バイオマスを利用した
発電とは?
発電の仕組みや
3つの種類を紹介
バイオマス発電はクリーンなエネルギーと言われています。ほかのエネルギーとの違いが気になる方も多いのではないでしょうか。この記事ではバイオマス発電の概要と種類について紹介します。バイオマス発電について知りたい方は、ぜひ読んでみてください。
バイオマスとは?
最近はレジ袋などでも「バイオマス」という表記を見る機会が増えてきました。バイオマスとは何かご存じでしょうか。バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念です。
元は「生物資源量」という意味の生態学の用語ですが、広く「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」として扱われています。
地球温暖化の原因として、化石資源を燃やす際に発生する二酸化炭素が挙げられますが、二酸化炭素は温室効果ガスと呼ばれ、太陽からの熱エネルギーを地球に蓄えてしまいます。
バイオマスも燃焼の際には二酸化炭素が発生しますが、それは植物が大気中の二酸化炭素から光合成で吸収したものをもとに戻すだけです。そのため、温室効果ガスを増やさない「カーボンニュートラル」な資源として注目されています。
■バイオマス発電とは?
バイオマス発電とは、バイオマスやその生成物を燃料として用いた発電方式のことです。日本では電気、熱といったエネルギー転換部門で約4割の二酸化炭素を排出しており、発電部門へのバイオマスの導入拡大は温室効果ガスの削減に効果があると考えられます。
バイオマス発電の
仕組みとは?
バイオマス発電の仕組みは、一般的な「火力発電」と同様です。バイオマスをそのまま、または可燃性ガスに改質し、それを燃料として蒸気タービンやガスエンジンによって発電します。
しかし、地域によってバイオマス資源の状況は異なるため、各地域に適したシステムを構築する必要があるでしょう。
バイオマス発電の
メリットとデメリット
どんな発電方式にもメリット、デメリットがあります。温室効果ガスを出さない発電方法として注目されている太陽光発電、水素燃料電池と比較し、バイオマス発電のメリットとデメリットを解説します。
■メリット
バイオマス発電は原理として火力発電と同等ですので、原料さえあれば安定して電力を供給でき、ベース電源として活用できます。また、設備を設置すれば従来の農業、製造業のインフラを活用して運用していくことが可能です。
太陽光発電は日照に影響され発電量が安定しないことが欠点です。水素燃料電池は、水素の輸送や貯蔵に特殊な容器や装置が必要になり、インフラ構築が十分でないことが欠点と言えます。比較すると、単純な優劣はなくバイオマス発電にもメリットがあるとわかります。
■デメリット
太陽光発電は小型のパネルと変換装置があれば発電できるため、住宅の屋上など小さなスペースにも容易に設置できます。一方、バイオマス発電は燃料の確保、焼却炉や発酵装置の設置など、運用にハードルがあるため一定規模の事業者でないと運営が困難です。
また、バイオマスは特性上、生物に由来するため品質や供給が安定しない可能性があります。たとえば、家畜の糞尿と間伐材はいずれもバイオマスですが、燃料として使うための処理方法、燃料としての効率は同じではありません。
つまり、水素エネルギーやガソリンのような社会全体で統一されたインフラでの運用は難しくなります。このため、個人レベルの小規模な運用も、インフラとしての大規模な運用も難しいことがデメリットと考えられます。
バイオマス発電の
種類3つ
バイオマス発電にも種類があり、主に可燃性ガスを取り出して活用する方法2種類と、バイオマスそのものを直接燃焼させる方法があります。ここでは、3種類の違いについて詳しく説明します。
■1:熱分解ガス化方式
熱分解ガス化方式とは、バイオマス資源を熱処理して、発生した可燃性ガスを使用しエンジンを駆動して発電するものです。
中学校の理科で木を蒸し焼きにする実験がありますが、そこで発生する「木ガス」には一酸化炭素、メタン、水素などの可燃性ガスが含まれ燃料として使用可能です。
熱分解ガス化方式も同じ原理でガスを取り出します。きれいな燃料ガスを得るためには、比較的乾いた良質な原料を必要とします。
■2:生物化学的ガス化方式
生物化学的ガス化方式とは、バイオマス資源から微生物発酵によって可燃性ガスを取り出し、発電に利用するものです。
微生物の中には、有機物を分解し、水素やメタン、アルコールを発生するものがあります。原料としては、家畜の糞尿や食品残渣など、水分の多いものが用いられます。熱分解ガス化方式や直接燃焼方式では、水分が含まれると加熱時のロスとなるため効率が低下します。
そのため、水分の多いバイオマス資源に対してはこの生物化学的ガス化方式が有効です。
■3:直接燃焼方式
直接燃焼方式とは、バイオマスをそのまま燃やし、エネルギーを取り出す方式です。薪ストーブのように木くずなどのバイオマスを直接焼却炉に投入し、その熱で蒸気を発生させてタービンを回し発電します。
通常の火力発電やごみ処理プラントと同様にシンプルな設備となること、原料を選ばず処理できることが特徴です。
バイオマス発電を
利用している事例
家畜の糞尿や林業での間伐材など、農林水産業での廃棄物を有効活用する方法として利用が検討されています。
例えば、愛知県豊橋市の「バイオマス利活用センター」では、下水汚泥や生ゴミ等の地域で発生するバイオマスをメタンガス化させ、火力発電しています。さらに、メタン発酵後の残さも固形燃料として直接燃焼で利用しています。
バイオマス発電の
課題とは?
