森林破壊の原因と影響とは?私たちにできることや世界の取り組みも紹介
この記事では、森林破壊の原因・現状と日本や世界各国が行っている取り組み、また個人でできることについて紹介しています。SDGs目標15「陸の豊かさを守ろう」と関わりの深い森林破壊・保全活動について知り、これからの地球の未来について考えましょう。
森林破壊とは
森林破壊は、自然に原状復帰するスピードを上回る森林伐採・焼失などが原因で、世界の森林面積が減ってきていることを指します。
森林破壊の地域における進行状況は差がありますが、特に森林破壊が深刻になっているのがマレーシア、インドネシアをはじめとした東南アジア・世界最大の熱帯雨林であるアマゾンのある南米です。
森林破壊の主な5つの原因
森林破壊には「森林火災の増加、森林の転用や開発、持続可能でない焼畑農業の増加、燃料や材料としての伐採、違法な伐採」の5つの原因があります。ここでは具体的に、どのような状況が森林破壊を引き起こしているのかを解説します。
■1:森林火災の増加
森林火災は山や森林などで火災が起きて、広範囲にわたり発生するものをいいます。この森林火災の増加が、森林破壊の原因といわれています。
自然発火による森林火災は、乾燥が大きな原因と考えられています。森林などの乾燥により、落ち葉や枯れ草などの水分が失われるのです。風で枯れ葉同士が摩擦しあうことで発火、他の乾燥した枯れ葉・枯れ草へと燃え移ることにより、火災が広がります。
火災により木々の中に蓄えられていた二酸化炭素が大気中に放出されると、地球温暖化が助長されて、その結果森林火災が長期化、増加するといったことにつながるのです。
■2:森林の転用や開発
森林が農地や放牧地、レジャー施設などに転用されている事例が、森林破壊につながるといわれています。
その中でも、気候に恵まれているとする熱帯地域や亜熱帯地域において、森林という広大な土地を買い取り、大規模農園などのプランテーションに使用するということが問題視されているのです。
生産性の高い環境と、それらの地域の「安価な労働力」に目を付けた企業が、巨額の資金を投入し、大規模農園を開発したうえで安価な労働力を雇い、そこから利益を得るといった構図がうまれます。
■3:持続可能でない焼畑農業の増加
焼畑農業とは、森林を燃やし、そこから出た灰を肥料とする農業形態のことをいいます。焼畑農業のメリットは肥料が不要であるということですが、デメリットのひとつとして砂漠化があげられます。
焼畑農業することにより植物の根が枯れ、水分を蓄えられなくなってしまいます。その後雨水が土を流してしまう「水食」という現象が発生し、砂漠化を助長してしまうのです。
一度砂漠化してしまった土地は、なかなか元の状態を取り戻せません。このように、焼畑農業することが結果的に森林破壊へとつながっています。
■4:燃料や材料としての伐採
世界で伐採された木材の約半数が、燃料として使用されているという実態があるのです。また、燃料として使用される木材の需要は増加傾向にあり、そのことが森林破壊の一因といわれています。
開発途上国においては、薪や炭に使う材木の需要や消費が多いのが現状です。これは一部のライフライン等が整備されていない地域において、生活の中で薪や炭を使用しているということがあるからです。
■5:違法な伐採
国の法令に反する、違法な伐採により森林破壊が進んでいます。森林から一般消費者のもとに届くまでに法令に違反する行為があれば、違法伐採とされます。
国際森林研究機関連合(IUFRO)によれば、「丸太と製材に関しての違法伐採木材の貿易額」が世界で63億ドルとされています。
違法伐採することで、材木生産地の環境・森林と共存、または依存している周辺住民の生活を脅かすことだけではありません。生産コストをかけずに生産された「違法伐採材木」が、安価で市場に流通することにより、木材全体の市場価格を押し下げていることになります。
このため、持続可能な森林サイクルが構築されなくなってしまうのです。
出典:【森林対策】-森林減少・劣化と違法伐採|環境省 自然環境局
https://www.env.go.jp/nature/shinrin/index_1_3.html
日本の森林に起こっていること
日本にある森林のうち、約4割に相当するのが「人工林」になります。これらの人工林は、戦時中に荒れた森林の復旧のための造林、戦後復興・高度経済成長期を支えるための木材を供給するために林が拡大されていきました。
また植えれば終わりではなく、その後の手入れなど、多くの人手と時間をかけて森林がつくられてきたのです。ただ最近では、人手不足等により人工林の手入れが行き届かず、人工林の荒廃が問題となっています。
世界の森林に起こっていること
国連食糧農業機関(FAO)による、2010年~2015年までの間に森林が大きく減少した国別データを紹介します。ブラジル、インドネシア、ミャンマーなどとなっています。
一方で森林面積が増加した国は、温帯地域の中国やフィリピン、インドなどとなります。これは、国をあげて活発な植林活動を行っているといったことが理由としてあげられます。
