小学校の教科担任制はどんな仕組み?

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中学校と同じように、小学校でも教科ごとに専門の先生が授業を担当する「教科担任制」が始まっています。1人の先生が複数の教科を教える従来の「学級担任制」と、何が違うのでしょうか。このほど文部科学省が公表した事例集から、メリットやデメリットを探ってみましょう。

この記事のポイント

まず高学年の算数や理科で

小学校高学年での教科担任制は、2021年1月の中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」で導入方針が打ち出されたものです。

導入の理由は、高度になる小学校高学年の内容を適切に指導して「中1ギャップ」を解消することや、情報通信技術(ICT)を活用した授業や探究型の学習など新しい学び方に対応すること、教員の持ち授業コマ数を減らして業務負担を軽減すること、児童の多面的な理解につなげるためなどです。

これまでも音楽や家庭科などで「専科教員」が置かれていましたが、全国規模での本格的な導入は今回が初めてになります。

中学の先生が英語を教えるケースも

教科担任制を実施する方法には、(1)学級担任間で授業を交換して行う(2)新たな教員を配置する(3)近隣の小学校や中学校と連携する……などがあります。どのような方法を取るかは、学校の規模や地理的条件により、各自治体が判断することになります。
そこで文科省はこのほど、事例集を作成しました。九つの事例から、取り組み方や教員の時間割、導入に際しての工夫を紹介しています。
たとえば児童数700人を超す大規模校では、学級担任の授業交換、専科教員による授業、中学校教員による授業といった方法をフル活用しています。一方、1学年1学級の小規模校では、理科や図工、外国語などの専科教員が、複数の学校を兼務する形で授業を受け持っています。一口に教科担任制といっても、バリエーションがあることがわかります。

円滑に回るマネジメントがカギに

事例集の中で、教員が感じる教科担任制のメリットとして共通に挙がったのが「同じ授業内容を複数回行うため教材研究が深まり指導力が高まる」「担当コマ数が減り、負担軽減になる」「児童を学年全体で見る意識が高まる」といった意見です。

子ども側も「いろいろな先生の授業が受けられるので楽しい」「担任の先生以外とも仲良くなれて、話がしやすくなった」「中学生になる前に教科担任制が体験でき、どんな感じかわかった」と、学級担任以外の専門性のある教員に教わることに喜びを感じているようです。

課題もあります。担当教科や時間割作成が複雑になることや、教室移動や質問対応に先生も子どもも5分休みでは時間が足りないこと、経験年数の浅い教員は教科の垣根を超えた授業の計画力や実践力がつきにくいのではという心配、専科教員が体調を崩した時などの調整が難しいことなどです。

まとめ & 実践 TIPS

事例集では、校長や教育委員会が、課題を解消するために導入の趣旨や目的をわかりやすく発信することや、管理職による積極的なマネジメントが必要だと指摘しています。
長年、学級担任制に慣れ親しんできた小学校に教科担任制が定着するには、時間がかかるでしょう。メリットも大きい仕組みだからこそ、教師個人の努力に委ねることなく、組織的に課題に向き合っていく必要がありそうです。

(筆者:長尾 康子)

※文科省 小学校高学年における教科担任制に関する事例集~小学校教育の活性化に繋げるために~(2023年3月)
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/mext_00005.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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