2020年度からの小学校英語 増加分は朝や土曜日、夏・冬休みに!?

小学校の新5年生は、必修の「外国語活動」が始まったことと思います。文部科学省は2020(平成32)年度から、これを中学年(3・4年生)に前倒しするとともに、高学年は教科に格上げすることにしています。そこで問題となるのは、必要な授業時間数の増加分を、どうするかです。次の学習指導要領を検討している中央教育審議会の部会は、10~15分の「短時間学習」(モジュール学習・帯学習)を導入したり、土曜日や夏・冬休み、学年末などに集中して実施したりする案をまとめました。なぜ、こんな案になったのでしょうか。

  • ※中教審 小学校部会
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/074/siryo/1368720.htm

現在の外国語活動は、「聞く」「話す」の音声が中心で、年間35時間を標準としています。週当たり1コマ分に当たります。文科省は、グローバル化に対応した「使える英語」を目指して、小学校から教科化するなどの方針を、既に決めています。しかし、小学校高学年で「読む」「書く」を含めた4技能をバランスよく実施するには、1コマ分増の年間70時間が必要になるといいます。中学年でも、新たに週1コマ分を割かなければなりません。

現在、指導要領に示された標準授業時間数をこなすため、ほとんどの学校では、週28コマの授業が行われています。コマ数を増やすには、5時間授業の日を6時間までやればよいわけですが、それでは児童会活動やクラブ活動、補充指導などの時間がなくなってしまいます。中教審でも「週28コマが限度」としています。それなら英語以外の授業時間数を減らせばよいわけですが、昨年8月の「論点整理」では、各教科などの学習内容は減らさないと早々に宣言しており、ましてやコマ数の削減は難しそうです。

そこで出てきたのが、冒頭のような案です。ただ、全国一律の実施を求めるのではなく、45分プラス15分で60分授業にするなど、地域や学校の実情に応じて実施してもらうことにしました。しかし、これまで朝学習や朝読書の取り組みをしている学校は、その時間を英語に譲らなければならなくなるかもしれません。それでも高学年は1コマ分が確保されているので、1コマの授業プラス会話などの習熟のための短時間学習……といった活用方法が可能ですが、そもそも中学年は、週1コマの確保すら困難です。

もちろん現在でも、特例の活用やさまざまな工夫などで、小学校低学年から外国語活動を実施したり、標準時間数を上回る授業を実施したりしている小学校は少なくありません。そのため、どの学校でも時間数を生み出すために苦労するとは限りません。

忘れてはいけないのは、どんな授業形態であれ、将来に必要な英語によるコミュニケーション能力の素地を、子どもたちに着実に付けさせ、中学校以降の学習につなげることです。ましてや土曜日や夏・冬休みなどの活用となれば、子どもへの負担も心配です。保護者としても、学校側の考え方をじっくり聞き、納得したうえで、協力していく必要が出てきそうです。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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