宿題をやらないのはどうして? 子どもの心理を理解して上手に対応する方法【体験談あり】

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「学校からの宿題をいつも後回しにしている……」
「早くやればいいのに、どうしてギリギリまで取りかからないの?」
お子さまが宿題に取り組むにあたって、歯がゆさやイライラを感じる保護者のかたは多いのではないでしょうか。
なぜ宿題をなかなか始められないのか。どう声をかければスムーズに取り組むのか……。
宿題にまつわる気になるお悩みについて、ベネッセ教育総合研究所で学習の研究をしている主席研究員の木村治生が解説します。

この記事のポイント

子どもが宿題をやらないのは当たり前!?

まず前提としてお伝えしたいのは、「宿題に進んで取り組まない子どもがいるのは、ある意味当たり前」ということです。宿題の多くは、子どもにとって楽しくないもの。
「なぜやらなければいけないのかわからない」と思う子は少なくありません。
スマホでの動画視聴やゲームなど、他に楽しいことがたくさんあればなおさらでしょう。

これは大人の私たちも同じで、「仕事をしたくない」「家事をやりたくない」と感じることはありますよね。
それでも、「仕事を通じて成長を実感できるから」「マイホーム資金をためるため」「家族の好きな料理を作ると喜んでもらえるから」などさまざまな意味を見いだして、仕事や家事に取り組んでいます。

しかし、幼いうちは「やったほうが次の授業が理解しやすい」など先の予測をするのが難しく、宿題をする必然性を感じにくいものです。
やる必然を感じていないお子さまに「宿題は必ずやるべきもの」「宿題は自分からできて当然」という観点で働きかけようとすると、お子さまも保護者のかたも苦しくなってしまうでしょう。
まずは「宿題を自分からやりたがらないのはある程度しかたない」という認識を持つほうがお互いに楽かもしれません。

(体験談

「疲れている」「体調が悪い」「もう眠いから」を理由に、「明日早く起きてやるよ」と自室に行ってしまうので、困っています。
(神奈川県・rinoさん 第1子は小学6年生)

「宿題やったの?」と聞くと決まって、「あとでやろうと思ってたのに!」という返事が返ってきます。自分から進んで始めることはないのですが……。
(北海道・ともさん 第1子は小学5年生)

「遊びたい」「めんどくさい」と言って宿題を先延ばしにしようとします。正直に言ってくれるのはよいことだと思いますが(笑)。
(千葉県・キャッツさん 第1子は小学4年生)

そもそも、宿題をやる意味とは

とはいえ、宿題をやらないのを放っておくわけにもいきません。
お子さまに適切な働きかけをするために、ここでは宿題をやる意味はそもそも何なのかを取り上げます。

①基礎的な知識・技能が定着する

学校の先生が宿題を出す目的の一つは、「基礎的な知識・技能の定着」
授業で学んだ内容を宿題でくり返すことによって、あいまいだった知識が定着します。
宿題をやらないと知識・技能が十分に身に付かないため、授業が進むにつれてわからないところが増えてしまいます。

②思考力・判断力・表現力や学びに向かう力を伸ばす

先生が宿題を課すもう一つの目的として、「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力」の育成が挙げられます。
これらは近年、教育において非常に重視されており、子どもが社会で生きていくうえで不可欠な力とされています。
こうした力は、子どもが自ら考えて学ぶことによって伸びます。そのため、最近では全員に同じ宿題を出すだけではなく、自主学習を課す先生が増えています。
自主学習とは、「自分が必要だと思う勉強をしてこよう」「興味があることを調べてこよう」など何を学ぶかを児童・生徒に委ねて、自分で弱点を補強したり、関心のある分野を深掘りしたりといったことを促す宿題です。

③自分で学習をコントロールする力を育てる

こうした宿題に取り組むと、自分で学習をコントロールする力を伸ばすことにつながります。生活の中で他にやりたいこと、やらなければならないことを調整しながら、宿題をいつやるか、どのようにやるかを考えることは、自立していくうえで必要な力を育む訓練になります。

もちろん、子どもが既に知っていることやできることを無意味にくり返すような宿題は、あまり意味がありません。しかし、宿題の多くは子どもの成長を促すものです。このことを子どもにうまく伝えられるとよいと思います。
「とにかくやりなさい!」などと強制して無理やりやらせようとしても、子どもは反発したり、宿題に対してネガティブな気持ちを持つようになる可能性があります。

そこでこの記事では、お子さまが自ら宿題に取りかかれるようになるための保護者のかたの声かけをご紹介していきましょう。

これでイライラしない! 宿題に取りかかれるようになる保護者のサポート

子どもが自発的に宿題に取りかかれるようになるためには、自分自身で「やらなきゃ」「やろう」と思うことが大切です。
そこで求められるのは、「なぜやらなければいけないのか」「やることでどんなメリットがあるのか」をお子さまが納得する言葉かけです。
また、「自発的に始めたらうまくいった」という成功体験を積み重ねていけば、お子さまは自ら宿題に取り組めるようになると期待できます。
「子どもを自発的にする+保護者のかたもラクになれる」サポート方法を押さえていきましょう。

