「がんばる」と言う口だけの子どもの実行力を高めるには[やる気を引き出すコーチング] 

「テストが終わったあと、結果を踏まえて、子どものコーチングをするようにしています」という中2男子のお母さんKさん。
「石川さんに教わったように、こちらの評価は加えず、『今回はどうだった?』『次はどうすればいいと思う?』と質問をしています。でも、結局、いつも同じことしか言わなくなるんです。『準備が足りなかったから、次はもっと早くからがんばる!』って。で、また、同じことの繰り返しで、『もっとがんばる』って言うだけで終わってしまって、実行に移さないので、結果に結び付かないんです」。

Kさんのチャレンジを私はとてもすばらしいと思います。ふりかえりの対話をすることは、子どもが自分で考え、行動を起こすようになるための大切な時間です。ただ、私も中高生と話していて、よく思うことがあります。「・できるようにがんばります」「・するよう心がけます」という言い方をする子がけっこう多いなーと。この言葉だけで、実際の行動に移せる子どもは、確かに少ないように思います。
さて、どうしたらよいと思いますか?



具体化・細分化する質問

「がんばります」としか言わない子どもには、私は、もう少し踏み込んだ対話をするようにしています。表面的に話されている言葉を、具体化・細分化していく対話です。
たとえば、

「次はもっと早く勉強を始められるようにがんばる!」
「じゃあ、いつから始めたらいいと思う?」
「うーん、なるべく早く」
「なるべくって言うと、1週間前? 10日前?」
「10日前は早いかなー。1週間前かなー」
「たとえば、1週間前にはどんな準備ができていたらいい?」
「すぐにテスト勉強を始められるようになっていたらいい。あ! わかった! 10日前に計画を立てる! テスト範囲もだいたいわかるから」
「10日前って、何月何日?」
「えっと、それをまず調べてみる」

というような対話です。具体的に何をいつやるのか、今できる行動は何なのかを明確にします。なんとなく気持ちだけ盛り上がっても、具体的な行動を明確にしない限り、実際の行動には結び付きにくいものです。

「たまにはみんなで外に食事に行きたいね」と言っているうちは、まず実現しませんが、
「じゃあ、具体的にいつにする?」
「来週の日曜日の午後はどう?」
「今のところ、みんな大丈夫そう? じゃあ、カレンダーに予定を入れておくね」
と具体化させることで初めて実現に近付きます。このように、質問によって、行動を一つひとつ明確化していくことはとても効果的です。



行動を「見える化」する

さらに実行力を上げるために、こんな方法はいかがでしょうか? 私のコーチ仲間のMさんは、今週やることをいつもリストアップして、冷蔵庫のドアに貼っているそうです。

 ●庭の草抜き
 ●お米屋さんに電話
 ●美容院に行く
 ●クリーニングに出す洋服をまとめる
 ●資源ゴミを出す 

など、今週完了させたい行動がメモされています。

やり終えたら、二重線で消します。完了したこと・していないことが視覚的に確認でき、仕事もはかどります。この方法を見ていた小学生のお子さんが、自分も、チラシの裏に、やることをリストアップし始めたそうです。宿題のリストや明日の持ちもの、遊びのメニューまで書いてあるらしいのですが、お母さんのマネをして、やり終えたら、どんどん二重線で消していきます。当然のことですが、そうすると、忘れ物が減り、行動が加速するようになったそうです。

やるべきことが明確になっていることと、その進行状況(終わったか終わっていないか)が明確に見えることは、行動を促進させます。「これだけやればいいんだ! 早く終わらせて、消してしまいたい!」そんな心理も働きます。

お子さんと一緒に、行動を具体化する対話をしながら、1週間分の行動リストを作ってみるのはいかがでしょうか?

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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