いつでも、どこでも? 高校基礎学力テスト

高大接続改革の一環として検討されてきた「高等学校基礎学力テスト」(仮称)の構想が、文部科学省の有識者会議で固まってきました。ストックされた数多くの問題からランダムに出題することで、利用する高校が、都合のよい時期に実施することを可能にしようとしています。ただ、計画どおり2019(平成31)年度から導入するには、まだまだ技術的なハードルが高そうです。

基礎学力テストは、高校生自身が身に付けている学力の状況を把握し、学習の改善と意欲の向上につなげるとともに、高校には授業の改善に、教育委員会など学校の設置者には教育施策の見直しに、それぞれ役立ててもらうことを目的にしています。希望参加型という以外は、小中学校で行われている全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)と、ほぼ同じです。

基礎学力テストをめぐっては、創設を提言した2014(平成26)年12月の中央教育審議会答申の段階で、コンピューターによる出題(CBT方式)とともに、夏から秋の年2回程度、2年生か3年生が希望に応じて受検できるようにする案を示しつつも、学校現場の意見を聴きながら決めるとしていました。実際に意見を聴いてみると、現在でも学校行事が目白押しで、全国一斉・同一時刻で行うテストを年2回も実施するのは大変だというのが、高校側の大勢でした。そこで大きく浮上してきたのが、CBT方式です。

2月の「高大接続システム改革会議」に示された案によると、新作問題はもとより、高校の定期テスト、都道府県教委や校長会の実力テスト、高校入試などの問題を多数提供してもらい、「アイテムバンク」に蓄積。そこから選んだ問題を、CD-RやUSBメモリーで提供し、各高校でパソコンを使って実施してもらいます(インハウス方式)。小中の全国学力テストと同様、各学校や生徒には採点や分析結果が返されます。

  • ※「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の更なる具体化の進め方
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2016/02/17/1367231_02_2.pdf

受ける問題が違っても、同じレベルの学力が測れるようにすることを、「IRT(項目反応理論)方式」といいます。それには、集めた問題をランダムに出題しても妥当なものになるよう、「テスト理論」に基づいた試験問題の精査が必要になります。文科省では、2017(平成29)年度からのプレテスト(模擬試験)を経て、本格実施に移りたい考えです。

CBT-IRT方式が実現できれば、各高校の都合に合わせて、いつでも受検することが可能になります。パソコン環境の整備は必要ですが、専用回線で結んだタブレットを貸し出す「モバイル方式」も検討。受検対象も1・2年生を前提にすることにしました。

大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)に関しては、当面、年複数回実施が見送られました。しかし、基礎学力テストでCBT-IRT方式が実現できれば、学力評価テストでも、複数回実施どころか「いつでも、どこでも大学入試」が現実味を帯びてくるかもしれません。

ただ、CBT-IRT方式は、諸外国の他、国内では医学部生が臨床実習に入る前の共用試験などで実例があるものの、数十万人規模のテストで本当に実現できるかどうかは不透明です。文科省では4月以降、本格的な研究開発に入る予定で、その成果が待たれます。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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