新テスト、なぜ次々と軌道修正?

大学入試センター試験の後継テストとなる「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)について、1年に複数回を実施しようという当初の方針が、当面見送られることになりました。2020(平成32)年度から創設予定の同テストは、現行教育課程下(23<同35>年度まで)と、次期教育課程下(24<同36>年度から)の<2段構え>で行うことも、既に固まっています。なぜ、次々と軌道修正されているのでしょうか。

  • ※高大接続システム改革会議(第10回)配布資料
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/shiryo/1366526.htm

新テスト、なぜ次々と軌道修正?


2014(平成26)年12月の中央教育審議会「高大接続改革」答申では、知識の暗記・再生に偏りがちだった従来の「大学入試」を改め、思考力・判断力・表現力や、主体性・多様性・協働性を含めた「真の学力」を評価して入学者を選抜してもらおうという方向性を打ち出しました。学力評価テストについても、(1)思考力・判断力・表現力を中心に評価する(2)教科型だけでなく、合教科・科目型の問題も組み合わせて出題する(3)年複数回実施する(4)1点刻みではなく、段階別で成績を出す(5)英語は「書く」「話す」も含めた4技能を出題する……などとしていました。

ところが、答申の具体化を検討していた「高大接続システム改革会議」は、2015(平成27)年9月の中間まとめで、▽出題は教科・科目とし、次期指導要領では数学と理科を合わせた「数理探究」(仮称)を出題する▽多肢選択式(マークシート方式)と別に「記述式問題」を、現行課程では短文で、次期課程からは文字数を多くして出題する……など、答申の構想とは若干違った案をまとめました。その後も会議では、記述式は当面、国語と数学に限るといった修正を図っています。

  • ※高大接続システム改革会議「中間まとめ」
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/09/15/1362096_01_2_1

複数回実施を見送ったのは、記述式試験の実施から採点まで20~60日掛かる(課す文字数によって異なる)ことが明らかになったためです。採点期間を考慮して、記述式試験を多肢選択式試験より前の日程で行う場合、そのセットを年2回行うのは困難です。1月末の同会議に出された「論点メモ(案)」では、多肢選択式と記述式を別日程で行えば「複数回実施の議論の狙いが相当程度実現する」という理由付けもしています。

なぜ、こうも<後退>の連続なのかというと、中教審の段階から、必ずしも新テストの技術的な見通しが立っていなかったからです。「とにかくやってみよう」(当時の安西祐一郎・中教審会長=現「システム会議」座長)ということで、システム会議の下にワーキンググループを設け、ようやく検討に着手したのが実情だったようです。その結果、技術的困難さが次々と明らかになってきたわけです。

しかも学力評価テストは、その1年前(2019<平成31>年度)に創設する、高校版・全国学力テストである「高等学校基礎学力テスト」(仮称)の試行・実施状況も見ながら、検討していこうとしています。基礎学力テストが技術的な問題でつまずいたら、学力評価テストも更に後退を余儀なくされる可能性があります。

ただ、2021(平成33)年度入学者選抜(20<同32>年度の高校3年生時に学力評価テストを受験)から多様な学力を測るというスケジュールに、今のところ変更はありません。これからの受験生は、新テストの形式に右往左往せず、授業での主体的・協働的学びを通じて「真の学力」をつけるべく努力する必要があることを、忘れてはいけません。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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