約9割が進級に不安。調査から明らかになった勉強の不安を解消する春休みの学習法は?

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進級は楽しみな反面、不安もつきもの。「進研ゼミ」の調査によると、新学期が始まるタイミングで不安を感じる子どもは全体の90%にも上ることが明らかになりました。なかでも、勉強に関する不安はひときわ大きい様子。不安解消のために勉強をしようと思っても、「そもそも勉強のしかたがわからない」と悩む子どもも多く、勉強法からサポートすることが求められます。具体的な方法について、20年近く公立小学校教員の経験を持つベネッセ教育総合研究所の庄子寛之研究員に聞きました。

この記事のポイント

進級前は不安があって当たり前の時期

お子さまが生活や学習の不安を最も感じる時期は?(※1)

新学年や新学期が始まるタイミングは不安を感じやすいものです。なかでも、新学年目前の春休みに不安を感じる子どもが群を抜いて多いようです。

春休みは宿題も少なく、楽しく過ごせる一方で、「どんなクラスになるのかな?」「どんな担任の先生かな?」「勉強は難しくなるかな?」など不安がつきものですよね。特に、勉強は苦手な科目や分野が残っているほど、ますます不安は大きくなるもの。復習をしようにも「何から手をつければいいかわからない」と、とまどってしまうことも多いでしょう。

私はよくマラソンに例えて話をするのですが、後ろで走るとまわりのペースに合わせないといけませんが、先頭だと自分のペースでがんばり抜けるもの。新学年の始まりである4月にうまくスタートダッシュがきれるとそのまま最後までいけるものです。そのためには、春休みのタイミングで学習への不安を解消しておくことが大切です。ただし、やみくもに学習するのでは非効率。不安の原因となる科目や分野を明らかにし、対策していくことで不安を軽減、解消し、「新学年でもがんばれそうだ」という自信にしてあげることがおすすめです。

教育現場は主体的な学びを促す「教えない授業」がトレンド。家庭でのフォローが不可欠です。

では、春休みにどんな学習をしておくとよいのでしょうか。勉強させようと思っても、「子どもが自分から勉強しないのが悩み」「子どもにやる気がない」というご家庭が増えているのも現状です。

また、学校現場では、生徒の主体的な学びを促す「教えない授業」がトレンド。「教えない授業」とは、教師が答えを解説するのではなく生徒に調べさせたり、考えさせたり、ディスカッションさせたりすることで、思考力を養い、主体的な学びを促すものです。保護者世代では当たり前だった黒板の前で一方的に先生が解説をし、生徒は受け身で聞くという授業は少なくなりつつあります。

授業スタイルの変化に伴い、子どもたちが不安に感じたり、苦手意識を抱いたりする内容も変化が見られます。学習内容そのものだけでなく、調べ方や考え方、ディスカッションのしかたに悩むこともあるでしょう。それらを家庭学習でフォローしておくことが不可欠になっています。保護者世代が経験していないことも多く、家庭でどうフォローすればいいか、とまどうこともあるかもしれません。

勉強にやる気がないのは、やり方がわからないのかも

勉強のやり方がわからない小学生も増えています。東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で行った調査(※2)によると、2023年には6割以上の小4〜6年生が、「上手な勉強のしかたがわからない」と回答。2019年に比べて、19.7%も増加しています。また、そもそも「勉強しようという気持ちがわかない」という小4〜6年生も53.4%と半数以上。そんななか、春休みに「新学年でうまくスタートをきれるように勉強しよう」と言われても、お子さまは何をどう学習すべきかわからず、さらに意欲が下がってしまう可能性もあります。

調査から導く、成績アップにつながる学習のしかた3つのポイント

「上手な勉強のしかたがわからない」と悩む子どもをどうサポートしていけばいいのでしょうか。まず大切なのはお子さまと一緒にお子さまに合った「学習方法」を見つけていくことです。先ほどもご紹介した東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で行った調査(※2)では、次のことが明らかになっています。

  • 学習方法を理解することで、学習意欲が高まる可能性がある
  • 学習方法を理解することで、成績が高まる可能性がある

「学習方法の理解」ができるようになると、翌年の学習意欲も連動して上昇。反対に学習方法がわからなくなると、学習意欲は有意に低下します。

ここから、まずは「学習方法」をサポートしてあげる重要性がおわかりいただけるでしょう。
では、どのような学習方法をとるべきなのでしょうか。さまざまな学習方略(学習に際して行う意識的な工夫)について、成績の高い子・低い子で差がついた項目を調査したところ、特に差が大きかったのは次の3つという結果になりました。

  1. 何がわかっていないか確かめながら学習する【モニタリング方略】
  2. まちがえた問題をやり直す【解き直し方略】
  3. 自分に合った学習のやり方を工夫する【自己調整方略】

ここから、成績が高い子は自分の状態を客観的に把握しながら、自己調整して学習したり、集中すべきポイントに集中して学習していることがわかります。これが成績アップにつながる学習のしかたの3つのポイントといえるでしょう。

ご家庭でも「どこがわかっていなかったか、わかった?」「前にまちがえた問題は解けるようになったかな?」といった声かけをすることで、3つのポイントを実践できるようサポートしてあげられるといいですね。

春休みは絶好のチャンス!

宿題も少ない春休みは、これまで学習した範囲のわかっていないポイントを確認し、まちがえた問題を解きなおす絶好のチャンス。春休みに上手な学習のしかたでおさらいをすることで、習ったことが定着するのはもちろん、勉強のしかたがわかり、新学年からの学習への意欲アップにつながります。
春休みのうちにまずは学習の不安を解消することで、笑顔の新学期をむかえませんか?

(出典)
※1 2024年1月の小1~5のお子さま向けアンケートにおいて、「新学年(3~4月)」「2学期(8~9月)」「3学期(12~1月)」が始まるタイミングについて、生活や学習の不安を強く感じる順に回答いただき、最も不安を感じると回答があった割合

※2 東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」2023年より

プロフィール


庄子寛之

東京学芸大学大学院教育心理学部臨床心理学科修了。公立小学校教員を20年近く務めた後、現職。現在は「先生の先生」として、学校や自治体を支援するために全国各地で教員研修や保護者向けセミナーを行っている。主な著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)など。

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