都市部の大規模私大で定員増が続出

文部科学省は2017(平成29)年度の私立大学の定員増について、第1回分(6月末認可)として合計7,354人増となる学部・学科の定員変更を認可しました。これは前年度同期の約2.8倍にも及ぶ定員増となっている他、大規模私立大学の定員増が多くを占めているのが特徴です。少子化による18歳人口の減少の中で、なぜ一部の私立大学は、大きな定員増に踏み切ったのでしょうか。

44大学で7,354人増、最近では異例

私立大学の収容定員の変更を伴う学部・学科の新設・再編は、前年度の6月末と8月末の2回に分けて認可されます。今回は2017(平成29)年度の定員変更の6月末認可分で、44大学で合計7,354人の定員増が認められました。前年同期の定員増が23大学・2,605人だった他、最近の私立大学の定員増は年間2,000~4,000人程度で推移していることから見ても、今回の定員増が極めて異例であることがうかがえます。定員増が多い私立大学は、近畿大学920人増、東洋大学569人増、立命館大学472人増、立教大学454人増、川崎医療福祉大学330人増、東京理科大学325人増、青山学院大学318人増などとなっています。

定員増の多い大学を見ると、都市部の大学、特に収容定員8,000人以上の大規模大学の定員増が目立ちます。つまり、東京や近畿など大都市圏の有名私立大学が大幅な定員増に踏み切っているのが、今回のポイントの一つだといえます。

しかし最近は、大学生の就職内定率の上昇などで私立大学の受験者は増えているものの、全体的に見れば、少子化による18歳人口の減少や大学進学率の頭打ちなどで、これから大学進学者数は大きく減少することが予想されています。にもかかわらず、なぜ一部の私立大学は定員増を行ったのでしょう。

入学者数の抑制を前に「駆け込み申請」

それは、政府が掲げた「地方創生」に連動した大都市部の大学の入学者数抑制政策が背景にあるようです。私立大学には教育の質を保つため、入学定員を大幅に超過して学生を採用した場合、私学助成金を交付しなかったり、次年度以降の定員増を認めなかったりするなどのペナルティーが課せられることになっています。文科省は、2016(平成28)年度から大規模大学を中心に入学定員超過率の基準を段階的に厳格化しており、18(同30)年度申請分から本格的に規制を強化することにしています。大都市部の私立大学の入学者数を抑制して学生の地方流出を防ぎ、地方大学を活性化させて「地方創生」を図るという狙いです。

このため一部の私立大学では、入学定員超過の厳格化が本格的に実施される前に、学部・学科の入学定員自体を増やしておこうという考えから、2017(平成29)年度の大幅な入学定員増という「駆け込み申請」に走ったものと見られます。
これに対して、大規模私立大学の定員増は、大学の寡占化に拍車を掛けると懸念する声がある一方、一時的な定員増は織り込み済みで、入学者抑制が本格的に実施されれば地方大学に学生が流れていくようになる……という見方もあるようです。

文科省の狙いどおり、地方大学の活性化につながるのかどうか、今後の動向が注目されるところですが、一部の有名私立大学の定員増は大学受験地図にも少なからず影響を及ぼしそうです。

  • ※平成29年度からの私立大学等の収容定員の増加に係る学則変更予定一覧
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/1373685.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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