水不足の原因や現状は?解消に向けた取り組みや私たちにできる活動もご紹介
日本では欲しいときに欲しいぶんだけ管理された安全な水を得ることができます。しかし、世界では安全な水を得られず、飲んだ水で命を落とす子どももいます。水不足の現状や水の大切さを子どもと一緒に考え、私たちができることを実践していきましょう。
世界の水ストレスの現状とは
日本では水道の蛇口をひねればきれいな水が出て、それを飲むことができますが、世界のすべての国がそうではありません。
水の供給が十分でない状態を「水ストレス」と言います。
この水ストレスの程度を表す指標は、「人口一人当たりの最大利用可能水資源量」が用いられ、これが1,700m³を下回る場合は「水ストレス下にある」状態、1,000m³ を下回る場合は「水不足」状態、500m³ を下回る場合は「絶対的な水不足」状態であることを表します。
国土交通省が示す「水資源問題の原因」によると、2013年の時点で絶対的な水不足や水不足の状態である国がアフリカや中東に集中しています。そして、2050年には世界人口の40%以上である約39億人が深刻な水不足におちいる可能性があります。
出典:水資源|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000021.html
水不足が起こる原因4つ
世界では、水資源がかたよって存在しており、飲用や生活、産業のための水さえ手に入れにくい国や地域があります。このように一部の国や地域において、水ストレスや水不足の状態が深刻化するのは、次の4つの原因が考えられます。4つの原因の内容を一つずつ確認していきましょう。
■世界人口の増加
世界の人口は現在(2019年)およそ77億人です。そして、これが2030年には85億人、2050年には97億人へと増え続けることが予測されています。しかし、人口の増加率は国や地域によって大きな差があり、急激な増加を続ける地域もあれば、人口が減少している国もあります。
問題になるのは、現在水ストレスや水不足状態で苦しんでいる国の人口が急激に増加することです。一人当たりが利用できる水資源量がさらに減ってしまい、いっそう水不足が進んでしまうためです。
■気候変動問題
ここ数十年間、世界中で気候変動が自然や人間に影響を与えていると考えられています。そして、人間が利用できる水資源の量は、降水量によって左右されます。
そのため、大雨や干ばつ、洪水などを引き起こしているとされる気候変動が、一人当たりの水の利用可能水資源量に大きく影響します。
そして、今後も海面水位の上昇や降水量の変化、雪氷や氷河の融解など、気候変動がもたらすさまざまな現象によって、水資源が減少するのではと懸念されています。
■水需要の増加
国土交通省がまとめた「水資源問題の原因」によると、世界の水の使用量は1950年から1995年の45年間で、約2.7倍となっており、特に生活用水は約6.8倍に急増しました。
さらに、2000年から2050年の間に、水の需要は約1.6倍増加すると予測されています。その詳細は、工業用水、発電用水、生活用水の増加です。このように、世界の人口増加や産業の発達とともに、水の需要も増加していくと見込まれているのです。
出典:水資源|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000021.html
■水紛争問題
水資源はときに紛争を引き起こすことがあります。水の所有権やその配分、水質汚濁などが要因となり、世界各国で「水紛争」が勃発しています。
水紛争は、隣接する国や地域が敵対することだけが問題ではありません。この争いによって、井戸や浄水場などの水源が狙われて給水が断たれることもあり、それがさらなる水不足を引き起こすことも大きな損失となります。
世界で起きている水資源問題
日本では、管理された安全な水を手に入れることは簡単なため、改めて水を手に入れる苦労やその手段について考える機会は少ないでしょう。
一方で、世界には、人が生きていくうえで必要な飲み水さえ満足に手に入れることができずに、処理されていない水を遠くまで汲みに行く人たちも存在します。このように、国や地域によって大きな格差が生じています。
次では、世界中で起きている水資源の問題に目を向けていきましょう。
■安全な飲み水を得られない
ユニセフの活動報告によると、世界では約22億人が安全な飲み水を使用できず、約1.4億人が川や池、湖などの地表水を利用しています(2017年時点)。また、水資源の問題は、水の安全性だけでなく、必要なときに必要な量の水を手に入れられないことも課題です。
水を得るために30分以上かけなければいけない「限定的な飲み水」や、汚染物から保護されていない「改善されていない水」を利用している人は、世界で約7.8億人います。
出典:ユニセフの主な活動分野|水と衛生|公益財団法人日本ユニセフ協会
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_act01_03_water.html
■汚れた水が原因で命を落とす子どもがいる
管理された安全な水を容易に得られるかどうかは、子どもの寿命や生育状況に大きく影響します。汚染された水や不衛生な環境は、幼い子どもの下痢を引き起こし、それが死に直結することもあるからです。
汚れた水を飲んだ子どもたちが下痢による脱水症状を繰り返すと、慢性的な栄養失調におちいります。そうして発育が阻まれたり、命を落としてしまったりして、多くの子どもの未来が閉ざされています。
出典:経口補水塩が効いた|©公益財団法人日本ユニセフ協会
https://www.unicef.or.jp/special/0706/repo01.html
水不足解消に向けた世界の取り組み
ときに子どもの未来を閉ざしてしまう水不足を解消するために、世界中でさまざまな取り組みがなされています。
その取り組みの根拠となるのが、「ミレニアム開発目標(MDGs)」および「持続可能な開発目標(SDGs)」です。これらには、長期的な目標とそれを達成するための短期的かつ具体的な目標が示されています。
この目標を達成するために、世界各国が具体的な対策を練り、実行にうつしていきます。
■ミレニアム開発目標(MDGs)
ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)は、2001年に国連事務総長報告として示されました。MDGsは、8つのゴール(長期的目標)と21のターゲット(短期的目標)、60の指標が定められ、達成期限である2015年までに一定の成果をあげました。
