教育費負担をどう考えるか

教育の無償化をめぐる議論が話題になっています。安倍政権はこれまで、教育の無償化に慎重な姿勢を示してきましたが、憲法改正の柱の一つとして教育の無償化を盛り込む方針を示しました。政府の「経済財政運営と改革の基本方針2017」(骨太の方針)も、教育の無償化を盛り込んでいます。しかし、実現は簡単ではないようです。

幼児教育は段階的無償化を明記

教育費負担をめぐっては、憲法に規定されている義務教育(小中学校)の無償化に加えて、民主党政権時代に、公立高校の授業料相当分を国が負担するという高校授業料の無償化が実現、その後、自民党政権により所得制限が導入されて「高等学校等就学支援金制度」となりました。これにより現在の国公立学校は、小中学校は全員無償、高校も高所得層以外は授業料が実質的無料となっています。

しかし日本の学校教育費は、国や地方自治体による公財政支出の割合が低く、特に大学などの高等教育は、家庭の私費負担により成り立っているといっても過言ではありません。その重い教育費負担が少子化や教育格差の原因の一つと指摘されることから、教育の無償化が大きなテーマとして浮上してきました。

教育の無償化論議を見ると、保育所や幼稚園など幼児教育の無償化と、大学など高等教育の無償化の二つに分けられます。政府が6月に閣議決定した骨太の方針では、幼児教育については「財源を確保しながら段階的無償化を進める」と明記されました。しかし大学など高等教育については「進学を確実に後押しする観点から」「必要な負担軽減策を財源を確保しながら進める」というにとどまっています。高等教育の無償化は必要な財源が大きいうえに、反対する意見も少なくないからです。

自民党は教育無償化の財源を社会保険料に上乗せして徴収する「こども保険」を検討していますが、対象は幼児教育の無償化を想定しているようです。

大学無償化は納税者の理解を得られない?

なぜ高等教育の無償化には、反対意見が多いのでしょうか。
財務省の財政制度等審議会は、財務相への建議の中で、幼児教育の無償化に理解を示す一方、高等教育の無償化に反対し、大学教育は「自己投資」で、費用は受益者が負担すべきであるとしています。また、現在約45%の私大が定員割れしており、無償化すれば大学進学者が増えるため「進学する魅力に乏しい大学を経営的に救済することにつながる可能性がある」と指摘。「納税者」にとっては好ましくないと述べています。

一般社会でも、子どもがいない家庭にとっては、税金が増えるだけで、全くメリットがないと受け止める人もいます。幼児教育の無償化に比べて、高等教育の無償化は、かなり難しいようです。

ただ、自民党の教育再生実行本部は5月の第8次提言の中で、大学授業料を実質的に無料化し、卒業後にマイナンバー制度を活用して給与から授業料分を天引きして返済する方法を提言しました。大学の授業料負担を保護者から本人に移すという点が大きなポイントです。

このように考えると、高等教育費の負担軽減のためには、無償化以外にもまだ知恵を絞る余地がありそうです。

※経済財政運営と改革の基本方針 2017 について
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2017/2017_basicpolicies_ja.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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