東大の推薦入試 「ハードル高すぎ」の意味

国公立大学の前期日程試験の合格発表が始まっています。2016(平成28)年度入試をめぐっては、東京大学が「推薦入試」を、京都大学が「特色入試」を導入したことが注目されました。このうち東大の推薦入試には、100人程度の募集に対して、出願者は173人、合格者は77人にとどまりました。推薦条件として科学オリンピックの成績優秀者などを例示したことが、「ハードルが高すぎた」という見方も、予備校関係者などの間にあるようです。改めて、こうした入試の意義を考えてみましょう。

報道によると、東大推薦合格者のうち女子は29人で、3人に1人を占めました。一般入試での男女比は8対2だといいますから、各高校の推薦人数を男女各1人としたことが、優秀な女子学生の獲得につながったことがわかります。また、半数以上が関東以外の高校出身者で、これも一般入試の4割を上回ったといいます。

入試方法の多様化は、受験生の側からいえば「不公平」だと思われるかもしれません。しかし、世界の大学と肩を並べようという東大のような研究大学の場合、教育・研究を高度なものにするためには、学生があまりにも均質すぎては、多様な価値観のぶつかり合いによる新しい価値の創造は期待できません。特に東大の場合、一部の高校や中高一貫校の出身者の比率が多くなる他、近年では保護者の世帯年収も高額に偏る傾向があります。「公平」な入試を重視していては、今後求められる学生の多様性が確保できないというわけです。

そこで、推薦入学の募集要項では、アドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)として、「学部学生の多様性を促進し、それによって学部教育の更なる活性化を図ること」を推薦入試の主眼に置き、「高等学校等の生徒の潜在的多様性を掘り起こす」としています。結果を見ると、たとえ少数でも、推薦入試の狙いは達成できたと言ってよいでしょう。

重要なのは、こうした考えは東大にとどまらないということです。
文部科学省が進める「高大接続改革」をめぐっては、センター試験の後継テストである「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)の制度設計が、なかなか当初の想定どおりにうまくいっていないようです。しかし、高校教育・大学教育・大学入学者選抜を一体で改革するという高大接続改革の理念を捨てたわけではありません。とりわけ各大学の個別選抜に関しては、昨年9月の高大接続システム改革会議「中間まとめ」でも、多面的・総合的評価により入学者を選抜するよう引き続き求めた他、専門高校出身者や帰国生徒、特別な支援を必要とする者、中退者など「多様な背景を持つ受検者の選抜」も提言しています。

主な入学層である18歳人口が減少するなか、国立に限らず、公私立でも、大学の生き残りをかけて、教育の活性化策に乗り出すことでしょう。入学者には、合格がゴールではなく、入学後、多様な学生と積極的に交流することで、自分の能力を高めようと努力することが求められます。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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