バイトに追われる?大学生活 奨学金の返済「不安」で

アルバイトをする大学生が増加していることが、各種調査でわかりました。一方、奨学金を受ける者の割合は、逆に減少しています。
日本の奨学金のほとんどは、返済が必要な「貸与型」であるため、大学卒業後に返済できるかどうか、多くの学生が不安を抱いていることがうかがえます。

高校入学から大学卒業まで975万円が必要

政府系金融機関の日本政策金融公庫がまとめた2016(平成28)年度「教育費負担の実態調査」の結果によると、高校入学から大学卒業までにかかる入学・在学費用は、1人当たり平均975万円(前年度899万4,000円)で、前年度より75万6,000円も上昇しています。設置者の種類別に見ると、国公立大学が752万3,000円、私立大学文系が962万5,000円、同理系が1,147万1,000円となっています。

世帯年収に占める教育費の割合は平均16.1%(前年度17.8%)で、近年の景気回復傾向を受けて、やや低下しています。しかし、「年収200万円以上400万円未満」の世帯では36.6%(前年度36.8%)と高止まりしています。

教育費を捻出するためにしていることで最も多いのは「教育費以外の支出を削っている」の28.2%ですが、この3年間の推移を見ると、「子供がアルバイトをしている」(19.6%)、「残業時間やパートで働く時間を増やすようにしている」(9.8%)、「共働きを始めた」(9.6%)の増加が目立っており、家計の節約なども限界にきていることがうかがえます。

このような状況なら、奨学金を受ける子どもが増えることが予想されますが、実際には「奨学金を受けている」は2014(平成26)年度19.9%、15(同27)年度22.0%、16(同28)年度17.7%と、今回は減少に転じています。

5人に1人が深夜帯に就労、学業にも支障

同様の傾向は、全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)が実施した「学生生活実態調査」(2016<平成28>年)にも表れています。

アルバイトしている大学生は全体の71.9%に上り、データのある2008(平成20)年以降で最高となっています。一方、自宅生の「小遣い」、自宅外生の「仕送り」は減少しており、アルバイトが収入の重要な位置を占めるようになっています。

アルバイトの就労時間は週当たり平均12.5時間で、10時間以上15時間未満が18.4%、20時間以上も13.9%に上っている他、夜10時から朝5時までの深夜時間帯に働く者も20.7%います。アルバイトをしている学生は、していない学生よりも読書時間や勉強時間が短いなどという結果も出ており、学業に支障をきたしつつあるようです。

これに対して奨学金受給者は、下宿生の場合、2014(平成26)年度40.1%、15(同27)年度39.1%、16(同28)年度37.5%と年々減少しています。生活費補てんの方法は「アルバイトを増やす」が全体で50.7%(下宿生49.4%)で、「奨学金を申請する」は5.5%(同5.4%)のみでした。

なぜ大学生は、奨学金よりもアルバイトを選ぶのでしょうか。受給者の73.4%が、返済に不安を「感じている」と回答しています。卒業後に残る<借金>に不安を感じて、学業に支障が出てもアルバイトを増やすというのが、現在の大学生の実態のようです。返済不要の「給付型奨学金」の早急な拡充が望まれます。

※「教育費負担の実態調査結果」(2016年度)
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_h28.pdf

※第52回学生生活実態調査の概要報告
http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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