私立高校の授業料も更なる負担軽減が課題

もう私立高校の合否が出た中学3年生のお子さんも多いことでしょう。第1志望に合格したご家庭にとってはめでたいことですが、保護者の悩みは、授業料の高さかもしれません。そんななか、東京都は、私立高校授業料の実質無償化を検討しているといいます。私立高校の授業料などは、どうなっているのでしょうか。

授業料、じわじわと上がる

文部科学省の調査によると、私立高校等の生徒等納付金は2016(平成28)年度、全国平均で72万4,694円。前年度に比べて0.3%(2,394円)の微増にすぎませんが、2011(平成23)年度(70万8,202円)以降5年連続で、じわじわと上がっています。内訳は、授業料39万3,524円(前年度比2,946円増)、入学料16万2,122円(同240円減)、施設整備費等16万9,048円(同312円減)。近年は入学料や施設整備費等を抑える一方、授業料が徐々に上昇しており、40万円をうかがう勢いです。

少子化により生徒募集に苦慮するなか、むやみに納付金総額を上げられない一方で、質の高い教育を行うには経費が掛かるというジレンマに悩んだ末の結果と見られます。こうしたトレンドは、今後も続くことでしょう。

納付金額は、都道府県によっても大きく違います。最も低いのは愛媛県の47万642円で、50万円台が18道県ある一方、90万円台は福井県の99万7,242円を筆頭に、東京都と神奈川県の計3都県。80万円台も5府県あります。

公私間の入学定員は各都道府県で関係者が話し合って決められていますので、保護者の事情にかかわらず私立進学が当たり前の地域も少なくありません。高校は義務教育ではないとはいえ、経済格差も進むなか、負担増をこのまま放置していてよいわけではないでしょう。
ただ、この平均額も、全額を家計で負担しなければならないわけではありません。

国からは「就学支援金」

高校の授業料をめぐっては、民主連立政権時代の2010(平成22)年度から公立高校が無償化され、私立高校生には就学支援金が支給されました。自公政権に交代後の2014(平成26)年度からは「高等学校等就学支援金制度(新制度)」に一本化され、年収910万円という所得制限を付けたうえで、所得によって加算するなど一定額(年収590万円以上910万円未満では年額11万8,800円)が支給されています。ですから先の私立高校平均額も、国からの支援金分を差し引いた額が家庭の負担ということになります。

一方、大阪府では2010(平成22)年度から、私立高校も公立高校と同様の選択肢とすることを目指して、当時の橋下徹知事が独自の授業料支援制度を導入しています。府内在住者が府内の私立高校に子どもを通わせる場合、2016(平成28)年度以降は、年収590万円未満の世帯が無償、590万円以上800万円未満の世帯が20万円負担などとなっています(子どもの人数や高校の授業料設定によっても変動)。

高校生活に掛かる費用は、学校への納付金だけではありません。修学旅行ひとつ取っても、公立高校でさえ海外を旅行先とすることが珍しくなくなっています。次世代を担う子どもたちに手厚い教育を行うにも、公的な支援を手厚くすることが求められます。

※2016年度私立高等学校等授業料等の調査結果
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1380903.htm

※高等学校等就学支援金制度(新制度)について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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