幼児期の運動、ポイントはスポーツ庁がガイドブック

社会の環境の変化の中で、子ども同士が野外で遊ぶ機会がどんどん減っています。
スポーツ庁の2016(平成28)年度「体力・運動能力調査」では、幼児期に野外で遊ぶ時間が長い子どもほど体力や運動能力も高いという結果が出ています。しかし、幼児期の外遊びの効果はそれだけではありません。同庁が作成した「幼児期の運動に関する指導参考資料」というガイドブックをもとに、幼児期の運動や遊びの重要性を考えてみましょう。

特定の競技だけでは「多様な動き」身に付かず

外で遊んでいたことが多い子どもの体力・運動能力が高いのは当然ともいえます。しかし、同庁の調査分析で取り上げられたのは10歳(小学5年生)のデータです。小学校入学前に培った体力が小5まで有効と見るのはやや無理があります。子どもたちは幼児期の外遊びの中で、もっと大事なものを身に付けたのではないでしょうか。
これを考えるヒントになりそうなのが、指導参考資料です。2012(平成24)年に策定された「幼児期運動指針」の具体化のため、幼児教育・保育関係者向けに作られたものです。この中で幼児期の運動や遊びの大切さについて、三つのポイントが挙げられています。

一つ目は「多様な動き」を経験することです。子どもは幼児期の運動や遊びを通じて、体のバランスを取る、体を移動させる、物を運ぶことなどに必要な多様な動きを身に付けます。これらはスポーツだけでなく、力をコントロールしたり、タイミングよく動いたりといった日常生活でも大切な動作となります。たとえば、歩いていてよく転ぶ、うまく物を投げられない、きちんと座っていられないなどの子どもは、これらに必要な動作を身に付けていないからと考えられます。
「うちの子どもは、幼児期からサッカーや水泳などをやっているから大丈夫」と思うかたもいるでしょう。ところが同資料は、特定の動きばかり繰り返すのではなく、自発的な遊びの中で多様な動きを身に付けることが大切だとしています。つまり、同じスポーツばかりしていたら、体力は付いても、将来必要な「多様な動き」を身に付けることはできないのです。

コミュニケーション能力や自発性・積極性とも関係

二つ目のポイントは「楽しく体を動かす」ということです。体を動かすのが楽しいと思えるようになれば、子どもの体力・運動能力だけでなく、自発性や積極性が高まる他に、他の子どもと楽しく遊ぶことでコミュニケーション能力の向上につながります。コミュニケーション能力は、グローバル化した21世紀の社会を生き抜くため、次期学習指導要領でも重視されている力の一つです。

そして三つ目は、子どもの発達段階や特性に合わせた遊びや運動の機会を与えることです。幼児の発達や特性は、子どもによって大きく異なります。それぞれに合った遊びや運動をさせることが大切です。
同指針は、園庭や施設内などでの運動や遊びの方法、その狙いのポイントなどを解説しています。遊びよりも勉強が大事という保護者も多いでしょうが、幼児期の運動や外遊びは、子どもの将来に大きく関係してくる可能性も高いということを認識しておくことも必要かもしれません。

(筆者:斎藤剛史)

※幼児期の運動に関する指導参考資料[ガイドブック]第2集
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop03/list/detail/1396966.htm

プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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