バイオマスは資源が薄く広く分布しており、収集運搬コストが高いこと、将来的に利用が拡大すると食料供給や既存の用途と競合する可能性があることの2つが課題とされています。
そのため、これまで説明したように「用途のない廃棄物」を「発生した場所、地域」で有効活用する取り組みが広く行われています。
バイオマス発電と
「FIT制度」の関係
FIT制度とは、正式には「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」というもので、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。
再生可能エネルギーは発展段階のためコストがかかりがちです。その普及を後押しするために、買取価格を高めに設定し、そのコストを電力利用者で広く負担するという形がとられています。
FIT制度の対象は「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つで、バイオマス発電も含まれています。
■さまざまな省庁が連携した取り組み
FIT制度は経済産業省の資源エネルギー庁が主管となっていますが、バイオマス発電にはさまざまな省庁が関わっています。木質バイオマスや家畜糞尿、食品残さなどは「農林水産省」、廃棄物系バイオマスについては「環境省」が管轄しています。
このように、バイオマス発電は第一次産業から第二次産業の広い領域に関連しているのが特徴です。
バイオマス発電
について理解しよう
バイオマス発電について簡単に説明してきました。太陽光発電のようにメジャーで個人宅でも導入している技術と比べるとやや分かりにくく、注目されにくい方式ですが、薪ストーブのように太古から活用されてきた、自然に寄り添うシンプルなエネルギー活用方法と言えます。
第一次産業である農林水産業の副収入にもなり、廃棄物減にもつながるため、さまざまな意味で地球に優しい発電方式です。
SDGs17の目標にも挙げられる地球環境の課題を解決に繋がるよう、身近な自治体・企業で取り組みが着々と進められていますので、調べてより知識や経験を身につけていくと良いでしょう。
[参照元]
※参照元サイトのURL変更や掲載期間終了により、ページが閲覧できない可能性があります。ご了承ください。
『バイオマスとは?』(農林水産省九州農政局)
https://www.maff.go.jp/kyusyu/kikaku/baiomasu/teigitou.html『バイオマス発電-環境技術解説』(国立環境研究所)
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=2『2017年度(平成29年度)温室効果ガス排出量』(環境省)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/results/『バイオマスをめぐる現状と課題』(農林水産省)
『再生可能エネルギーとは』(経済産業省)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/biomass/index.html『我が国におけるバイオマスの熱分解ガス化発電の現状と導入の実際』(社団法人 生産技術振興協会)
http://seisan.server-shared.com/63S/63S-54.pdf『ガス化システム概要』(日本木質バイオマスエネルギー協会)
https://www.jwba.or.jp/small-woody-biomass-generation-guidebook/08/『新しい木材ガス化CHPユニットの特徴』(日本木質バイオマスエネルギー協会)
https://www.jwba.or.jp/report/chp-feature/『固定価格買取制度』(経済産業省)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html『バイオマスの活用の推進』(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/『廃棄物系バイオマス利活用』(環境省)
http://www.env.go.jp/recycle/waste/biomass/『都道府県バイオマス活用推進計画の策定状況』(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/local/keikaku_sakutei.html『SDGs SDGs17の目標』(公益財団法人日本ユニセフ協会)
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/