普段の授業にICTを 話し合いも自然と誘発

次期学習指導要領(2020<平成32>年度の小学校から順次、全面実施)では、幅広い資質・能力を身に付けさせるための「アクティブ・ラーニング」(AL)を実施することが目玉になっています。そんなALの大きな助けとなるのが、タブレットやデジタル教科書をはじめとするICT(情報通信技術)です。しかしICT機器の整備には、自治体によって大きな格差があるのも事実です。

将来に必要な体験を学校のうちに

デジタル教科書教材協議会(DiTT)は11月、「ICT活用と授業づくり~新学習指導要領を見据えて~」と題するシンポジウムを開催しました。先進的な取り組みをしている小中学校4校の先生が口々に強調したのは、ICT機器が子どもたちの活発な学びを自然に引き出すこと、そして、そのためには教室で使いたい時に気軽に使えるような環境づくりが必要だということです。

「実はパソコンが苦手」と打ち明ける東京都小平市立小平第七小学校の谷川航・主任教諭は、国語の授業で1人に1台、デジタル教科書入りのiPadを持たせたところ、子どもたちは、教科書の文章に思い思いの線をきれいに引いたり書き込みをしたりするだけでなく、お互いに見せ合い、話し合う姿が自然発生的に生まれていると言います。書き込みが簡単なうえに、消すのも自在なので、子どもたちの思考を途切れさせることなく、授業が進められると言います。

ALは、活動はもとより子どもの「頭の中」をアクティブにすることで、「主体的・対話的で深い学び」を実現することを目指しています。自分のペースで、友達と意見交換しながら、試行錯誤できるICT機器の活用が、そんな学びを支えてくれるのです。

それでも「今までどおり、黒板と紙の教科書でいいじゃないか」と思う人がいるかもしれません。これに対して、千葉県松戸市立第二中学校の高瀬浩之教諭は、将来、コンピューターが得意な仕事はコンピューターに任せて、人間はコンピューターができないことをやるのが当然の時代に生きる子どもたちに「学校にいる間にツールを使えるようにしよう」と提案しました。そうしないと、社会に出てから困るのは、子どもたち自身だからです。

使いたい時いつでも使える「道具」に

しかし文部科学省によると、コンピューター1台当たりの児童生徒数は、0.3人から23.7人までなど、自治体によってICT機器の整備に大きな格差が開いているのが現状です。これには、予算をつける首長部局や議会の理解が得られないだけでなく、学校にも「なくても授業はできる」と思う先生が少なくないことが背景にあることは否定できません。

さいたま市立七里小学校では、まず先生が苦手意識やストレスを感じず、一人でも簡単に使えるよう工夫したところ、授業でタブレット端末が使われ、ALの効果も上がってきたと、山口真弓教諭が報告。千葉県柏市立柏第二小学校の西田光昭校長は、授業にICT機器を「日常化・一般化」するためにも、使いたい時にいつでも使える「道具」にすることを提案しました。

整備が遅れている自治体では、もう12月議会は終わるかもしれませんが、次年度予算を審議する3月議会に向けて、ぜひ積極的な対応を取ってもらいたいものです。

※DiTTシンポ「ICT活用と授業づくり~新学習指導要領を見据えて~」
http://ditt.jp/news/?id=2220

※2015年度「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」市区町村別 学校における主なICT環境の整備状況
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2016/10/13/1376818_3.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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