体罰の件数は減ったけれど…本当に大丈夫?

学校での体罰は、学校教育法で明確に禁止されています。しかし今も、体罰が根絶されたとは言えないのが現実です。文部科学省の調査では、公立学校で処分や訓告を受けた件数が減ったというのですが、本当に大丈夫なのでしょうか。

生徒自殺事件の直後に急増してから

最新の2015(平成27)年度調査結果を見ると、体罰により処分等を受けたのは721件で、前年度に比べ231件減となりました。この数字だけ見ると、結構なことじゃないか……と思えますが、これまでの経緯を振り返ってみると、少し心配もあります。

というのも、その10年前に当たる2005(平成17)年度は446件で、その後は400件を割るなど減少傾向にあったものが、11(同23)年度に再び404件となった後、12(同24)年度は一気に2,253件となっていたからです。

2012(平成24)年度といえば、12月に大阪市立高校の生徒が、運動部活動での顧問教諭による体罰を苦にして自殺した事件が起こった年度です。翌月に文科省は、各都道府県教育委員会等に改めて調査を行うよう通知しました。それが、ささいな体罰までも把握されるきっかけとなったのです。実際、2,253件のうち、戒告や減給などの懲戒処分を受けた者は176件にすぎず、2,077件と大部分は訓告等でした。

事件を受けて、2013(平成25)年度の体罰による処分等は3,953件(懲戒処分410件、訓告等3,543件)にまで増えました。これも、2012(平成24)年度調査で判明した事案の処分が行われたためだと、文科省は見ていました。実際、2014(平成26)年度は952件(各234件、718件)と、4分の1以下に急減。そのうえでの2015(平成27)年度結果です。721件の内訳は、懲戒処分等174件、訓告等547件でした。

721件という数字は、2011(平成23)年度までの400件台と比べても200~300件ほど上回っています。懲戒処分等の件数は2011(平成23)年度までと同水準ですから、増加分の多くは訓告等によるものです。ささいな体罰も見逃さなくなった結果だ……と思いたいところです。

気になる部活での「連鎖」

そうは言っても、体罰は本来、ゼロであるべきです。
学校教育法は、1947(昭和22)年の制定以来、「体罰を加えることはできない」(11条)と、明確に禁止しています。ただ、保護者の方々も学校時代を振り返って、体罰がまったくなかったという人は少ないのではないでしょうか。世間にも、児童生徒が悪いことをしたらゲンコツや平手打ちぐらいは構わない……という風潮があったことは確かです。

大阪市立高校の事件にも見られるとおり、運動部活動で体罰が横行していることも問題です。2015(平成27)年度の調査結果を見ても、体罰が発生した場面は「部活動」が156件で、「授業中」の256件に次ぐ多さとなっています。

体罰を起こした教員の年代も気になります。721件のうちの割合は、20代が11.9%、30代が27.7%、40代が23.0%、50代以上が37.3%となっています。これを教員全体の年齢構成(20代13.6%、30代21.5%、40代26.7%、50代38.2%=2013<平成25>年度学校教員統計調査)と比べると、30・40代で多いことがわかります。児童生徒だった時代に体罰を受けた世代が、なかなか「体罰の連鎖」から抜けられないとしたら、まだまだ意識を改めてもらう余地がありそうです。

※公立学校教職員の人事行政の状況調査について(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1318889.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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