ICTのチカラは学校を超えて

人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などの進展に伴い、ICT(情報通信技術)人材の必要性がますます高まっています。文部科学省も学習指導要領を改訂し、小学校からプログラミング教育を必修化するなどして、情報活用能力の裾野を広げようとしています。
しかし今の小学生が大人になるころにはAIなどの進展で仕事の半分が入れ替わるとも言われるなか、もはや学校だけで育成が完結する時代ではなさそうです。

常に学び続け、能力を発揮

5月29日、東京都内で一般社団法人超教育協会が設立総会を開きました。野田聖子総務相を来賓に、300人近くの企業関係者などが集まる盛況ぶりでした。
「超教育」と聞くと一瞬、驚いてしまうかもしれませんが、ICT人材の育成には従来の教育の枠組みを超える必要がある……との思いが込められています。会長に就任した小宮山宏・三菱総合研究所理事長(元東京大学総長)はあいさつで「生まれてから死ぬまで、つまり頭が生きている間、何らかの勉強をする。それが超教育社会だ」と説明していました。
とりわけICTの世界で、技術革新はめまぐるしいものがあります。大学や専門学校などで専門知識や技術を身に付けても、それ自体はすぐ陳腐化します。常に新しい知識・技術を身に付け続けなければ、対応はできません。

「超教育」の意味は、それにとどまらないようです。野田総務相が「ICTは年齢不詳」と指摘したように、中高生でも大人顔負けの高い能力を発揮することがよくありますし、最近では高齢者プログラマーも注目を集めています。そうした意味でも、学校段階にとらわれないのが当たり前の世界だと言ってよいのでしょう。

自己肯定感や自信も必要

設立総会では、私立開成中学校・高校の柳沢幸雄校長が基調講演を行いました。柳沢校長は米ハーバード大学の教員時代に何度もベストティーチャーに選ばれた東大名誉教授(環境工学)です。
柳沢校長は、子どもが親の年齢になるのは30年後であり、大人になった子どもたちが生きる世界は想像でしかわからないと指摘しました。今から30年前といえば1988年ですが、「イケイケどんどん」だった当時、今のような社会を想像できたでしょうか?

しかも日本の若者は、国際的にも自己肯定感が低いままです。柳沢校長は「子は親の鏡。若者の自己肯定感や自信が低いのは、大人たちの自己肯定感や自信が低いからだ」と強調し、開成の教育を例に、自主性・自律性をもとにして自己肯定感や自信にあふれる若者を育成するよう訴えました。
ICT分野で能力を発揮するにも、そうした自己肯定感や自信が必要になると言います。情報活用能力や専門知識を身に付けさえすればよいという話ではありません。

さらにプログラミング教育は、学校外での講座も盛んになっており、新指導要領でも、地域や民間などとの連携を期待しています。興味・関心があれば、学校の授業にとどまらず、どんどん学びを広げて、年齢にこだわらず能力を発揮する……。それが「超教育」の姿であり、ICT人材の育成・発揮に求められていることのようです。

(筆者:渡辺敦司)

※超教育協会
http://lot.or.jp/

※文科省 小学校プログラミング教育の手引(第一版)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/03/30/1403162_01.pdf

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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