2018年の教育(1) 高校の授業が大きく変わり始める!

2018年を迎えました。教育界では今年から、さまざまなことが大きく動き出すことが予想されます。その最たるものが、高校の授業改革です。

「大学入学共通テスト」最初の学年が4月に入学

小・中学校の新しい学習指導要領(それぞれ2020年度、21年度から全面実施)は既に昨年の3月に告示されていますが、高校は作業の関係で1年遅れて、今年の3月までに告示される予定です。近く改訂案が公表され、パブリックコメント(意見公募手続)に掛けられることでしょう。
しかし高校は、既に変化を迫られています。高校教育・大学教育・大学入学者選抜の3者を一体で改革する「高大接続改革」に基づき、大学入試センター試験が2021(平成33)年1月から「大学入学共通テスト」に切り替わるなど、入学者選抜制度が大きく変わるからです。その対象になる最初の学年が、今年4月の高校入学生なのです。
新指導要領の改訂は、高大接続改革と合わせて「車の両輪」だと言われます。実際、両者が相互にリンクしながら、議論が進められてきました。昨年12月に公表された共通テストの試行調査(プレテスト)問題に見られるとおり、思考力・判断力・表現力を問う問題に大きくかじを切ったのには、それが今後の大学教育で一層求められるだけでなく、現行指導要領の「学力の3要素」(<1>知識・技能<2>思考力・判断力・表現力<3>主体的に学習する態度)をパワーアップさせた「資質・能力の三つの柱」(<1>知識・技能<2>思考力・判断力・表現力等<3>学びに向かう力・人間性等)で幼児・児童・生徒を育成するという、新指導要領等の先取りという側面があるからです。

告示された新指導要領と相まって

そのため高校の科目再編などに関しては、既に2016年12月の中央教育審議会答申で大枠が示されています。
具体的には、▽国語科は必履修科目「現代の国語」「言語文化」と選択科目「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」に▽地理歴史科はそれぞれ「歴史総合」「地理総合」と「日本史探究」「世界史探究」「地理探究」に▽公民科は必履修科目を「公共」に▽数学に統計などを扱う選択科目「数学C」を新設▽数学と理科にまたがる選択科目「理数探究基礎」「理数探究」を新設▽全生徒に「情報I」を履修させる▽英語を「英語コミュニケーションI・II・III」(Iが共通必履修)と「論理・表現I・II・III」に▽総合的な学習の時間を「総合的な探究の時間」に名称変更……などです。「探究」が入っている科目が目立つのも、思考力・判断力・表現力等を重視した表れです。

高校は、昨年12月に共通テストの試行調査(プレテスト)のモデル問題例が公表され、新指導要領も告示されることで、今後に育てるべき学力や、そのための授業改善についてのイメージを、具体的に持つことができるようになります。4月から全国で、主体的・対話的で深い学びを取り入れるなどの授業改善に、いっそう弾みが付くことでしょう。それが、学力の3要素(高大接続では<3>を「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」に置き換え)をすべて評価して入学者を決めるという、大学入学者選抜改革への対応にもストレートにつながるからです。
今後は、暗記頼みの勉強姿勢を改める必要があるでしょう。何より「車の両輪」改革は、先行き不透明な「人生100年時代」を生き抜く力を付けさせるものなのです。

(筆者:渡辺敦司)

※学習指導要領の改訂を提言した中教審の答申
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm

※大学入学共通テスト試行調査(2017年11月実施分)の結果速報等
http://www.dnc.ac.jp/news/20171204-01.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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