では、「環境の持続可能性確保」のゴールにおいて、「安全な飲料水および基礎的な衛生施設を利用できない人々の割合を半減する」ことを水資源に関するターゲットとしています。
さらに、水不足の解消は、「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「乳幼児死亡率の削減」などのゴールの達成にもつながっています。
出典:ミレニアム開発目標(MDGs)|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000022.html
■持続可能な開発目標(SDGs)
2015年に役目を終えたMDGsの跡を継ぎ、持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)が示されました。
SDGsには17のゴールと169のターゲットが定められ、水資源に関しては「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」というゴールが設定されています。
SDGsは2030年が達成期限となっており、達成できれば世界中すべての人々が安全で安価な飲料水を手に入れられることになります。
出典:持続可能な開発目標(SDGs)|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000022.html
水資源問題に対して私たちができること4つ
日本に暮らす私たちは、一人につき1日約300リットルの水を使用しています。つまり、水不足に苦しんでいる国がある一方、日本では2リットルのペットボトル150本分に相当する水を使う生活をしています。
そんな私たちが、世界中で起こっている水資源の問題に対して、今日からでもできることをみんなで考えていきましょう。
■節水を心がける
まずは、節水を心がける生活をしていくことが大切です。
たとえば、洗濯はまとめて行って回数を減らす、風呂の残り湯を使って洗濯をする、シャワーの水を流したまま洗髪しない、浴槽の湯量を減らす、食材を洗う際や歯磨きの際は水を流しっぱなしにしない、水洗トイレで大小レバーを使い分ける、などが節水につながります。
■汚い水を捨てない
環境に負荷をかけると自然破壊が進み、自然環境による水の浄化が困難になります。それを防ぐために、私たちはなるべく環境負荷の一つである川を汚さない努力をしていく必要があります。
川を汚す要因に、家庭から出る生活排水があります。食器などは新聞や不要な布などで汚れを拭ってから洗う、洗剤は分解能力の高いものを選ぶ、シャンプーは使いすぎない、などの取り組みは家庭でもできる汚染対策です。
■水の大切さを学ぶ
私たちができる取り組みとして、水の大切さを学ぶことも忘れてはいけません。たとえば、環境省が世界の水資源問題と私たちの生活とのつながりについて理解を広めるための啓発活動を行っているため、それを活用するのもよいでしょう。
人が生きていくために欠かせない水資源や水質汚濁の問題が、私たちの生活とつながっていることを学び、水を守るための行動へうつすことが重要です。
■キャンペーンなどに参加する
毎年8月1日は「水の日」、この日から1週間は「水の週間」と制定されています。その期間には、水の大切さについて関心を高めるために、ポスターによる啓発活動や講演会が関係省庁や地方公共団体などによって実施されています。
このようなキャンペーンの中には、子どもが興味をそそられるような国民的人気のキャラクターを採用したイベントなどもあります。
親子でキャンペーンに参加することによって、楽しみながらや水資源の有限性や水資源開発の重要性、水循環の仕組みなどの理解を深めることができます。
出典:「水の日」・「水の週間」|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/tochimizushigen_mizsei_tk1_000012.html
世界の水不足の現状や課題について親子で考えてみよう
水不足の問題は、決して遠い国のできごとではありません。私たちの日々の取り組みが将来的に世界の水不足解消につながる可能性もあります。
まずは、世界の現状や課題などを学びましょう。そして、世界で水資源問題に対して行われている取り組みについて関心を持ち、私たちが今できることを一つ一つ実践してみましょう。
【この記事に関連する目標】
※他の目標とも関連していますが代表的なものをあげています。
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SDGs 目標6
安全な水とトイレを世界中にSDGs 目標6
安全な水とトイレを世界中に - すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
[参照元]
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『ユニセフの主な活動分野|水と衛生』(公益財団法人日本ユニセフ協会)
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_act01_03_water.html『ミレニアム開発目標(MDGs)』(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html『持続可能な開発目標(SDGs)とは』(国連広報センター)
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/『水資源問題に対する取り組み』(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000022.html『家庭でできる節水の方法』(独立行政法人水資源機構)
https://www.water.go.jp/honsya/honsya/suigen/sessui/sessui.html『家庭でできる生活排水対策』(埼玉県庁)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0505/seikatuhaisuitaisaku.html『「実は身近な世界の水問題」の公開について〜「バーチャルウォーター」を利用して日本と外国のつながりを知ろう〜』(環境省)
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=9774『「水の日」及び「水の週間」』(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/tochimizushigen_mizsei_tk1_000012.html
海の豊かさを



