注目される『非認知能力』を国が具体化 幼児の育ちに必要なスキルとは?

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文部科学省のシンクタンクである国立教育政策研究所(NIER)が、「幼児期の育ち・学び調査」の中間報告をまとめました。
子どもの能力をめぐっては近年、目に見える学力以外の「非認知能力」の重要性が強調されています。しかし、この言葉は経済学などで使われているものの、具体的にどういうものなのかが、必ずしも明らかではありません。

そうした中、ベネッセ教育総合研究所や、同研究所と東京大学発達保育実践政策学センターの共同プロジェクトなど、ようやく国内でも研究が本格化しています。幼児期の子どもの育ちに必要なスキルとは、何なのでしょうか。

この記事のポイント

「育ち・学びを支える力」など調べる

NIERが2017年度から行っている「幼児期からの育ち・学びとプロセスの質に関する研究」では、子どものスキルを「学びの力(認知的スキル)」「育ち・学びを支える力(社会情緒的スキル)」「生活の力(生活スキル)」に分類。さらに、スキルを発揮させるものとして「実行機能」にも着目しました。

学びの力の中には「読み書き・数」「分類」「言葉」の力が、育ち・学びを支える力の中には「好奇心」「自己主張」「粘り強さ」「自己調整」「協同性」があるとしています。
また、実行機能には「ワーキングメモリ(更新)」「切替え」があり、実行機能に関連するものとして「抑制」(感情抑制、行動抑制)に関しても調べています。

家庭の格差を縮める園の役割

調査では、週に3、4日以上、本を読み聞かせているグループと、そうでないグループに分けて、どういった力が働いているかを探りました。
すると、読み聞かせは「生活習慣」「読み書き・数」「分類」「言葉」に明らかな影響を及ぼしていることが確認できました。

また、家に50冊以上の蔵書があるグループと、ないグループで見たところ、「好奇心」「自己主張」「粘り強さ」「自己調整」に影響していることがわかりました。

では、家で本をそろえたり、読み聞かせをしたりしなければ絶対だめなのか、というと、そんなことはありません。5歳児になると、読み聞かせの頻度や蔵書数の影響が薄れます。これには、幼稚園や保育所などで、読み聞かせや絵本の貸し出しをしているため、家庭環境の差が縮まった可能性があるとしています。

幼稚園教育要領が示すもの

2018年度から実施されている新しい幼稚園教育要領や、保育所保育指針などでは、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として、自立心、思考力の芽生え、自然との関わり・生命尊重、豊かな感性と表現など10項目を挙げています。
これらは「卒園までに身に付けさせなければダメなの?」と勘違いされることも少なくないようです。しかし幼児期に、幼児期らしい遊びを通して、これらの力が自然と育っていき、だんだんと小学校の学びへとつながっていくものだ……という点を重視したものと考えればいいでしょう。

まとめ & 実践 TIPS

小学校以降の学びにも、実は幼児期のスキルが大きく影響していることがわかってきました。そんな子どもの力を、家庭や園、学校が一体となって育んでいくことが求められます。そのために何をすればいいか、研究を深めることが期待されます。

幼児期からの育ち・学びとプロセスの質に関する研究(中間報告)
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/seika_digest_r03.html#ese

ベネッセ教育総合研究所 乳幼児・子育て研究

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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