社会保険料についてはあまり注目されていないことも問題のひとつでしょう。
高齢化が急速に進み、社会保障費は年々増加していますが、財源は確保できておらず、子どもたちの世代に負担を先送りし続けているといえます。
■2:労働力人口への影響
少子化の経済的影響として、労働力人口の減少を通じて経済の活力に対するマイナスの影響や、消費や貯蓄に対する影響があげられます。
労働力が減少することで日本の経済活動も減少することになるでしょう。
経済成長率が減少すれば国際競争力も税収も下がることになり、そうなれば国民の生活を支える社会保障費が不足し、さまざまな問題が発生することになることが懸念されます。
生産年齢人口が減少していく中で、一定の経済成長を維持していくためには、技術や規制の見直し、若い年齢の労働能力の促進、中高年者の労働能力の検討など、労働の生産性を高めていく取り組みが必要といえます。
社会保障給付費に伴い、労働力人口一人あたりの社会保障負担も必然的に増加してしまうため、社会保障制度における給付と負担の平等さや、給付に対するさまざまな見直しが不可欠になっていくでしょう。
■3:国民負担への影響
国民への負担はさまざまな角度から影響があります。
高齢化が進むと労働力人口も減り、経済的に資金が足りなくなり、ひとりひとりの社会保障負担も上がります。そうなることでますます未婚化や晩婚化が進むため、少子化も同様に影響があるでしょう。
高齢者と現役世代の人口が1対1に近づいた社会は「肩車社会」といわれます。これにより社会保障に関する給付と負担の間のアンバランスは一段と強まるでしょう。
■4:市区町村自治体の行政機能への影響
市区町村自治体への影響は、まず労働力不足により企業活動が停滞するでしょう。地方企業は大多数が中小企業で、そこでは既に人手不足が起きており、今後も続く高齢化にともなう労働力不足が地域の企業活動を停滞させる可能性があるでしょう。
そして経営者の後継者不足も考えられます。地域経済を支える企業が消滅することで、地域経済が縮小するでしょう。
それにより働く場所や働き方の多様性が低下し、働き場所が少なくなった地方から、若者が今まで以上に東京圏に流出し、少子高齢化が加速することになるといえます。
■5:日本の総人口への影響
すべての要因が総人口への影響につながるでしょう。
たとえば、少子化は将来的に労働力が減少していることを意味していて、現在の現役世代と呼ばれる層の人々が高齢者層に移ることで、労働力の供給がより困難になっていくということです。
労働力の数が制約されると、貯蓄を取り崩すと考えられる退職者の割合が増加します。そして貯蓄率の低下につながって投資をする人が減少し、労働生産性の上昇を抑制する要因になる可能性があるでしょう。
少子高齢化が進むことで、ひとりの若者がひとりの高齢者を支えるために年金などの社会保障への負担が増大します。
もし現状のままだとすると、労働者の手取り所得は減少するという予測もあり、少子化を解消しなければ日本経済に今まで以上に大きな影響を与えることになるでしょう。
社会的な影響として、独身の人や子どものいない世帯が増えて、家族の形も多様化が考えられます。独身の高齢者の増加にもつながるため、介護や社会的扶養の必要性を高めその負担も懸念されます。さらに市町村によっては住民に対する基本的なサービスの提供が困難になるでしょう。
少子高齢化により、こういった影響の可能性があるでしょう。
少子高齢化の影響による日本の将来
社会保障給付費は、現役世代が納めている社会保険料と国などの負担から成り立っています。これまでは社会保障制度を支えてきた世代が受け取る側になり、さらに少子化もあり、納められる社会保険料は横ばいのままとなっています。
この増大する社会保障給付費を援助しているのは国や地方なので、その負担も増大しているということです。
さらに社会保障給付費の問題だけでなく、介護の現場での人手不足も懸念されています。高齢者1人に対し、それを支える現役世代の人数が少なければ、さまざまな場面で問題も増えていくことになるでしょう。
少子高齢化に伴う国の対策8つ
日本は1970年代から少子高齢化社会が続いていて、その中でも少子化は深刻な状況といえます。このままいけば将来的にいくつも起こる問題が、取り返しのつかない状態にまで陥る可能性もあるでしょう。
そうならないためにも日本政府は少子化対策に関する法律を定め、あらゆる取り組みを行っているといえます。
