中学受験する?しない?と思った時に、まず考えること【前編】

小学3、4年生になると、塾に通い始める同級生もチラホラ出始めるでしょう。中学受験を意識して我が子も塾に通わせるべきなのか考えている保護者のかたも多いのではないでしょうか。
お子さま自身が「中学受験したい!」とやる気になっている場合、そして保護者のかたが「中学受験をさせようかな」と思った時に、まず何から考えればよいのか、Benesse教育情報サイトで「中学受験歳時記コラム」を連載中の私学研究の第一人者、森上教育研究所の森上展安先生に教えていただきました。



金銭面で、継続的なサポートは可能?

中学受験において真っ先に考えなければならないのは、なんといってもお金のことです。

地元の公立中学校に比べて、圧倒的に費用がかかるのは、皆さんご存じのことと思います。具体的にいうと、塾に通わせる場合、4・6年生の3年間でおよそ230万円の費用がかかるといわれています。このほかに、通わせるための交通費やお弁当代なども含めると、継続的にこのお金を捻出できる分水嶺となるのは、世帯年収が650万・700万円といったところといえるでしょう。
また、きょうだいがいる家庭では、上の子を中学受験させた場合、下の子も必然的に中学受験させることになることが多いようです。
準備資金に加えて、私立中学校・高校の学費は6年間で400万・500万円ほど。金銭的に余裕がない場合は、無理をするとお子さまの教育全体が行き詰まってしまうおそれもありますから、将来を見据えた資金計画を立てたいものです。

ただ、高校からは国が実施する「就学支援金」や各都道府県の「高校生等奨学給付金」が受け取れる場合もあります。そういった意味では、保護者のかたの学生時代とは公立と私立の学費面の差はとても小さくなっているといえるでしょう。



地元の中学校の様子はどうか?

地元の公立中学校がきちんと機能しているかというのも学校選びの重要なポイントとなります。たとえば、2月、3月くらいになると、地元の塾のチラシが入ってくることがあるかと思います。ぼんやりとでも、進学を希望する高校がある場合は、その高校にどのくらいの人数が行っているのかチェックできるチャンスになりますので、ぜひ気にかけてみてください。

同様に、通う予定の公立中学校が、荒れていないかということも気になるところ。こういった情報は口コミなどで自然と耳に入ってくることも多いかと思いますが、うわさに惑わされないよう、学校説明会や文化祭などで、自分の目で確認してみることをおすすめします。



ズバリ、中学受験のメリット・デメリットとは?

私は、中学受験のメリットは、受験を目標にして勉強することで、今の学校の成績が上がることだと考えています。授業中に手を挙げることがたくさんできたり、発言が増えたりすると、ほめられる機会も自然と多くなります。ほめられると当然気分がよくなりますから、より勉強をする気持ちに拍車がかかります。これは長期的な目で見ると、何をどれくらい勉強すればよいのか、勉強に対する「構え」を身に付けることにもなり、勉強をする習慣にも繋がります。

一方、デメリットはというと、1点差が合格・不合格を分ける入試のシステム上、どうしてもほかの児童と比較されて、劣等感を抱かせてしまうことになりがちだということ。小学生というのは、まだまだ人生の初期の段階です。本来ならば、自信をつけさせてあげるべき時期に、苦手意識を持たせ、人生を悲観させてしまうことにならないように、くれぐれも気を付けたいものです。
特に塾は、勉強の出来によってクラス替えなどがあり、階層意識が生まれやすい環境です。劣等感を抱いてしまった子どもに、保護者が追い打ちをかけるようなことを言うのは絶対によくありません。保護者が逃げ場になるような役割を担ったうえで、劣等感を吹き飛ばすようなことを言ってあげる必要があるでしょう。

以上の考え方は、中学受験を意識した時の基本的なポイントですが、お父さまとお母さまで中学受験に対する考え方が違う場合には、客観的な情報をもとに判断するポイントにもなるでしょう。

後編では、中学受験の種類と、実際に必要な勉強量について教えてもらいます。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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