幼稚園・保育所の学びが小学校の基礎に

「スタートカリキュラム」「アプローチカリキュラム」という言葉をご存じでしょうか。
遊びや体験活動が中心の幼稚園など幼児教育から、教科による授業が中心となる小学校へと、円滑に接続するためのカリキュラムのことです。
これについて国立教育政策研究所は「幼小接続期の育ち・学びと幼児教育の質に関する研究」という報告書をまとめました。幼児教育を小学校以降の教育の基礎と位置付けているところが、大きなポイントです。

適応指導から幼小接続の重視へ

これまでも幼児教育から小学校教育の接続は大きな課題であり、さまざまな議論がなされてきました。その中で議論されてきたのが、入学したばかりの小1が小学校での学習に慣れることができるようにするためのスタートカリキュラムです。しかし、これまでは、幼稚園から小学校の生活に適応させることに主眼が置かれており、いわば「小1プロブレム」対策という意味合いが強いものでした。

これに対して、次期の学習指導要領(小学校は2020<平成32>年度から全面実施)と幼稚園教育要領(18<同30>年度から全面実施)は、幼児期と児童期の教育の連続性・一貫性を強調しており、幼稚園などでの教育と、小学校低学年での教育の目標を「学びの基礎力の育成」と位置付けています。そこで重視されるのが、幼小接続期カリキュラムです。

同研究所は、幼小接続期カリキュラムのうち「幼児期の学びが小学校の生活や学習で生かされてつながるように工夫された5歳児のカリキュラム」をアプローチカリキュラム、「小学校入学後に実施される合科的・関連的カリキュラム」をスタートカリキュラムと説明しています。
具体的に言えば、幼稚園などと小学校が連携して、幼稚園などで5歳児後半にアプロ—チカリキュラムを実施したうえで、小学校では入学後直後にスタートカリキュラムを実施することになります。

幼児教育を小学校以降の教育の基礎に

次期幼稚園教育要領では、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿として、「健康な心と体」「自立心」「協同性」「道徳性・規範意識の芽生え」「社会生活との関わり」「思考力の芽生え」「自然との関わり・生命尊重」「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」「言葉による伝え合い」「豊かな感性と表現」の10項目を示しています。一方、小学校の次期学習指導要領では、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を踏まえた指導を工夫することにより、幼稚園教育要領等に基づく幼児期の教育を通して育まれた資質・能力を踏まえた教育活動を実施」するよう求めています。

これについて同報告書は、幼稚園などと小学校の教員の間で、「5歳児修了時の姿が共有化されることによって幼児教育と小学校教育との接続が一層強まることが期待されている」としています。

これまで「小1プロブレム」への対策として、幼稚園から小学校への適応に主眼が置かれがちだったスタートカリキュラムですが、次期学習指導要領では、幼小接続という観点から、幼児教育と小学校以降の教育の連続性が強まりつつあります。それは、幼児教育がそれ以降の教育の基礎であることを意味しており、これまで以上に幼児教育の重要性が増しているのです。

※幼小接続期の育ち・学びと幼児教育の質に関する研究
http://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h28a/syocyu-5-1_a.pdf

※次期学習指導要領等
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1383995.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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