学校では今 【第25回】「対話の力」を伸ばそう-小泉和義-

冬休みも近くなりました。お正月は家族で過ごしたり、おじいちゃん・おばあちゃんや親戚の方々と一緒に過ごしたりするかたも多くいらっしゃると思います。お子さんがさまざまな人とコミュニケーションをとるよい機会ですね。そこで今回は、この「コミュニケーション」の中で大切だと思うポイントを私なりに整理してお話ししたいと思います。



3種類のコミュニケーション

知り合いの大学の先生から「コミュニケーションには3種類ある」というお話を聞きました。まずはそれをお伝えします。

ひとつは「井戸端会議」
仲のよいご近所のかた同士で、日常的なことを思いつくままに話し、周囲はその話につなげて類似した話題を提供したり、あるいは、別の話題を提供したりしながら、会話を続けていくスタイルです。「井戸端会議」で新しい発見や問題解決をすることはあまりないですが、周囲に共感し、人間関係を円滑にする効果があると思います。

次に「議論」
ひとつのテーマや課題を解決するために、参加者それぞれが、それぞれの立場や主張を持ち、自分の主張が正しいことを根拠をもとに論じ合うスタイルです。その中のひとつのスタイルが「ディベート」です。ひとつのテーマに対し「賛成派」と「反対派」に分かれて議論し合い、相手を論理で打ち負かすことを目的として行われます。多様な根拠をもとに、論理的に自分の主張ができると、相手を論理的に説得することができます。

最後に「対話」
ひとつのテーマや課題を解決するための話し合いをするという点では「議論」と同様ですが、対話の場合は、相手の主張をしっかりと理解したうえで、自分の主張と相手の主張をふまえた、お互いにとっての最適解を見つけ出すことを目的としています。そのため、対話の前に抱いていた自分の主張が、対話のあとに変化することもあります。



価値観の異なる人とどう関わるか

3種類のコミュニケーションをご紹介しましたが、どれも大切です。そのうえで、これからの社会でより必要となるのは「対話」の力だと思います。少子高齢化が進むこれからの日本では、外国人と一緒に仕事をすることは当たり前になります。育ってきた環境も価値観も異なる人々と、ひとつの課題を解決する作業は、おそらくとても困難でしょう。だからこそ、「対話の力」が重要になるのです。

第23回「『正解』ではなく『納得解』 家庭でできるアクティブ・ラーニングのススメ」で、アクティブ・ラーニングのことを書きましたが、学校現場でも、「対話」を重視したアクティブ・ラーニングの授業が少しずつ広がっています。

たとえば、「給食の食べ方」を決める場面をイメージしてみましょう。インド出身の人がいたら、素手で食べることもあるかもしれませんし、イスラム教徒の人であれば豚肉を食べないなど、その国やその文化の中での慣習や常識があります。それぞれ別の価値観を持つ人同士で皆が納得する解決策を出すのは簡単ではありません。相手はいったいどんな価値観を持って、何を目的として主張しているのかをしっかり聞く。自分も、どんな価値観を持って何を目的として主張しているのかをしっかり伝える。そのうえで、お互いが納得できる新しい解決策をそれぞれが考え抜いて見つけ出していくことが必要になります。

これからの社会は、このような、正解のない課題をどう解決するかを、それぞれの立場を踏まえながら、それを越えて考えていかなくてはなりません。その時に必要なコミュニケーションのスタイルが「対話」なのです。

お正月、親戚が集まったら、「お正月を、親戚みんなが楽しめるものにするにはどうしたらよいか」をテーマに、対話をしてみてはいかがでしょうか?
もちろん、大人も子どもも一緒に、です。

プロフィール


小泉和義

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

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