海外留学には危険も 文科省が危機管理ガイドライン

グローバル化が急速に進むなかで、海外留学に対する関心が高まっています。一方、フランスで日本人の女子留学生が行方不明になったり、中南米で現地の犯罪に巻き込まれて日本人の男子大学生が死亡したりと、海外留学に伴う危険も増大しています。これに対応して文部科学省は、外務省の協力を得て、大学における海外留学の危機管理ガイドラインを作成しました。各大学に対して、海外留学への危機管理体制の整備を求めています。

治安悪化を懸念して反対する保護者も

海外大学などに留学する学生数は、リーマンショック後の不況の影響で減少していましたが、最近では景気回復傾向などの他、企業がグローバル人材を重視し始めたことなどもあって、再び増加に転じています。また、政府は第2期教育振興基本計画の中で、海外大学などへの留学者の数を、2020(平成32)年を目途に現行の6万人から12万人に倍増させる方針を盛り込むなど、大学生などの海外留学を増やすことに力を入れています。

ところが、世界の情勢を見ると、諸外国では宗教対立による無差別テロや犯罪の増加に伴う治安の悪化、地震など自然災害の増加など、日本人留学生が犯罪や事故に遭うケースが増えています。このため、グローバル化の進展で海外留学希望者は増えても、現地の「治安」を理由に留学に反対する保護者も少なくないようです。

自分の身は自分で守る意識を

このため文科省は、留学する学生への意識啓発と大学の危機管理体制を整備するため、大学における危機管理のガイドラインを作成しました。チェックリストの形式で、大学が実施すべき事項を示しているのがポイントで、海外留学生に対する意識啓発と、大学における危機管理体制の整備の二本柱から成っています。

まずガイドラインは、「自分の身は自分で守る」という意識を持って危機を回避することが鉄則であるとして、「日本にいるときとは意識を切り替えることにより事件・事故を防ぐことができることを学生に理解させるよう指導」することの他、留学先の危険に関する情報収集をする必要性や、外務省の海外安全ホームページなど情報収集の方法を指導すること、そして万一、事件・事故に巻き込まれた際には、在外公館の援護を求めるため、留学前にその連絡先を確認しておくことなどを求めています。

また学生を送り出す大学側については、危機管理体制の整備のために、学生が事件・事故に巻き込まれた場合の対応の決定などに関して、権限と責任を明確にしておくこと、学生に対して注意喚起や安否確認ができるよう連絡ルートを確保しておくこと、現地での情報収集ができる体制を整備しておくこと、国内の家族との連絡や必要なサポートを行う体制を整備しておくことなどを挙げています。

グローバル化に伴い、今後、海外留学する学生は増えていくことでしょう。海外留学における危機管理は、大学にとってこれから重要な役割となってきそうです。

※大学における海外留学に関する危機管理ガイドラインについて
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1384531.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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