入試改革で新課程の高校科目を先取り!?‐渡辺敦司‐

入試の見直しをはじめとした「高大接続改革」で、新設する2つのテストを、現行課程と次期課程の「2段構え」で導入していこうという流れになっていることは、以前の記事でお伝えしました。今の小学3年生(2022<平成34>年度の高校1年生)からが対象となる次期課程をめぐっては、新テストにも対応する新設科目などの具体的検討が始まっています。新テストの出題科目がどうなるのか、改めて見てみましょう。

大学入試センター試験の後継である「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に関して、昨年12月の中央教育審議会答申(外部のPDFにリンク)は、科目型だけでなく「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題するとしていました。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のB問題(主に活用)のように、幅広い思考力・判断力・表現力を問う問題を出題したい考えからでした。しかし、答申を受けて新テストなどの具体化を検討する文部科学省の「高大接続システム改革会議」が9月に公表した「中間まとめ(外部のPDFにリンク)」からは、「合教科・科目型」「総合型」という文言が消えています。あくまで高校で学ぶ科目をもとに出題をしようというわけです。

ただ、教科・科目を超えた思考力・判断力・表現力を問いたいという発想を捨てたわけではなさそうです。その典型が、新課程での新設科目として検討されている「数理探究(仮称)<外部のPDFにリンク>」です。従来の数学と理科を統合して、より高度な思考力・判断力・表現力を育成することを目指しています。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の取り組みを参考にするといいますから、単なる座学では済まず、実験や調査、討論、発表など、まさに次期学習指導要領で求められるアクティブ・ラーニング(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)が不可欠な科目だといえそうです。

数理探究は選択科目として開設するとしており、すべての生徒が履修するわけではありません。しかし難関大学ほど、理数系の高い思考力・判断力・表現力を持った学生を欲しがるはずですから、学力評価テストでは、少なくない大学が受験を求めてくることは間違いないでしょう。事によると文系学部でも、文理融合の資質・能力を持った学生が欲しいと考えて、科目指定する大学があるかもしれません。他の教科・科目でも、地理歴史の「歴史総合」「地理総合」、公民の「公共」(いずれも仮称)のように、従来の科目にとどまらない思考力・判断力・表現力が問われることになります。

さらに注意しなければならないのは、「中間まとめ」で、現行課程でも「次期学習指導要領の改訂に係る議論の方向性を勘案しつつ」思考力・判断力・表現力を評価したいとされていることです。現行課程でも思考力・判断力・表現力の育成は行われていますから、2020(平成32)年度から始まる学力評価テストでは、あくまで高校の科目に従いながらも、実際の出題では、次期課程で問われるような資質・能力を意識した問題が出るかもしれないのです。知識を覚えるだけにとどまらない勉強の仕方が、今後ますます求められることでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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