シングルマザーで子どもと過ごす時間が少ない[教えて!親野先生]

【質問】
シングルマザーで仕事をしながらの子育てです。子どもと過ごす時間が少ないので、子どもが愛情不足にならないか心配です。触れ合いを増やしたい、しつけもしなければ、宿題も見てあげたい……。でも、仕事の時間を減らすと経済的に成り立ちません。私の子育ては大丈夫でしょうか? 子どもをしっかり育てられるのでしょうか?

相談者・てんてこまい さん (小学1年生 女子)

シングルマザーで子どもと過ごす時間が少ない[教えて!親野先生]


【親野先生のアドバイス】
てんてこまいさん、拝読しました。
私の経験によりますと、シングルの子育てはダメで両親そろっていれば大丈夫、などということはありません。そんな単純なものではありません。
両親そろっていても、「??????」という例は非常にたくさんあります。
そして、その逆もたーくさんあります。

私はK子さんという教育実習生を指導したことがありましたが、彼女のお母さんはシングルマザーでした。そして、そのK子さんという人は本当にすばらしい人でした。気持ちが優しくて、笑顔がステキで、子どもたち一人ひとりの話をよく聞いて、リーダーシップもあって、子どもたちにもたいへん好かれました。
その後、先生になってからも、研究熱心でたいへんよいクラスづくりをしていました。当時私が主宰していた教育サークルに来てくれたこともありました。

また、私が教えたN君という男の子のお父さんは、シングルファザーでした。
そして、このN君という子はこちらが感心するような友達思いの子でした。友達が困っていれば積極的に助けようとしますし、勉強がわからない子には優しく教えてくれます。ほかの友達とはうまく付き合えないような子が、N君に誘われてみんなと一緒に遊ぶということもよくありました。

こういう実例はたくさんありますので、シングルだからダメということは絶対にないのです。

「子どもと過ごす時間が短い」とのことですが、親子で過ごす時間が長ければよいというわけでもありません。
というのも、否定的に叱ることが多い親の場合、一緒に過ごす時間が長いと逆効果になるからです。

たとえば、「また○○していない。ちゃんとやらなきゃダメでしょ。何度言ったらできるの」などの言葉が多い親です。
細かいしつけにこだわって、常に子どもを非難し、小言を言い続ける親。子どもが苦手なことやできないことに目をつぶることができず、「今のうちに直そう」と思って叱り続ける親。
こういう親からの否定的な言葉を浴び続けていると、子どもは「自分はダメな子だな。どうせ何をやってもダメだよ」と思い込むようになり、自己肯定感が持てなくなります。

また、いつも自分を非難し叱ってくる親に対して、子どもはよい感情を持てなくなります。そして、「自分はお母さん・お父さんによく思われていない。ダメな子だと思われている。大切にされていない。どうやら嫌われているようだ。愛されていないんだ」と思うようになってしまうのです。
つまり、親の愛情が実感できないということであり、言い換えると愛情不足感です。こうなると、親に対する素直な気持ちがなくなり、反発するようになります。

また、愛情実感が持てないでいる子は、親の愛情を確認したいという衝動に駆り立てられます。そして、危険なことや反社会的なことなど、親に心配をかけるような行動をするようになります。親が心配しておろおろする姿を見て、初めて、「こんなに心配してくれている。愛されている証拠だ。よかった」と感じることができます。
これが愛情確認行動です。
ですから、親がしつけ主義的で叱る言葉が多い場合、一緒にいる時間が長いことがかえって子どもの愛情不足感につながるということがあるのです。

シングルマザーで子育てする場合、「『シングルマザーだから、子どももダメなのだ。父親がいないからしつけもできないのだ』と思われたくない」という気持ちが働き過ぎて、逆に厳しいしつけに走ってしまうことがあり得ます。
そうならないように気を付けて、こういった方向とは逆の方向に進めば大丈夫です。つまり、子どもを非難したり否定的に叱ったりすることを極力減らすことが大事です。

そして、常に子どもへの共感を最優先してください。
子どもの話を聞く時は、とにかくたっぷり共感的に聞いてあげましょう。
うなずきながら、「うん、そうだね」「そうだよね」「嫌になっちゃうね」「大変だね」「苦しいよね」「それは頭にきちゃうよね」「がんばってるね」などの言葉を返してあげましょう。
励ましやアドバイス、あるいは注意や指導をする必要がある場合も、まずはたっぷり共感的に聞いてから、最後の最後にしてください。
子どもが苦手なことやできないことは、叱って済ませるのではなく、子どもがやりやすいように工夫してあげてください。工夫してもできない場合は、手伝ったり、あるいはやってあげたりしてください。

「やってあげると自立できない」などというのは迷信です。そんなことはありませんので、いちいち文句を言ったり非難したりしないで、やってあげてください。
そして、ちょっとでもできた時には認めて、上手にほめてあげましょう。そうしているうちに、成長するにつれてだんだんできるようになりますので、大丈夫です。

何度でも言いますが、子どもが苦手なことやできないことは、いくら口うるさく非難していてもできるようにはなりません。そういったことをいつまでもつついていないで、さっさとあきらめて、気持ちよくやってあげたほうが長い目で見てよい方向にいきます。
どうせ直らないことにいつまでもこだわっていないで、もっと子どもをほめるところにエネルギーを使いましょう。そして、子どもが好きなことや得意なことを応援してあげて、もっと深められるようにしてあげてください。そうすれば、親も子どもをほめられるようになります。すると、子どもは自信がついてきて、いろいろな面でやる気が出てきます。

このような方向でいけば、子どもは親の愛情を実感できるようになります。たとえ子どもと過ごす時間がたっぷり取れなくても、子どもが愛情不足を感じることはなくなります。
親の愛情を実感できている子は、たとえ非行的な行為に誘われることがあっても、「大好きな親に心配をかけたくない」という気持ちが働いてブレーキがかかります。

大事なのは、親子が一緒に過ごせる時間の質をよくすることです。親の愛情が実感できる時間にしてあげてください。そのためのキーワードは「非難しない」「共感」の2つです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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