入試の変化とともに、学校での英語の授業は変わるの?

2021年1月から導入される「大学入学共通テスト」では、英語の4技能(聞く・読む・話す・書く)を評価するため、外部の英語資格・検定試験を活用することになりました。これによって、学校での英語の授業はどう変わるのでしょうか。

今も「コミュニケーション能力の育成」重視のはず

まず認識しておかなければならないのは、入試が変わるから授業が変わるのではないということです。
現在の学習指導要領でも、教科(外国語)の目標として「外国語を通じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う」(中学校)、「外国語を通じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養う」(高校)と、4技能を使ったコミュニケーション能力の育成を正面に掲げています。

一方、これまでの大学入試センター試験では、マークシート式のため、直接的には「読む」(筆記)、「聞く」(リスニング)の2技能しか評価できませんでした。各大学の個別試験(2次試験)でも、外国語学部などを除けば、記述式による「読む」「書く」の2技能に限定されることがほとんどです。センター試験でリスニングが導入されたのは2006年1月ですから、保護者世代にとって、英語といえば「読む」「書く」の2技能のことだという印象が強いのではないでしょうか。

そうした状況に対して文部科学省は、指導要領の改訂のたびに文言を強めながらコミュニケーション能力の育成を強調し、それに伴って学校の先生たちも、英語を使って授業をしたり、英語で会話をする機会を多くしたりする努力を続けてきました。お子さんの英語の授業を参観して、自分たちの時代とはすっかり様子が変わっていることを実感したかたも少なくないことでしょう。

<4技能授業>から<4技能入試>へ

しかし、入試が依然として「読む」「書く」の2技能が中心だと、実際の授業は、どうしても入試対策を意識するあまり、最終的に、この2技能に力を入れざるを得ず、結果的に「聞く」「話す」がおろそかになってしまいます。
センター試験でリスニングが入ってから「聞く」指導も重視するようになったとはいえ、自然なコミュニケーションの中で相手が自由に話す内容を聞いて理解する活動が、十分にできているとは限りません。

そもそも、4技能は総合的に使ってこそ「英語が使える」ようになるはずですが、各技能をバラバラに扱って入試対策をしていては、いつまでたっても英語が使えるようにはならないでしょう。
何より、英語の先生がコミュニケーション能力を育成する授業に努めても、肝心の授業を受ける生徒のほうが「入試で点数が取れればよい」という姿勢のままでは、4技能授業の効果が上がるわけはありません。

中学校で2021年度から全面実施される新指導要領では、4技能を「聞くこと、読むこと、話すこと[やり取り]、話すこと[発表]、書くこと」の5領域に整理したうえで、「コミュニケーションの目的や場面、状況などを意識して活動を行い、英語の音声や語彙(い)、表現、文法の知識を5つの領域における実際のコミュニケーションにおいて活用する学習の充実を図ること」を求めています。また、他の教科などと同様、「知識・技能」を社会の中で生きて働くものとなるよう求めているのみならず、「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の育成も図ることにしています。
2020年度からは、小学校高学年で英語が教科化され、4技能すべてを扱うことにしています(5領域は中学校と同様)。もはや大学入学者選抜だけが2技能だけでよい……ということはあり得ません。

(筆者:渡辺敦司)


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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