■1:仕事がしやすい雇用環境の整備
雇用情勢は改善しつつあるといえますが、労働力の需給関係は求人超過のアンバランス状態を続けています。そしてほぼすべての中小企業が人手不足感を強めているのが現状でしょう。
長時間労働の抑制や、有給休暇の取得の促進、女性が継続的に就業できるような対策、男性の育児・家事参画の促進などや、仕事と介護の両立の推進について、実際の状況を把握し分析した上で、仕事と生活の調和の実現に向けた取り組みをすることで整備しています。
さらに現在では場所や時間にとらわれない柔軟な働き方であるテレワークは、通勤することの負担の軽減だけではありません。
通勤の負担軽減だけでなく、育児や介護などのさまざまな事情を抱える人にとって仕事と生活のバランスの調和をとるためにとても条件のよい働き方として、社会的な期待や関心も大きくなっているといえます。
■2:家庭や地域社会における子育て支援の整備
日本は女性の高学歴化や、自己実現意欲の高まりから女性の職場進出が進んでいます。各年齢層において労働力率が上昇していて、これからも引き続き伸びる傾向といえます。
しかし一方で、子育て支援体制が十分でないことから子育てと仕事の両立の難しさにつながっていると考えられています。
そこで国は、育児休業制度や労働時間を短縮し、労働者が子育てしながら安心して働ける雇用環境を整備することを推進させています。
「子どもを持ちたい人が持てない状況」を汲み取り安心して子どもを生み育てることができるような環境を整えることが必要といえます。
このとこから、そういった子育ての環境を支えるため、国や地方公共団体、地域、企業、社会教育施設、医療機関、児童福祉施設などあらゆる面で協力していくシステムを構築することを重点的に整備しています。
■3:住宅及び生活環境の整備
子育てと仕事の両立、家族のだんらんのための時間が取れる住居や、都心居住を推進するとともに、住むこと、働くことなどさまざまな機能を持つニュータウンの建設を促進しています。
子どもの遊び場や安全な生活環境を整備し、公園や水辺などの身近な遊び場、家族が自然の中ですごせるオートキャンプ場、自転車道の整備を推進し安全面でも考慮しています。
■4:待機児童の解消・保育サービス等の充実
希望する人全員が入所できる保育所を用意し、さらに学童保育の充実や、管轄が異なる幼稚園と保育所の連携を行うことで育児ニーズに応える規制緩和を促進させています。
育児ニーズとは、現在多様化しており「預かり保育」への要望が増加したことから、教育活動として適切な活動となるようその充実を図られました。他にも延長保育や夜間保育、病児保育などについても推進を図っています。
■5:母子保健医療体制の充実
母子保健とは、次の世代を担う子どもたちが心身ともに健康に育つために、思春期をはじめ、妊娠や出産、子育て期において、そのつどふさわしいサービスが提供できるようなシステムのことをいいます。
不妊に悩む夫婦の心身のケアや、高額な費用の治療費の助成、他にも出産に関して母子ともに健康に過ごせるよう医療や保健、学校教育などと連携を図りながら母子保健医療福祉体制を充実させ産後ケアも行っています。
■6:教育に関連する経済的な負担の軽減
教育に関する経済的な負担の中には、塾や習いごとなどの、学校以外の教育費などが含まれています。その背景として「子どもの教育は学校だけでは間に合わない」という認識があるためといえます。
そのために、スポーツや野外活動、文化活動にもっと簡単に親しむことができるように選択肢を増やすことが大切になってくるでしょう。こういったものを学校外で利用しやすくするために体制を整えることで経済的な負担の軽減が図れるでしょう。
■7:学校教育の推進と家庭教育の充実
学校教育の推進については、豊かな人間性を育めるように課題を見つけ、自ら学び、考えることで主体的に判断できるようになったり、問題を解決する能力などの「生きる力」をはぐくむことができる教育が望ましいとされています。
基本的な生活習慣や生活力、豊かな情緒や思いやりの心、倫理観や社会的なマナー、自制心や自立心などの能力を培うことが家庭教育の重要な役割で、そういった環境を充実させることが大切といえるでしょう。
■8:働き方改革の推進
政府は「働き方改革」といった政策や方針を掲げてきました。しかし、働き方改革はなかなか進んでいない状態といえます。そこで実際に働き手を抱える企業にはさまざまな取り組みが求められています。