森林破壊が人間社会にもたらす4つの影響
森林破壊が人間社会にもたらす4つの影響として、食料不足の誘発・森林をめぐる争いの勃発・失業者の増加・疫病の流行が考えられます。
ここでは具体的に、どのようなことが人間社会に影響をもたらしているのかを解説します。
■1:食料不足の誘発
まずは森林破壊で木の実や山菜、キノコなどの食料が採れなくなります。つぎに直接関係ないと思われがちですが、森林から雨水・河川を通じて海に流れ込む「森林の養分を含んだ水」が減ることにより、魚介類の生育にも影響をもたらします。
また、生活の中で薪を調理の際の燃料として使用している方々にとって、死活問題となります。このように、森林破壊が食料不足を引き起こすのです。
■2:森林をめぐる争いの勃発
オセアニアや東南アジアなどの豊かな森林を持つ地域では、森林をめぐっての紛争が多く起きている現状があります。
資源の乏しいオセアニア地域において森林は重要な資源であるため、他の国々の企業や住民における商業伐採を目的とした利権争いがあったり、森林の所有権をめぐって住民同士の争いがあったりしているのです。
■3:失業者の増加
森林運営などにより生計を立てている人々が、失業することになります。たとえば、山菜やキノコなどを育成・販売している、材木を切り出し出荷する、木炭や漆づくりなどに関わっている人々が、森林破壊により職を奪われることになってしまうのです。
■4:疫病の流行
森林破壊により、疫病が流行する恐れがあります。東南アジア熱帯・アマゾン流域において、木材の伐採によりボウフラの育つ水たまりが増え、水の酸性度が下がったことで蚊が増加し、結果的にマラリアの流行を推し進めることになったのです。
また通常森林地域に生息するコウモリが、森林破壊により牧草地・牧場などに飛来し、コウモリの病原体が家畜動物を介して人間に感染するといった可能性もあります。
森林破壊が地球環境にもたらす3つの影響
森林破壊が地球環境にもたらす影響として、地球温暖化の加速や気候の変動、大気汚染、生態系の破壊といった3つがあげられます。ここではその影響について詳しく解説していきます。
■1:地球温暖化の加速や気候の変動
森林伐採により、樹木が貯蔵する二酸化炭素が大気中に放出されます。地球温暖化の原因とされる温室効果ガスはオゾン・二酸化炭素・メタンなどが該当するため、森林伐採は温室効果ガスの排出量に大きく関わってくるのです。
また、温室効果ガス増加の影響は地球温暖化だけにとどまらず、ハリケーン等の異常気象をはじめとする「気候変動」をもたらす可能性もあります。
このように、森林破壊により地球温暖化の加速や気候変動を引き起こすこととなるのです。
■2:大気汚染
森林の持つ機能として、有毒な汚染ガスを吸収し無害化することと、ほこりなどを葉が吸着し大気を浄化するというものがあります。
オキシダントという光化学スモッグの原因となる物質においては、葉の表面に触れることで分解が進みます。そのため、汚れた葉においても大気浄化の機能は低下しないのです。
また道路の交差点など大気汚染が生じる区域において、汚染対策として植物が持つ大気浄化作用の利用が有効とされている事実もあります。
大気浄化作用を持つ植物・森林が過度な伐採により減少することで、大気汚染を助長することにつながっているのです。
■3:生態系の破壊
国立環境研究所によると、地球の生物の5~9割が森林に生息しているといわれています。このため、森林伐採が進むことにより生物が減少し、結果的に生態系の破壊につながってしまうのです。
ひとつの森林が破壊され消失するといったことは、その周辺地域の生態系を壊すだけにとどまりません。河川を通じて養分を持った水が海に流れ込む割合が減少するため、海洋の生態系にも影響を及ぼすことになります。
森林破壊を防ぐため各自ができる取り組み
森林破壊を防ぐため、個人でできる取り組みを紹介します。
まずはできる限り紙の使用を控えることです。むやみに印刷するものを増やすのではなく、電子媒体で閲覧できるものは代用し、広告の裏紙を活用するなどの工夫をしてみましょう。また、環境やSDGsに配慮した紙製品を選ぶといったこともおすすめです。
森林破壊を防ぐために行われている対策
日本や世界各国で行われている、森林破壊を防ぐために行われている対策を紹介します。
森林破壊の問題は単に一区域の問題だけでなく、周辺の生態系を破壊したり大気汚染につながるなど、地球環境の破壊につながる問題です。森林破壊への理解を深めましょう。
■1:日本による取り組み
日本での取り組みとして、環境省による森林保全対策事業について紹介します。
世界における森林保全活動の推進を目的とし、「フォレストパートナーシップ・プラットフォーム」を運営しています。これは、企業とNGO・NPO等の協働による世界の森林保全活動の情報サイトになります。
