池田 正一 先生

総合監修:池田 正一 先生

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歯について

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好き嫌いの原因もむし歯にあり!?改めて考えたい乳歯の大切さ

むし歯でかめなくなると永久歯にも影響が…

「かめない」から「嫌い」  乳歯がむし歯になると、食べ物がじょうずにかめなくなります。例えば冷たい生野菜がしみたり、かたい肉類などがむし歯の穴や歯と歯の間にくいこんだりすると、その違和感から「食べにくいもの」「嫌い」と感じて偏食になってしまうことがあるのです。 すると栄養摂取の面からもよくありませんし、あごの中、乳歯の下で日々成長している永久歯にも影響が出ます。よくかんであごを鍛えれば、それだけ丈夫な歯が育ちますし、歯の土台をつくるにはたんぱく質が必要です。つまり、むし歯でかめなかったり、バランスよく食べられなかったりすると、あごも永久歯もしっかり育たないのです。

 また、むし歯は歯がミュータンス菌に感染しておこる感染症です。乳歯にたくさんのむし歯がある状態で、いくらきれいな永久歯が生えてきたとしても、それは風邪に感染した人でいっぱいの部屋に健康な人が入るようなもの。すぐにミュータンス菌に冒されてしまいます。さらに万が一、ひどいむし歯で乳歯を抜かなければならなくなると、永久歯の歯並びにも影響が出ます。歯を守ることと同じように、むし歯の早期発見と早期治療も重要です。

早期発見で歯を削らずに治せる

かかりつけの歯科医を見つけよう!  小さな子どもはなかなか「痛い」とは言いません。でも、前述のように、激しい痛みでなくてもさまざまな影響があります。早期発見のために、かかりつけの歯科医をもち、3〜6カ月に一度は健診を受けましょう。むし歯ができても6カ月以内であればむし歯を削らずに健康な状態に戻すこと(再石灰化※)が期待できます。

 かかりつけの医師をもつことは、食生活や、歯磨きの注意点など個人に合った指導をしてもらううえでも大変効果的です。むし歯の「なりやすさ」は、生活習慣や歯の質、唾液(だえき)の量など多くの要素が関係しているため個人差が大きいもの。リスクを減らすための対策も、それぞれに違います。おうちのかたも子どもの歯の性質などを知り、トータルで相談できる歯科医師を見つけるようにしましょう。

※再石灰化=ミュータンス菌によって歯のカルシウムやリンが溶け出してむし歯になった歯が、唾液などの働きで再びカルシウムやリンを取り込み、健康な状態に戻る現象

仕上げみがき、時期別のポイントはココ

仕上げみがき、時期別のポイントはココ  乳歯をむし歯から守るためには、もちろん正しい仕上げみがきが欠かせません。歯磨き開始のタイミングは「上の前歯が生えてきたら」です。上の前歯は、唾液の出口が近い下の前歯に比べてむし歯になりやすい場所。ただし、いきなり大人同様にみがこうとしてもいやがります。成長段階に応じて下記のようなことがポイントになります。また、フッ素入り歯磨き剤は、すでに効果が証明されていますので使うとよいでしょう。

●生え始め
朝・晩といった考え方でなく、朝食後など機嫌のよいときに、歯磨きに慣れさせるのを目的に1日1回歯ブラシを口に入れることから始めましょう。子どもの歯茎はやわらかく、力を入れると痛がります。軽く、細かく動かして。

●生えそろうころ
きれいにみがくことを意識しましょう。でも、まだまだ軽い力で。ひどくいやがるとき、きちんとみがけているか心配なときなどは歯科医でみがき方の指導を受けて。絵本などを使って歯磨きがなぜ必要なのかを理解させていくことも大切です。

●ひとりでみがけるようになったら
ひとりでみがけるようになっても小学校低学年までは仕上げみがきが必要でしょう。高学年でも、ときどきは仕上げみがきをしてあげましょう。

おまけのギモン?

子どものスプーンに口をつけるのは本当にいけないの?
最近は大人の口内のミュータンス菌が口移しなどで子どもに感染し、
それがむし歯の原因になることが知られてきました。
加えて、その8割が母子感染であるため、おうちのかたが食器の共有などを極端に避けるケースもあるようですが、食物の熱さや味を確かめるためにおうちのかたが、スプーンなどに少し口をつけるというのは必要なことです。
それよりも、子どもに食事をあげる前におうちのかたがうがいや歯磨きをすることの効果を知りましょう。
手洗いと一緒に、コップ1杯の水でうがいをすると75%、歯をみがけば90%以上のばい菌が口内から除去され、1時間はその状態が保たれます。

また、食生活や歯磨きなどの生活習慣とむし歯の関係は切り離せません。
こうした生活習慣は家族の協力がなければ変えられないもの。
子どもの歯を守り、お口の健康のために、気になる点は家族で話し合って改善していきましょう。

池田 正一 先生

プロフィール


池田正一

東京歯科大学・同大学院卒業。1968年から1971年まで神奈川歯科大学小児歯科講師、 1971年6月から神奈川県立こども医療センターに勤務 、2005年3月まで同センター歯科部長。 小児歯科学、障害児歯科学が専門。2005年4月より現職。