厚労省が「愛の鞭ゼロ作戦」

子育てをしていると、ついイライラして子どもを叩いたり、怒鳴ったりしてしまうことがあります。しかし、子どもに対する暴力や暴言は、「体罰」です。日本の社会には、しつけのためには体罰という「愛の鞭」も必要という考え方が根強く残っていますが、これに対して厚生労働省は、体罰の悪影響などを説いたパンフレットを作成して、「愛の鞭(むち)ゼロ作戦」というキャンペーンを展開しています。なぜ、体罰はいけないのでしょうか。

体罰で子どもの脳が委縮や変形

厚労省の「子どもを健やかに育むために」と題したパンフは、脳科学など最新の研究データから、体罰の有害性を説いているのがポイントです。最近の脳科学研究で、子ども時代に暴力や暴言などを受けた人の脳は、前頭前野が委縮したり、聴覚野が変形したりすることが明らかになっています。しつけのつもりの「愛の鞭」が、実は子どもの脳に「目に見えない大きなダメージを与えているかも知れないのです」と説明しています。また、体罰を受けた子どもは、成人後に精神的問題や反社会的行動を起こしやすいなど「望ましくない影響」も大きいと指摘しています。

体罰など「愛の鞭」は、子どもが言うことを聞くようになるなど、一時的には大変効果があるように見えます。しかし、それは暴力や暴言による恐怖で子どもをコントロールしているだけです。このような子どもは、親に気に入られようとして「親の顔色を見て行動」するようになるだけでなく、親に心配事や悩みを打ち明けられなくなります。その結果、最悪の場合、「いじめや非行など、より大きな問題に発展してしまう」ことになりかねないとパンフは述べています。すぐに効果が出るからと「愛の鞭」を子どもに振るっている保護者は、いずれ大きなしっぺ返しを食うことになりかねないようです。

「愛の鞭」は捨ててしまおう

とはいっても、子育て中の保護者のストレスは、やはり大変なものです。何かを取り合ってけんかしている、言ってもすぐに動かないなど、ささいなことでイライラが爆発して、手や口が出てしまうこともあるでしょう。パンフは、そんな時のために、感情を「クールダウン」させる方法を保護者が身に付けておくようアドバイスしています。

人に迷惑をかけるような子になっては困る、わがままな子になっては困るなどの思いから、ついつい強く怒鳴ってしまうこともありますが、保護者自身が感情的になってしまっては、しつけとしての効果はありません。しつけとしての「愛の鞭」のつもりが、いつの間にか「虐待」にエスカレートしてしまうこともあります。パンフは「『愛の鞭』は捨ててしまいましょう」と呼び掛けています。
しつけのための「愛の鞭」のつもりが、知らず知らずのうちに恐怖で子どもを縛ることになっていないでしょうか。子どもの心身に大きなダメージを与えていないでしょうか。子どものためと振るった「愛の鞭」が、逆に子どもを傷つけることになっていないでしょうか。体罰は、しつけではありません。子育てで、イライラが高じた時には、いったん落ちついて冷静になることが大切でしょう。

※愛の鞭ゼロ作戦
http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/05/ainomuchizero.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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