たとえば、雇用形態が正規、非正規であっても、仕事内容が同じであれば同じくらいの賃金を支払うことが推進されていたり、残業時間を減らすことや、産休制度を取り入れ子育ての期間中も雇用状態であることなど、取り組みはさまざまです。
今後期待できる少子高齢化への対策方法3つ
少子高齢化に対して今までさまざまな角度から対策がなされてきました。成功したものや、逆にあまり効果が見られないで失敗してしまったものなどもあります。
ここからは、今後期待できる少子高齢化問題に対しての効果的な対策を3つ見ていきましょう。
■1:定年退職年齢を引き上げ労働人口を増やす
定年退職年齢は今まで60歳でしたが、希望すれば65歳まで働けるようになりました。
定年退職が今までより5年も延長になることから、企業側は賃金や労働時間の見直し、モチベーションを維持させるための環境を整備し高齢社員の健康を見守りつつ、本人の意識の向上に取り組むことが大切になってくるといえるでしょう。
■2:人手不足に対し業務の自動化を推進する
生産年齢人口が減少することで見えてくる問題は、人手不足です。
このまま生産年齢人口が減少していけばまず大企業が常態化するでしょう。そうなることでしわよせが中小企業に及び、今まで以上に厳しい状態になることが懸念されます。
大手企業も中小企業も人手不足が常態化していくことになりますが、そのなかで企業が成長を持続させるには今以上に生産性を上げる必要があります。
そのためには、今まで手作業で行ってきたものをRPA(ロボティックプロセスオートメーション)やCRM(顧客管理システム)、SFA(営業支援ツール)といったツールを導入し自動化することで効率をあげることが必要になっていくでしょう。
■3:優秀な外国人労働者雇用を推進する
人手不足解消の鍵となってくるのが外国人労働者の存在でしょう。
日本に在留している外国人にとって、在留資格取得はある程度の業務を既に行える能力と、業務を日本語でやり取りできる日本語力が必要になります。
そのため雇用する企業にとって、ある程度の日本語能力を持っており、特定技能の資格取得試験に合格した外国人労働者の雇用が可能になります。優秀でグローバルな人材を雇用することで、企業の活性化を図ることができるでしょう。
また、そういった社会を形成していくために、多様なバックボーンをもった人たちと共生していく文化の醸成も大切になってきます。
将来を左右する少子高齢化の現状や課題を理解しよう
経済は労働力人口に左右されますが、現状の流れが継続していくと、人口の急減や今まで以上の高齢化社会は止めることができないでしょう。そして必然的に労働力人口は減少していきます。
そして医療や介護費を中心に、社会保障に関する給付と負担のアンバランスは一層強くなるでしょう
こういった現状に対しての課題は、子育て支援の施策を今まで以上充実させ、若い年齢での結婚、出産の希望を実現させること、多子世帯への配慮や、働き方改革などです。
[参照元]
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『第1節 高齢化・人口減少の意味』 (内閣府)
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https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/16/dl/all.pdf『1 高齢化の現状と将来像』(内閣府)
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https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s3_1_2.html第2章 家計の所得向上と少子化傾向の反転に向けた課題 第2節(内閣府)
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/h02-02.html第2節 多様なライフスタイルに対応した子育てや介護の支援(内閣府男女共同参画局)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h26/zentai/html/honpen/b2_s06_02.html『(3)人口急減・超高齢化の問題点』(内閣府)
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