地方国立大学の将来は?

名古屋大学と岐阜大学をはじめとして、静岡大学と浜松医科大学、小樽商科大学・帯広畜産大学・北見工業大学と、国立大学の法人統合を検討する動きが続いています。
中央教育審議会での検討を先取りする動きですが、地方国立大学としても、主な入学年齢である18歳人口が減少し続けるなか、今までの地位を維持することが難しいのは現実のようです。

定員を維持すれば偏差値低下は必然

中教審の大学分科会「将来構想部会」では、2040年ごろの社会を見据えた大学などの高等教育機関の在り方を審議しています。1国立法人が複数の国立大学(キャンパス)を経営する「アンブレラ方式」も、この部会を中心に検討されているものです。
地方国立大学が置かれている状況は、どうなっているのか。これについては委員の石田朋靖・宇都宮大学長が、5月の部会で行った発表が参考になります。必ずしも同大のことではなく、「国立大学法人 地方X大学の2040年の未来予想図」としてシミュレーションした「バーチャルな存在」です。全国の地方国立大学に共通する課題だと言ってよいでしょう。

その地方X大学は、2017年の入学定員が1,500人でした。東北・関東を中心に学生を集め、平均偏差値は60ほど。しかし地域の2040年の18歳人口推計から、入学者を約25%(385人)削減して1,115人にしなければ、同じ偏差値を保つことはできません。
こうした状況に対して、三つの選択肢があると言います。一つは、母集団を増やして入学者を確保することです。しかし、いくら努力しても、全国の高卒者から現在の合格偏差値以上の学生を大幅に増やすことは、現実には困難です。そこで、留学生や社会人、シルバー世代など、新たな入学者層を掘り起こす必要が出てきますが、それにもさまざまな課題があります。

入学者減は教育・研究の質低下にも

二つ目の選択肢は、入学者を減らすことです。しかし学生数の減少は、それに対応した予算減と教職員数の減少を伴います。そうなると、肝心の教育・研究の質が低下するという悪循環に陥ります。対応策として、ニーズの低い分野の学部定員を削減・廃止し、大学院の定員に振り替えることが考えられると言います。

三つ目は、定員を維持して、入学者の質低下を容認することです。その場合、平均偏差値は56程度に下がると言います。そうなると、入学後の教育の質を相当高め、良質な人材を輩出する努力をしなければなりません。

こうした実態や選択肢を踏まえて、アンブレラ方式も含めた戦略・施策を考えなければいけない……というのが、石田学長の指摘です。
ただ、これは地方国立大学に限らず、いわゆる旧7帝大や、有名私立大学にも共通する課題でしょう。20年ほど前、「分数ができない大学生」など学生の学力低下が大きな社会問題となりましたが、それにも18歳人口の減少と、それを補う進学率の上昇という背景がありました。
高等教育機関の在り方は今後、政府を挙げて検討が進められることになります。その際、こうした客観的事実をもとに、冷静な議論を望みたいものです。また、受験する側も、大学などが大きな変化を迫られていることは、認識しておかなければならないでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※中教審 大学分科会 将来構想部会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/042/index.htm

※国立大学法人 地方X大学の2040年の未来予想図(第17回配布資料)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/042/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/05/11/1404844_3.pdf

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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