また世界で森林減少が進んでいる熱帯地域において、「森林保全活動に取り組みたい日本の民間企業」と「東南アジアの国々で持続可能な森林経営に取り組む現地団体」との連携を進めるスタディ・ツアーを開催し、開催後には国内で報告会も実施しています。
さらに、違法伐採問題や森林認証制度についてひろく知ってもらうため、ちらしやポスター、パンフレットなどによる啓蒙活動も実施しています。
■2:世界による主な3つの取り組み
世界による、森林破壊をこれ以上増やさないための主な3つの取り組みについてお伝えします。ここでは、違法伐採の取り締まり、目的を持った森林の指定、各国の活動について具体的な内容を紹介します。
違法伐採の取り締まり
外務省によると、世界規模の取り組みとして以下のことがあげられます。
まずは日本とインドネシア間の違法伐採対策に関する二国間協力です。つぎに、2002年のヨハネスブルグ・サミットに発足した、アジア森林パートナーシップ(AFP)です。これは違法伐採に対処することについて焦点をあてた活動になります。
さらに、国際熱帯木材機関(ITTO:本部は横浜)を通じた多国間協力、政府調達の対象を、合法性が証明された木材・木材製品とするという「グリーン購入法」のもとの措置を導入しています。(2006年4月)
またこれまでに2回の違法伐採国際専門会会議を主催し、違法伐採問題に関して国際的な議論を推進できる取り組みもなされています。
目的を持った森林の指定
生物多様性や水土保全、社会サービスのための森林指定といった取り組みです。
生物多様性においては、生物多様性の保全に配慮した森林施業の3つの柱があり、1つ目は多種多様な樹木が維持されていること、2つめは複層構造ができていること(木々の高さが異なる種類の樹木がある)、3つめは生物が生育・生息しやすい環境が適切に形成されていることです。
また水土保全においては、水土保全機能を持った森林と指定することにより、森林破壊を減らすといった取り組みです。さらに森林という空間を健康や観光、教育などの多様な分野で活用しようという、社会サービスのための森林指定というのがあります。
このように、目的を持った森林を指定することにより、森林破壊を食い止めることにつながるのです。
各国の活動
各国の活動を紹介します。アメリカでは、2008年にレイシー法に植物が追加され、違法木材の規制が強化されました。この法律は、従来動物などの規制に使われてきたものになります。
アマゾンを有しているブラジルでは、森林保護のための法律が次々に施行されています。そのうち2006年に施行された公共林管理法では、公共地を管理するための枠組み制定となっています。衛星を使用した監視システムの開発、土地所有権の明確化もすすんでいます。
またヨーロッパにおいて、EU木材規制の貿易措置が2013年に執行されました。これにより、EU市場における違法木材の持ち込みが制限されています。
森林破壊について理解を深めよう
この記事では、森林破壊とは何か、森林破壊の主な原因について、日本や世界での現状と対策、また森林破壊が地球環境にもたらす影響について、個人ができる取り組みなどについて紹介しました。
森林破壊について理解を深め、個人ができる取り組みをしながら地球環境保全に努めましょう。
【この記事に関連する目標】
※他の目標とも関連していますが代表的なものをあげています。
SDGsとは2015年に国連にて採択された、持続可能な開発・社会を目指すための世界共通の目標になります。
目標のうち森林保全と関わりが深いのが、目標15の「陸の豊かさも守ろう」になります。森林破壊により山林で生計を立てている方々の雇用機会喪失だけでなく、生物多様性のバランスまで崩れてしまうことになるからです。
他の目標とも関連していますが、代表的なものをあげています。
[参照元]
※参照元サイトのURL変更や掲載期間終了により、ページが閲覧できない可能性があります。ご了承ください。
『【森林対策】-環境省の取組・森林保全対策事業の実施』(環境省自然環境局)
https://www.env.go.jp/nature/shinrin/index_2.html『【森林対策】-世界の森林の現状』(環境省自然環境局)
https://www.env.go.jp/nature/shinrin/index_1_1.html『【森林対策】-森林減少・劣化と違法伐採』(環境省自然環境局)
https://www.env.go.jp/nature/shinrin/index_1_3.html森林・林業・木材産業の現状と課題(林野庁)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/genjo_kadai/生物多様性の保全に配慮した森林施業(林野庁)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/sizen_kankyo/tebiki.html『国連における森林問題への取組』(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/bunya/shinrin_un.html