指定国立大学って何? 東大など7大学が応募

文部科学省は、ハーバード大学にも負けないような世界レベルの大学づくりを目指して、昨年末に「指定国立大学法人」を公募しました。これに対して、東京大学をはじめ7国立大学が応募をしています。旧帝大系では東大・京大など本州の5大学が応募しましたが、北海道大学と九州大学は応募を見送りました。文科省は今年夏ごろまでに指定国立大学法人を指定する予定です。指定国立大学法人とは、どんな大学なのでしょうか。

ハーバード大とも戦える大学を目指して

グローバル化時代の国際競争で日本が生き残るためには、大学の国際競争力を上げることが欠かせません。文科省は、国公私立大学全体を対象にした「スーパーグローバル大学」の指定などを行っていますが、やや力不足である感は拭えません。

このため、政府の産業競争力会議は、世界と競争できる国内トップクラスの国立大学を指定して、世界水準の実力を持つ大学をつくることを提言しました。これを受けて文科省は、国立大学法人法改正案を国会に提出しました。

同改正法は、2016(平成28)年5月に国会で成立し、17(同29)年4月から施行されることになったため、それに合わせて文科省は、世界で競争できる国立大学として「指定国立大学法人」の公募を2016(平成28)年11月から開始。2017(平成29)年4月までに東京大学など7大学が応募しました。

応募した大学が少ないように見えますが、これは応募条件がとても厳しかったためです。「国際的な競争環境の中で、世界の有力大学と伍していくことを求める」ため、「研究力」「社会との連携」「国際協働」の3分野ごとに、被引用論文数の割合、外国人留学生や日本人派遣学生の割合などの項目が設定されており、しかも各分野で少なくとも1つ以上の項目が「国内10位以内」に入っていなければならないとされています。つまり、国内トップテンの国立大学の中から指定国立大学法人を指定するというわけです。このため当初から、旧帝大クラスの国立大学しか応募できないと言われていました。

北大・九大の代わりに東工大・一橋大が

しかし旧帝大系大学のうち実際に応募したのは、東北大学・東京大学・名古屋大学・京都大学・大阪大学の5大学で、同じ旧帝大でも北海道大学と九州大学は応募を見送りました。これは大学の国際化などの面で応募基準を満たせなかったためと思われます。また旧帝大系以外では、東京工業大学のほかに、文系大学である一橋大学が応募しているのが注目されます。

指定国立大学法人に指定されれば、給与基準などの規制が緩和され、世界的な外国人研究者などを高給で雇うことができるようになる他、自己収入を収益性の高い金融商品などに投資したり、大学の土地を第三者に貸し付けたりすることなどができるようになります。

一方、これらの措置には「大学としてのメリットがない」という声も一部にあり、大学関係者の中には、指定国立大学法人の制度を冷めた目で見る向きもあるようです。
ただし、「指定国立大学法人」に指定されれば、「世界で競争できる大学」として国に格付けされたことを意味します。大学進学者の大学選びなど受験地図にも、少なからぬ影響を及ぼしそうです。

※第3期中期目標期間における指定国立大学法人の申請状況について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/04/1384521.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

子育て・教育Q&A