①宿題の意義を伝える・一緒に考える

まず保護者のかたからは、「なぜ宿題をするとよいのか」をポジティブに伝えていくとよいでしょう。
「授業が楽しくなるよ」といった学習面だけでなく、「自分から宿題できるようになったらうれしいな」といった保護者のかたの気持ちを率直に伝えるのでもOK。「保護者が喜ぶ」というのも、小学生のお子さまにとっては大きなきっかけになります。
ポイントは、いろいろな観点から宿題をやるとどんなよいことがあるのかを挙げること。

そのために、お子さまに「宿題はなぜ必要だと思う?」「どうして先生は宿題を出すんだろうね?」などと問いかけてみるのもおすすめです。
答えが出なくても、本人なりに「宿題には意味があるのかもしれない」と考えるきっかけになるでしょう。

②お子さまの宿題に関心を持つ

「今日はどんな宿題が出てるの? 面白そうだね」といった声かけも、宿題に向かわせるのに効果的です。
「自分のやっている勉強に関心を持ってくれているんだ」とお子さまが気付くことで、宿題の意義を感じるからです。
「やりなさい」ではなく「できたらすごいね」「面白いね」というポジティブな働きかけのほうが、効果的と考えられます。

③取り組み方を本人に決めてもらう

自発性を引き出すために効果的と考えられるのが、宿題をする時間・場所・方法などをお子さま自身に決めてもらうことです。「いつやる?」「どこでやる?」「どれくらいやる?」などと声をかけながら、お子さま自身に宿題のやり方を決めてもらいましょう。低学年のうちは、保護者のかたがいくつか選択肢を用意してできるものを選ばせる、といった方法でも構いません。
自分が決めたことは、守らなければならないという心理が働きます。

長期休み中なら、起床・就寝の時間や遊ぶ時間も含めて、宿題をどのように進めていくかを一緒に決めるとよいでしょう。
「自分で決めて始める」方法をくり返すうちに、お子さまは自ら宿題に取り組めるようになっていきます。
自発的に学習できるようになれば、中学生・高校生になっても無理なく自学自習ができ、保護者のかたも後々「勉強しなさい」と叱ることが減るはずです。

④取り組んだらしっかりほめる

イヤイヤながらでもお子さまが宿題に取り組んだら、「計算が速くなったね」「30分間集中できたね」など具体的な言葉でほめてあげるとよいでしょう。
取り組みを正当に評価してあげることで、お子さまは「次もがんばろう」と思うはずです。
もし決めたことが守れなければ、目標の設定が高かったと考えて、少しでもできることから始めます。仮に「まずは1問解いてみる」といった目標でも、できたら認めてあげ、次の目標を決めてもらうといいでしょう。

【体験談】我が家はこうしたら宿題をやるようになりました!

ここからは、全国の保護者のかたから寄せられた「こんな働きかけをしたらスムーズに宿題に取りかかれるようになった」という成功体験談をご紹介します。
お子さまをどう促したらよいか迷っているかたは、参考にしてみてください。

(体験談)

宿題も含めてやるべきことをリスト化し、「全部終わったらテレビもゲームもOKだよ」というルールを決めています。小学校入学前から続けており、今は何も言われなくても「やることリスト」を終わらせるように。リストの項目をつぶしていくゲーム感覚が楽しいのかもしれません。
(沖縄県・あんりこさん 第1子は小学6年生)

そもそも宿題は必ずやるもの、という前提で、始める時間を自分で決めさせるようにしました。「自分で決めたんだからやらなきゃな」という意識が働くようで、進んで取り組むようになりました。
(神奈川県・くまさん 第1子は小学3年生)

やる気がなさそうな時は隣に座ってあげると、比較的スムーズに取り組んでくれます。子どもの気分が乗ってきたと思ったら静かに席を立ち、少し遠くから見守ります。様子を見ながら臨機応変に対応することが大切!
(東京都・さくらさん 第1子は小学2年生)

教材を開いていてもやる気がなさそうな時に、「今こんなことしてるんだね~! どうやってするの? ママもやってみよう」などと声をかけてみました。すると、「えっとね~、こうやるんだよ~」と説明しながらどんどん宿題をやり出しました。関心を持ってもらえたのがうれしかったのかもしれません。
(広島県・ゆかりんごさん 第1子は小学4年生)

まとめ & 実践 TIPS

お子さまが自ら宿題に取り組めるようになるのは、確かに理想です。
しかし、子どもの実際の状況をみると「やりなさい」と叱ってしまうことは、これからも起こるかもしれません。なかなか自分から取りかかれない場合は、ある程度の管理が必要な場面もあります。
それでも、最終的には子どもが自分の学習を自分でコントロールする力を身に付けるために、自分で目標ややり方を決めて実行できる力を身に付けていく必要があります。宿題は、そのための練習でもあります。
ある程度は、子ども自身に委ねて、さまざまな働きかけを柔軟に試しながら、お子さまがやる気になり、保護者のかたもラクになれる方法を少しずつ見つけていけるとよいですね。

※2024年2月に行った「保護者のかた向けアンケート」(1217人回答)に寄せられた体験談をもとに作成。

プロフィール


木村治生

東京大学社会科学研究所客員准教授(2014~17年)・客員教授(2021~22年)、追手門学院大学客員研究員(2018~21年)、横浜創英大学非常勤講師(2018年~22年)。
これまで、文部科学省、経済産業省、総務省などからの委託研究に携わるとともに、文部科学省審議会委員、独立行政法人国立青少年教育振興機構事業選定委員、内閣府調査企画委員会委員、埼玉県草加市教育委員会専門部会委員などを務める。
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