こども家庭庁に何を期待する?「こどもファスト・トラック」についても解説

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2023年4月1日に「こども家庭庁」が発足しました。
「こどもまんなか社会」の実現を目指して、子育て支援やいじめ、貧困対策などで、関係省庁を超えた司令塔的役割を発揮するとしています。
どのような政策を打ち出そうとしているのでしょうか。

この記事のポイント

省庁縦割りの弊害なくし

こども家庭庁は、首相直属の機関です。
これまでの縦割り行政の弊害をなくし、すべての子どもの健やかな成長を支え、誰一人取り残さず抜け落ちることのない支援の実現を理念とします。

組織は、長官をトップに、政策の立案調整を行う「長官官房」、母子保健や子育て支援、保育所などの事務を担う「成育局」、さまざまな困難を抱える子どもや家庭に対する支援を担う「支援局」から成ります。
それぞれ、厚生労働省や内閣府にあった子どもの福祉や保健に関する担当部局が移管されました。

子ども連れなら並ばす入れるよう

政策の目玉として早くも注目を集めているのが、子ども連れの保護者が優先的に入場できる「こどもファスト・トラック」です。

東京・上野の国立科学博物館で試行が始まったほか、お台場の日本科学未来館では夏休みに向け、未就学児の子ども連れに優先的なチケット購入を検討しています。

同庁は、運転免許更新センターや、役所の窓口など公共サービスでも、こどもファスト・トラックの普及を求めています。複数省庁に「勧告権」を持つ、同庁の存在感を示す取り組みといえるでしょう。

本人の声「抜き」にしない姿勢も

政策に、子どもや若者の意見を積極的に取り入れる仕組みもできました。

「こども若者★いけんぷらす」は、小学1年生から20代の若者が「ぷらすメンバー」として登録すると、政府が示すテーマや自分の選んだテーマについて、オンラインや対面などで意見を表明でき、フィードバックを受けることができるシステムです。

子ども政策に関する首相の諮問機関「こども家庭審議会」の委員25人のうち7人は、現役の大学生や、児童養護施設で過ごした経験を持つ人などで構成されています。
会長に選ばれた秋田喜代美・学習院大学教授は、4月21日に開かれた初会合で「本音で、子ども目線で考えていく」と意気込みを語りました。

今後5年間の子ども政策の方針を示す「こども大綱」では、子どもの声を「抜きにしない」議論に大いに期待が高まります。

まとめ & 実践 TIPS

課題もあります。いじめや児童虐待、貧困、障害児支援などの政策を進める際、文部科学省とどう連携するかです。

教育に関する分野は今回、こども家庭庁に移さず、引き続き文科省が担うことになりました。同省の特別委員会は、5歳児から小学1年までの2年間を「架け橋期」と位置付け、関係者が立場を超えて連携・協働し、格差のない教育の質を保障していくことが必要だと提言しています。

両省庁が子どもや若者の目線に立ち、どのように力を合わせていけるか、社会全体で注視していく必要もありそうです。

(筆者:長尾 康子)

こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/top/

「こども若者★いけんぷらす」
https://www.cfa.go.jp/policies/iken-plus/

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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