進む「18歳」大人化の検討、教育はどう対応する?

金田勝年法相は、少年法の保護対象年齢を、現行の20歳未満から18歳未満に引き下げるかどうかを、法制審議会に諮問しました。「18歳」をめぐっては、昨夏から選挙権を得て「有権者」の一員に加わることになりましたが、今回の諮問で、「大人」としての責任がますます重くなるかもしれません。教育は、どう対応すべきなのでしょうか。

民法は法案提出へ

法制審への諮問は、選挙権年齢を18歳に引き下げた改正公職選挙法の付則で、法律としての均衡を取るため、民法や少年法も検討することを求めていました。このうち民法に関しては、成年年齢を18歳に引き下げる法案提出の準備が行われています。今通常国会で成立すれば、早ければ2020(平成32)年度から施行され、クレジットカードの作成やスマートフォンの契約、ローン契約、商品の売買契約、労働契約なども、保護者の同意なしでできるようになります。

今回の少年法検討は、民法とセットではありますが、「成長過程にある若年者をいかに取り扱うべきかという大きな問題」(昨年12月の同省勉強会報告書)でもあります。法制審では、少年の改善更生、再犯防止なども検討することにしています。

民法にしても、たとえ法律が改正され、3年程度の周知期間があるといっても、何もしないまま、いきなり18歳に法的責任を負わせるというのも、酷な話です。もちろん、これまでも学校では「大人」になる準備として社会科や公民科などを勉強しているわけですが、昨今、大学生などが消費トラブルや「ブラックバイト」に巻き込まれるなどの問題を見ても、学習の効果が実際に発揮できているとは言えないのが現状でしょう。

文部科学省も、手をこまねいているわけではありません。次期学習指導要領を検討する中で、着々と手を打ってきました。それが、高校公民科における必履修科目「公共」の設置をはじめとした、主権者教育の充実です。

体系的な主権者教育、家庭の役割も重要

「公共」は、人が孤立して生きるのではなく、(1)政治的主体(2)経済的主体(3)法的主体(4)さまざまな情報の発信・受信主体……という「自立した主体」として国家・社会の形成に参画し、他者と協働する資質・能力を育成するのが目的です。さらに、教科横断的に資質・能力を育成するという指導要領改訂の全体的方針に伴って、家庭科や情報科、「総合的な探究の時間」(高校では「総合的な学習の時間」を改称)とも連携させることにしています。

主権者教育は、高校だけ充実させればよいというものではありません。改訂を提言した中教審答申でも、「小・中学校からの体系的な主権者教育の充実」を求めています。発達段階に応じて、徐々に法や決まりを理解させるとともに、判断力や課題解決力なども育まなければいけません。学級会などの特別活動や、道徳などとも関わる問題です。

さらに忘れてはならないのは、家庭などの役割です。子どもを「大人」にする第一義的責任は、教育基本法の規定をまつまでもなく、家庭にあることは言うまでもありません。18歳選挙権に関しても、学校で授業を受けた以上に、子どものころに親の投票について行ったことがあったり、親と一緒に住んだりしている人のほうが、投票した割合が高かったといいます。

子どもが18歳になるまでに「大人」にしてあげることは、家庭や学校を含めた社会全体の責任でもあるのです。

※「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」取りまとめ報告書
http://www.moj.go.jp/content/001210649.pdf

※高等学校学習指導要領における「公共」の改訂の方向性(中教審答申 別添資料)
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_3_1.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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