国立大学で広がる<文理融合学部>

九州大学が2018(平成30)年度から「共創学部」を新設するというニュースが、注目を集めています。人文社会系と理工系の学問を融合した教育がポイントとなっていますが、「文理融合」は九州大学だけではありません。2017(平成29)年4月から新潟大学は「創生学部」をスタートさせるなど、他の国立大学でも、文理融合は、国立大学改革のキーワードの一つとなりそうです。

2017年度から相次いで創設

九州大学の計画では、共創学部(入学定員105人)は、従来の手法では解決が困難な問題に対して、文化や宗教などの多様性を理解しながら、分野横断的な発想をもって解決手段を見つけることのできる人材を育成するため、既存の学問分野を横断した「文系マインド・理系マインドや多様な方法論」を身に付けることを狙いとしています。文理融合を正面から打ち出した学部といえるでしょう。

新潟大学では、「課題発見・課題解決能力」の育成を目指して、人文社会系と理工系の他学部が提供する22科目を選択して学ぶことができる、文理融合の教育を柱に掲げています。同様に2017(平成29)年度新設の学部を見ると、横浜国立大学の「都市科学部」、滋賀大学の「データサイエンス学部」、島根大学の「人間科学部」なども、社会科学系の分野に自然科学系の学問を取り入れたり、あるいは理工系分野に社会科学系の学問を取り入れたりするなどで、文理融合を図っています。この他、2016(平成28)年度からスタートした宮崎大学の「地域資源創成学部」でも、地域のリーダー育成のカリキュラムの中に「生物学」「食品学」「作物栽培学」などの科目を取り入れています。

背景には人文社会系再編の要請

なぜ国立大学で、文理融合の教育が注目を集めつつあるのでしょうか。その理由の一つは、社会のグローバル化やICT(情報通信技術)の急速な進歩により、従来の学問分野で区切られた教育だけでは、これからの社会をリードしていく人材を育てられなくなっているからです。たとえば、人工知能(AI)の進歩には「ビッグデータ」の活用が不可欠ですが、その分析には人文社会科学の視点も求められています。

もう一つの理由は、大学の生き残り戦略と、人文社会系学部の再編という、国立大学をめぐる環境の変化です。2004(平成16)年の国立大学の法人化後、各大学は6年ごとに中期計画を策定することになっており、現在は第3期中期計画(2016~21<同28~33>年度)が始まっています。この中で各国立大学は、それぞれの特色を打ち出すことを強く求められています。

また、社会のニーズに対応できていないとして、文部科学省は、人文社会系学部の再編を要請しています。これについて大学関係者は強く反発していますが、社会のニーズに応えなければならないのも確かです。このため従来の人文社会系の学部を文理融合という形で再編しようとする試みが進められつつあるのです。
これからの受験生にとって、「文理融合」は新たな進路選択の一つになるかもしれません。

※九州大学「共創学部」
http://www.kyushu-u.ac.jp/ja/faculty/undergraduate/kyosogakubu

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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