アクティブ・ラーニング、私立大学の64%が取り組み

一方通行の講義ではなく、学生を能動的に学ばせる「アクティブ・ラーニング」(AL)を取り入れる大学が2016(平成28)年度、私立で64.0%を占めたことが、文部科学省の外郭団体、日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)のまとめでわかりました。これから大学に進もうとする人は、変わる大学の教育に適応する備えが不可欠です。

課題解決や社会貢献を通じた学習も

文部科学省は、大学や短大の情報公開を促すため、「大学ポートレート」の整備を進めています。国公立と私立の別に行われており、私立に関しては、ほとんどの大学が私学事業団のポータルサイトに参加。教育上の取り組みを詳細に紹介しています。

教育方法上の特色としてALを挙げたのは、大学の64.0%(前年度比2.0ポイント増)、学部でも61.9%(同1.7ポイント増)となります。また、プロジェクト活動を通じて学生に自主的・自律的に課題を発見・解決させることを通じて、知識を実践的に活用し学びを深める「課題解決型学習」(PBL)は各53.5%(同2.4ポイント増)、48.9%(同1.3ポイント増)、地域社会での貢献活動などを体験するなかで、学んだ知識を実践的に活用するとともに、社会に対する責任感も育む「サービスラーニング」が各34.0%(同2.7ポイント増)、28.3%(同1.1ポイント増)と、いずれも前年度より増えています。これらには重複もありますが、既に多くの大学で、座学だけではない授業が一般的になっていると思ってよいでしょう。

高校生は今から積極的な学びの姿勢を

こうした能動的な学習スタイルが、ますます広がっていくことは確実です。いま大学には、「三つの方針(3ポリ)改革」が義務付けられ、新年度からは公開が義務付けられたからです。

各大学は、まず、社会に責任を持って送り出す卒業生像(ディプロマ・ポリシー=DP)を定めます。そのうえで、そうした卒業生を実際に育てるための教育方針(カリキュラム・ポリシー=CP)を考え、4年間のカリキュラムと教育方法を計画します。そうなると当然、学生のうちから学んだ知識を社会で生かすことを意識させる教育方法を取り入れることが不可欠になります。昔のように、大学では純粋に学問を学び、学んだことを社会で応用する力は、会社などの研修で身に付ければよい……という考えは通用しません。

そうした学びの姿勢が求められるのは、大学に入ってからだけではありません。変わる4年間の教育にふさわしい入学生を選ぶのが、3ポリの最後の「アドミッション・ポリシー」(AP)だからです。3ポリ改革が実質化することに伴って、大学のALも、APに基づく入試改革も、連動して進んでいきます。次期学習指導要領では高校(2022<平成34>年度入学生から)などにもALの導入が求められますが、調査のように既に大学教育はどんどん変わっており、今から積極的な学習姿勢が必要なのです。

各大学の3つのポリシーと、それに基づいてどのような教育を行っているかは、大学ポートレートで検索することができます。これからは大学名や偏差値だけでなく、具体的にどのような教育が行われ、自分の力を伸ばしてくれるかどうかを見極めて、志望校を決めていく必要があるでしょう。

※私立大学・短期大学教育の現状(2016年度)
http://www.shigaku.go.jp/files/h28kyouikunogenjyou.pdf

※大学ポートレート(私学版)
http://up-j.shigaku.go.jp/

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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