通学路、まだまだ危険がいっぱい

横浜市などで、登下校中の子どもたちの列に自動車が突っ込み、多数の死傷者が出る事件が相次いだことを受けて、文部科学省・国土交通省・警察庁は合同で、通学路の安全確保を、全国の自治体や教育委員会、警察などに通知しました。安全対策が実施されていない通学路の危険箇所が、全国で約5,500か所も残されている他、危険箇所以外にも問題があるなど、新たな課題も浮かび上がっています。

対策未実施、全国で5,552か所も

2016(平成28)年10月に横浜市港南区の市道で児童1人が死亡、6人が重軽傷を負った他、11月には千葉県八街市でも児童4人が重軽傷を負うなどの事故が相次いでいます。このため3省庁は、通知を出しました。同様の通知は、2012(平成24)年4月に、京都府亀岡市で登校中の小学生ら10人が死傷する事故が起きた際に出されたことがあり、当時、全国の通学路で安全調査が行われ、全国で約7万か所以上の危険箇所があることがわかっていました。

今回の通知と同時に公表された調査によると、全国7万4,483か所の危険箇所のうち、2016(平成28)年3月末までに対策が講じられたのは6万8,931か所で、残り5,552か所がいまだに安全対策が取られていませんでした。

内訳(所管が重なる重複箇所あり)を見ると、教育委員会や学校による対策済みは2万9,588か所のうち2万9,410か所、市町村など道路管理者による対策済みは4万5,060か所のうち4万793か所、警察による対策済みは1万9,715か所のうち1万9,479か所となっています。

通学路の見守りなど教委や学校の取り組み、信号や横断歩道設置など警察による取り組みに比べて、市町村など道路管理者による安全対策の遅れは、4,267件にも上っています。歩道の整備や路肩の拡幅など、地権者との話し合いに時間が掛かるケースが多いことによるものと思われます。

変化に合わせた見直しも必要

新たな課題も浮き彫りになりました。というのも、横浜市と八街市の事故現場は、危険箇所のリストに入っていなかったからです。このため文科省などは、道路交通環境の変化に応じた通学路の継続的な安全確保を要請しました。

各市町村は、通学路交通安全プログラムを策定し、安全対策の基本方針を公表することになっています。ところが、調査によると、全国1,741市町村のうち1,529市町村がプログラムを策定しているものの、それを公表しているのは860市町村のみで、残り669市町村は公表していませんでした。プログラムを公開していなければ、定期的な見直しが難しくなる可能性があります。

子どもたちの通学路の中で残された危険箇所について、早急に安全対策を完了すること、さらに交通状況の変化などに対応するため、市町村などによる通学路交通安全プログラムの策定とその定期的な見直し、通学路の安全に関する日常的な点検の実施などが、今後の大きな課題といえそうです。

※通学路の交通安全の確保の徹底について(通知)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1379895.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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