深刻化する不登校、早期の総合対策が必要

文部科学省の2015(平成27)年度調査によると、学校を年間30日以上欠席した「不登校」の児童生徒が、小中学校とも3年連続で増えました。欠席が増えてくる前に、総合的な取り組みが求められます。

不安や無気力が増加

近年の不登校児童生徒数を見ると、2012(平成24)年度までは減少傾向にありましたが、13(同25)年度には上昇に転じ、15(同27)年度は小学校で2万7,581人(前年度比1,717人増)、中学校で9万8,428人(同1,395人増)の、計12万6,009人(同3,112人増)となりました。

児童生徒数全体は減っていますから、不登校の割合も当然上がります。小学生では2012(平成24)年度0.31%→13(同25)年度0.36%→14(同26)年度0.39%→15(同27)年度0.42%と推移しており、0.4%台となったのは、集計方法を年間50日から30日に変更した1991(同3)年度以来、初めてです。中学生では各2.56%→2.69%→2.76%→2.83%となっており、どのクラスにも依然として1人いる計算になります。

不登校児童生徒のうち、90日以上の欠席が、小学生で45.0%、中学生で60.9%。出席日数ゼロの児童生徒は各2.5%、3.8%となっており、長期化が心配されます。

不登校の要因を見ると、「不安」の傾向がある児童生徒が30.6%、「無気力」傾向が30.2%となっており、聞き方が違う前年度(「不安など情緒的混乱」29.8%、「無気力」25.9%)と単純な比較はできませんが、増加しているというのが文科省の見方です。不安傾向のうち、「家庭に係る状況」によるものが33.6%、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が27.9%など、無気力傾向のうち、「家庭に係る状況」が44.1%、「学業の不振」が29.0%などとなっています。

事後対応だけでなく「学校づくり」で

文科省も、手をこまねいているわけではありません。深刻化する不登校に対応するため、有識者による協力者会議は7月末、最終報告をまとめ、カルテのような「児童生徒理解・教育支援シート」を活用して組織的・計画的な支援を行うこと、単に学校復帰のみを目標にするのではなく、児童生徒の社会的自立を目指すべきことを提言しています。

9月に初等中等教育局長名で出した通知では、不登校が悪いという「根強い偏見」を取り払い、学校・家庭・社会が共感的理解と受容の姿勢を持つことが重要だと強調。一方で、不登校になってからの事後的な取り組みだけでなく、児童生徒が不登校にならない「魅力ある学校づくり」を目指すことを求めています。

不登校が増加傾向に転じたのが、現行の学習指導要領が全面実施に入り、授業時数が増加したころ(小学校は2011<平成23>年度、中学校は12<同24>年度)であるのも気になります。即断はできませんが、学習内容の増加が児童生徒にプレッシャーを加え、先生たちも授業準備などに忙しくて、児童生徒一人ひとりに目が届かなくなっていたとしたら、問題です。

学習指導をするのにも、学級内の人間関係が安定していなければ、効果は上がりません。逆に、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)などを通じて、学力だけでなく人間関係にもよい影響を与えることは可能です。家庭や地域社会との連携はもとより、まさに総合的な「学校づくり」を進めることが、不登校対策でもカギになるでしょう。

※平成27年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(速報値)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/10/__icsFiles/afieldfile/2016/10/27/1378692_001.pdf

※不登校児童生徒への支援に関する最終報告
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/108/houkoku/1374848.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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